パンデミックがようやく落ち着き、ライブシーンが完全復活した今年のイギリス。乾いた土に水が浸透するように誰もがあらゆる音楽をゴクゴク飲み干し満喫する夏になり、若手/インディ系ギターロック勢も盛り上がってめでたしめでたし……と言いたいところだが、いやしかし、何かが欠けていませんか?とやや歯がゆくもあった所以はずばり、アークティック・モンキーズの不在だった。やっぱり話にならないでしょう、この人たちがいないと。
しかしそんな状況とも遂におさらばできる。昨年夏にイギリスで全員が集まってレコーディングしていたことが素人インスタでスッパ抜かれて(?)以降、水面下の動向がささやかれてきた彼ら。遂に8月から約3年半ぶりのツアーを欧州大陸各地でスタートさせ、それに伴い10月21日発表の新作7th『The Car』の情報も公開された。
前作とは対照的に、極めて即物的で大いに好奇心を掻き立てるタイトルを冠したアルバムは10曲入り、セカンド以降の付き合いで「5人目のモンキーズ」と言っていいジェイムス・フォードがプロデュースを担当。音響に凝りまくった実験的な前作『トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ』(2018年)に引き続きフランスのラ・フレット・スタジオも録音に一部使用されており、ほぼ全篇でオーケストラが鳴り渡っている。
その点からも、『AM』(2013年)でひとつのチャプターを終え前作で新たなフェーズに入り高い評価を得た彼らが、そのプロセスを確信と共に更に深化させていったことがうかがえる。
実に久々の出演(2014年以来)となった英レディング&リーズ・フェスティバルのトリの凱旋パフォーマンスはファンの熱狂的な期待に応える圧巻の内容だったが、その際に唯一新作から披露された“I Ain’t Quite Where I Think I Am”は、粘っこいファンクビートとワウギター、キーボードとコーラスを重用しつつサイケデリックな飛翔感のあるコーラスへとスライドするミッドテンポ曲。結成から今年で20年、もはや「ガレージロックンロール」云々のレベルを超えた唯一無二のポジションにいる彼らは、果たして新作でどんな斬新な音世界を作り出しているのか? この秋、再び吹き荒れるアークティック旋風を心して待て! (坂本麻里子)
アークティック・モンキーズの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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