X JAPAN映画『WE ARE X』ついに公開! NHK『SONGS』で語った「世界を目指し続ける原動力」
2017.03.03 15:10
いよいよ本日公開となったドキュメンタリー映画『WE ARE X』。現地時間3月4日の開催が目前に迫った初のロンドン・ウェンブリーアリーナ公演。そして、20年ぶりのオリジナルアルバム発表へ――。
X JAPANが大きく動き始めるまさにその直前にオンエアされたNHK『SONGS』、題して「X JAPAN 最新章 〜世界への進撃 2017〜」。苦闘の歴史の「総括」を越えて、今この時代を新たな物語の舞台に変えていこうとするYOSHIKIらメンバーの決意が、25分間の放送枠の隅々から伝わってきて、胸が震えっ放しだった。
昨年12月に続いての『SONGS』登場となる今回、ナレーションを務めたのは、中学時代からX JAPANのファンだったというゆず・北川悠仁。
「YOSHIKIさんとX JAPANに出会っていなければ、僕はきっと、音楽をやっていなかったと思います」
X JAPANが解散した年=1997年にゆずとしてインディーズデビューを果たした北川。X JAPANとともに『紅白歌合戦』に出演した2015年・2016年の映像とともに明かされる北川の想いが、番組全体に静かな迫力と熱量を与えていたのも印象的だった。
「必ずしもかっこいいシーンばかりではないんですね。現在進行形のバンドなのに、ここまでさらけ出してしまっていいのかと……唯一、僕らが自慢できるとしたら、たぶんその部分だと思うんですね。決して『僕らがこれだけ有名なんだ』とかいうストーリーではなくて、やっぱり心に痛みを持っている人とか、そういう人たちを救えるんじゃないかと、僕らの経験したことによって」(YOSHIKI)
Toshlの苦悩と洗脳、バンドの解散、HIDEとTAIJIの死……映画『WE ARE X』にも綴られたX JAPANの足跡を、番組では改めてひとつひとつ辿りながら、さらに『WE ARE X』に描かれていない「その先」の部分――PATAの急病による昨年のウェンブリーアリーナ公演中止についても斬り込んでいく。
「『ライブ飛ばすのありえない』とか思ってたんですけど、やっぱり体がいうこと聞かなかったみたいで……でも、その時YOSHIKIから電話があって。『いいんだよ、ズラせば』っていうひと言で、なんかすごく楽になったような気がしますね」(PATA)
「どうでもいいから生きていて欲しいっていう……これ以上メンバーを失いたくないっていう。PATAのこういうことがあってある種、精神的にはものすごく強くなっているっていうのが、今僕たちに言えることだと思うんですよね」(YOSHIKI)
“BORN TO BE FREE”“X”や新曲“La Venus”の演奏、さらにロンドン公演のリハーサル風景なども交えながら進む映像の中、北川の声はYOSHIKIに問いかける。「X JAPANが何度挫折しても諦めず、世界を目指し続ける原動力は何ですか?」と。
「『なぜ自分は生きているんだ』『なぜToshlと出会ったんだ』『なぜこのX JAPANというバンドを作ったんだ』、そして『なんでこれだけファンの人たちがずっと応援してくれるんだ』……何なんだ?っていう、そのクエスチョンマークを1個ずつ、自分に問いかけていったんですけど……『自分は生きてる、そして生かされてもいるんだなあ』と思ったんですね。決して自分だけのものではもうないんだなって。(中略)無限の可能性、どこまでできるんだということにトライしたい。トライすることによって、僕らのファンであったり、後押ししてくれるミュージシャンだったり、皆さんに対して夢を与えたい。たぶんそれが原動力かな」
YOSHIKI自身の世界観から生まれた破滅と美に満ちたロックの風景を、表現者のエゴや承認欲求といった動機を遥か置き去りにした次元で、自らの体験を盛り込んだ映画まで含めた凄絶な「救い」の表現として繰り広げていく――。
そんな途方もない使命感を語る一方で、結成35年・平均年齢50歳という現実も踏まえつつ「普通に考えれば、この年齢から世界にブレイクしていくというのは考えられない。そのすべての既成概念をぶっ壊してやりたい」と挑戦精神を口にするYOSHIKIの言葉は、どこまでもクリアでタフな覚悟に満ちていた。
歴史はついに転がり始めた――そんな感慨と感激が、今なお全身に渦巻いている。(高橋智樹)