オアシスが帰ってきた! 5万人の青春が詰まった再結成オアシスの来日公演をレポート

オアシスが帰ってきた! 5万人の青春が詰まった再結成オアシスの来日公演をレポート

MCでのリアム・ギャラガーの言葉を借りるとすれば、この日のオアシスが「ビブリカル」かつ「セレスティアル」な体験に、すなわち伝説となるのは予め確定事項だったと言っていい。なにしろ奇跡の再結成の末に実現した、16年ぶりの来日公演だ。ノエルとリアムが手を繋いでステージに登場する冒頭から《俺たちは互いを必要とし、信じ合っているんだ》と歌う“アクイース”へ、兄弟の絆の復活のドラマは涙せずにはいられないものだし、やってもやっても尽きない名曲の連打に若いファンが興奮に沸き立ち、往年のファンが感慨に酔いしれるのも当然だったからだ。しかし、再結成オアシスの「伝説化」は、魔法のように空から降ってきたものではない。それは2025年に実在するオアシスによって打ち立てられた、極めてリアリスティックな記念碑なのだ。オアシス史上最大の来日公演となった東京ドームで感じたのは、とにかく「今」のオアシスが世界最強のロックンロールバンドなのだという、同時代に根差した感動だった。

広大な東京ドームをのっけから爆音で満たす、再結成オアシスのライブバンドとしての実力は掛け値なしに過去一だったと思う。病気治療のためツアーを離脱したボーンヘッド(パネルとなってステージに鎮座)の代打でマイク・ムーアが参加し、トリプルギター体制が維持されたことで凄まじい音圧と厚みが生まれ、しかも3本のギターの間にグイグイ分け入って空間を作るジョーイ・ワロンカーのドラム、要所要所でシャープに打ち込むアンディのベース(“モーニング・グローリー”のイントロの格好良さと言ったら!)と、リズム隊とのコンビネーションも文句なしだ。セットリスト固定で世界を回っている「Oasis Live ’25」だが、筆者が観たツアー前半のロンドンとツアー後半の東京では幾つかの変化があり、例えば“ドゥ・ユー・ノウ・ワット・アイ・ミーン?”の長大イントロがカットされるなど全体的にタイトに絞られ、ツアーとしての完成形に近づいていると感じた。

驚いたのはロンドンよりさらに進化したリアムのボーカルだ。“キャスト・ノー・シャドウ”の澄み切ったロングトーンや、「ここに来られなかった人たちに」捧げた自信に満ちた“リヴ・フォーエヴァー”、そして生意気でふてぶてしい“ロックンロール・スター”と、まるで90年代半ばの彼が蘇ったような錯覚に陥る神懸かった歌唱だ。本当に信じられない。リアムが声を取り戻したのはソロきっかけだが、オアシスの彼は次元が違うのだ。オーディエンスの熱狂もズバ抜けていたのではないか。椅子席での実現が不安視されていた“シガレッツ&アルコール”のポズナンも成功してドームが縦に揺れ、“スタンド・バイ・ミー”や“ホワットエヴァー”では、本国ファンと比較しても遜色のない大合唱が轟いた。

セットの後半は、オアシスだけが持つ高揚感が、自分も彼らと同じ夢を見ているような一体感が、これこそがオアシスだと感極まる瞬間が何度も何度も訪れる。ノエルが気持ち良さそうにソロを弾き、5万人がコーラスを歌いきる“ドント・ルック・バック・イン・アンガー”。この曲を彼らがこんなにも真っ直ぐ衒いなく演ったのは、16年ぶりどころでは済まないはずだ。ラストの“シャンペン・スーパーノヴァ”は、まさにビブリカルでセレスティアル。オアシスと観客が共に作り上げたリアルな伝説の瞬間となった。「ずっと俺たちのファンでいてくれてありがとう。解散は悪夢だったよな、わかってるよ。みんなが俺たちを再結成させてくれた。ファッキン愛してるよ」とリアム。遂に訪れたフィナーレ、タンバリンヘッドの上にさらに厳かにマラカスを載せた彼は、ノエルに歩み寄ってハグすると、兄のお尻をペシペシと叩き始める。されるがままのノエルも笑顔だ。こんな光景を再び目の当たりにできるなんて、オアシスを愛し続ける人生も捨てたものじゃないと改めて思った。

終演後、ドームの外は冷たい雨が降っていた。思えば16年前のフジロックも雨だった。でも、あの時のように項垂れることはもうない。傘も差さずに大声で“ホワットエヴァー”を歌いのし歩く若者たちを思わず振り返った時、熱った頬にかかる雨は心地よかった。(粉川しの)


オアシスの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』12月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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