パンテラが再びやってくる。2003年に解散した後、2004年にダイムバッグ・ダレル(G)が別バンドでのライブ中に射殺され、その兄のヴィニー・ポール(Dr)も2018年に病死、バンドの中核を失って復活は絶望視されていたなかでの再始動で、フィリップ・アンセルモ(Vo)とレックス・ブラウン(B)の二人を軸に、ザック・ワイルド(オジー・オズボーンと関わりが深い名ギタリスト)とチャーリー・ベナンテ(アンスラックスのドラムス)が参加している。
昨年12月の南米ツアーは軒並み絶賛され、その次に出演するのが3月25日・26日のLOUD PARK 2023。このフェスの前身となったBEAST FEAST 2001(横浜で開催)がパンテラの解散前最終ライブだっただけに日本との縁は深く、LOUD PARKの「2023年限定」の復活も、来日公演を実現させるための呼び水という趣もある。
実際、パンテラは本当に凄いバンドだ。筆者が監修・執筆を務めた『現代メタルガイドブック』では、第5章〈ポストHR/HM〉の最初にパンテラの『カウボーイズ・フロム・ヘル』を置き、HR/HMとそれ以降のメタルとの結節点として最も重要な作品の一つと評している。
ファンク的な粘りとハードコアパンク的な瞬発力をメタル的な切れ味のもと融合した演奏感覚は「グルーヴメタル」の嚆矢となり、KOЯNやスリップノットをはじめとした後続に絶大な影響を与えた。パンテラがいなければ、メタルに限らずロック全般が今と同じ形では存在しなかったとさえ言える。
こうしたことを踏まえた上で興味深いのが「今のパンテラ」のサウンドだ。ダイムバッグとヴィニーが担っていた強烈なシャープさが減った代わりに、ザックならではのブルース~ドゥームメタル的な粘りと、チャーリーならではのハードコア的な躍動感が加わり、オリジナルとは異なる極上の酩酊感が生まれている。個人的にはこちらの方がより現代的な質感に思えるし、それがオールタイムベスト選曲のもとで表現されるのはたまらない。「自分はメタルに興味がない」と思っている人でも間違いなく楽しめる。必見のステージだ。 (和田信一郎)
パンテラの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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