マルーン5、物議も醸したケンドリック・ラマーとのコラボ新曲“Don’t Wanna Know”、本当はここが凄い

マルーン5、物議も醸したケンドリック・ラマーとのコラボ新曲“Don’t Wanna Know”、本当はここが凄い

10月16日で北アメリカ・ツアーを終えたマルーン5だが、ツアー中にリリースし、ゲームソフト『Just Dance 2017』にも使われているという新曲“Don’t Wanna Know”が、ある意味でマルーン5にとっての大きな飛躍を示す曲となっている。

では、特にどこがすごいのか。たとえば、この曲はある意味でアメリカのモダン・ロックのポップさとエッジの粋をすべて集めて凝縮するという意味では、最新型で究極のマルーン5ナンバーとなっている。もちろんマルーン5の傑出した楽曲はすべてそういうものになってきたが、しかし、今回はこれまでの試みをすべて引き離すものになっていて、それを端的に表しているのが「フィーチャリング・ケンドリック・ラマー」というこの曲の試みなのだ。

マルーン5、フィーチャリング・ケンドリック・ラマー。ついにここまで来たかという思いにもなるが、もともとマルーン5の音楽性は2002年の『ソングス・アバウト・ジェーン』以来、巧みにファンクをバンド・サウンドのグルーヴの軸に据えてきているので、こういうコラボレーションには一番近いところにいたといってもいい。しかし、それを意識的にずっと避けてモダン・ポップ・ロックとしての枠を守ってきたのがマルーン5なのだ。ただ、2010年代に入ってから“Moves Like Jagger”など、主要ヒット曲をDJ出身のプロデューサー、ベニー・ブランコらと制作してきただけに、R&Bやヒップホップへとクロスオーヴァーしていく下地は充分にできていたといってもいい。

“Moves Like Jagger”ミュージック・ビデオはこちらから。

というわけで、エレポップ・リフに乗せたヴォーカルで始まるこの“Don’t Wanna Know”は、どこまでもこれまでのシングル曲とも地続きになっているようでいて、実は極端なまでにポップとしての純化が極められていて、どのようなクロスオーヴァーも可能な域に達している曲になっているのだ。ある意味、なんでこの転化にこれほど時間がかかったのかと不思議にも思うが、誰にも気にされないタイミングでこれをやってのけるのがマルーン5らしいところなのかもしれない。

いずれにしても、ヒップホップ界のトップMCのひとりといってもいいケンドリックの客演は現時点で世界最強の太鼓判ともなっている。ただ、アダム・レヴィーンとケンドリックの共演、これほどミスマッチなものがあるかと思いきや、内容的には意外にも強力な補完関係が成立している。というのも、元カノのその後を「知りたくない」とひたすらその感傷を歌い上げるアダムのヴォーカルに対して、ケンドリックのMCはその彼女に対してお誕生日セックスがまだ忘れられないから、未だにSNSでも絡んでくるんだろとディスる極悪なものになっていて、この曲を終わらせるあまりにも強烈なエンディング・フレーズになっているからだ。ここのところ、シリアス・ラッパーのイメージが強くなっているケンドリックだけに、このキャラ選びのセンスはあまりにも素晴らしいとしかいいようがないし、やっぱりこの起用は大成功だと結論付けるしかない。

なお、ビデオの方はポケモンGOの世界観をもじったものになっていて、さらにアダムほかメンバー全員が虫の着ぐるみをかぶったキャラに扮していて、当然ながらケンドリックは登場しない。しかし、虫キャラとなったアダムが途中でステージ衣装としてファレル・ウィリアムスの帽子を被るようにとスタッフに強要され、アダムが「それは主義としてできないんだ」と必死に拒否するくだりが、まるで今回のシングル以前のこだわりを説明しているようでおもしろい。(高見展)

“Don’t Wanna Know”のミュージック・ビデオはこちらから。
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