コージー・パウエルが参加した“華麗なる復活”や、クイーンのラスト・アルバム『メイド・イン・ヘヴン』にフレディのバージョンも収録され、前述の追悼コンサートでのハイライトの1曲になった“トゥー・マッチ・ラヴ・ウィル・キル・ユー”などのヒット曲が目白押しの本作は、リリースから30年近くが経った今では名盤として歴史に刻まれている。
8月、そんな『バック・トゥ・ザ・ライト~』が満を持してリイシューされる。今回のリイシューはリマスタリング界の巨匠ボブ・ラドウィックがオリジナル・マスターからリマスタリングし、ブライアンも監修としてきっちり目を配った隙のない企画で、デラックス・エディションのCD2は『アウト・オブ・ザ・ライト』と題され、1993年のライブ音源や別バージョン、B面曲を新たに収録。また、日本盤デラックス・エディション( 2 CD)には1993年のブライアン・メイ・バンド来日公演時のパンフレットのミニチュアも封入されるなど、ファン必携のアイテムになっている。
1988年から1992年にかけて書いた曲が収録されている『バック・トゥ・ザ・ライト~』の制作が、フレディを失ったショックから立ち直るためのセラピーだったことはブライアン自身も認めている。しかし、本作はけっして癒しに終始した内省的な作品ではない。80年代のクイーンでは鳴りを潜めていたハード・ギターが縦横無尽に走り、マルチトラックを駆使したコーラスがブライアンの少々線が細く柔らかな歌声を補って余りある効果を生み出すなど、彼のギター・ヒーローとしての、サウンド・メイカーとしての本領が遺憾なく発揮された本作は、何よりも彼と彼の音楽を未来に向けて「生かした」傑作だからだ。映画『ボヘミアン・ラプソディ』以降の、新しいクイーン・ファンにもぜひ再発見してほしいアルバムだ。(粉川しの)
ブライアン・メイの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。