フー・ファイターズのドラマー、テイラー・ホーキンスが急逝した。3月25日、ツアー先のコロンビアでのことだった。彼らは同国の首都ボゴタでのフェスへの出演予定だったが、テイラーは滞在先ホテルの部屋で胸の痛みを訴え、救急隊の到着後に死亡が確認された。
1972年2月17日生まれの彼は、まだ50歳になったばかりだった。同フェスへの出演は取りやめとなり、バンド側は「愛するテイラーの突然の悲劇的な死に打ちのめされている。彼の音楽精神と周囲を笑いに包み込む明るさは、私たち全員とこの先もずっと共にある」との公式コメントを発したのち、今後予定されていたツアー日程すべてを白紙にするとの発表をしている。
彼らは3月18日にはチリ版、20日にはアルゼンチン版の『ロラパルーザ2022』に出演していたが、結果的にはそれがテイラーにとって生涯最後のステージとなった。その両日、彼が敬愛するジェーンズ・アディクションのペリー・ファレルとの共演が実現していたことにもどこか意味深さを感じずにはいられない。
訃報が届いた直後にはマイリー・サイラス、エルトン・ジョン、アクセル・ローズやブライアン・メイといった音楽家のみならず、バイデン米大統領夫人に至るまでが弔意を示した。フー・ファイターズ加入以前にはサス・ジョーダン、アラニス・モリセットのバンドでの演奏歴があった彼は、近年でもホームでの活動にとどまることなく、テイラー・ホーキンス&ザ・コートテイル・ライダーズとして3枚のアルバム発表、ソロ名義での音源発表やさまざまなセッションなど、常に多様で積極的な動きをみせてきた。
昨年はデイヴ・ナヴァロらと組んだスーパーグループ、NHCでのアルバム制作も済ませているはずだ。そうした彼の枠に囚われないアクティブさがフー・ファイターズのもうひとつのエンジンになっていたことは間違いないし、またもやバンドメイトを失うことになったデイヴ・グロールの胸中は想像を絶するものがある。
著名人の他界後には知りたくもない新事実とやらが必要以上に表出しがちなものだが、音楽ファンとしてはそれに惑わされることなく彼の遺してきたものを愛し続けたいものだ。どうか天国のテイラーが、今も笑顔でありますように。 (増田勇一)
テイラー・ホーキンスの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。