オスカーのノミネーションが発表される前に、インタビューマガジンのインタビューで「オスカーなんてクソだ。俺は関わりたくないんだ。まったく信じていないから」「人と人を対決させようなんて……世界中で最もバカげたことだよ」と語ったホワキン・フェニックス。
http://www.interviewmagazine.com/film/joaquin-phoenix

『ザ・マスター』で確実にオスカーにノミネーションされると言われていただけに、痛い発言だと誰もが思ったわけですが、そんな言葉も関係なくしっかりとノミネーションされていました。彼の今回の演技は、本当に何かが舞い降りたとしか思えない神懸かったものだったので、貶されてもなお評価せずにいられないものだったと思います。

実は先週末に、ロンドン批評家賞があり、そこで最有力候補の『リンカーン』ダニエル・デイ＝ルイスを抑え、ホワキンが見事最優秀主演男優賞に輝きました。授賞式には出席しなかったホワキンですが、受賞にあたりコメントを発表しました。そして、その内容が、あまりにまとも。彼なりに、なぜ「オスカーがクソだ」と思うのかが説明されていて、真摯だし、感動的ですらあると思います。

以下全文訳です。

声明文が掲載されていたのは、このサイト。
http://blogs.indiewire.com/theplaylist/joaquin-phoenix-gives-props-to-up-and-coming-actor-daniel-day-lewis-20130121

「俺は俳優として賞を勝ち取るという概念に困惑している。

映画のような非常に主観的な媒体において、俺が最優秀主演賞だと決められるのは、奇妙で仕方ないんだ。

よく理解できていない人にとっては、俺がまるでひとりでその役を作り上げたかのようにすら思えるんじゃないかと思う。でもそうじゃない。

だから、俺はまず仲間にお礼が言いたい。まず言うまでもないがポール・トーマス・アンダーソンに。辛抱強く真実を捜し続けた人。彼には一生感謝したいと思う。彼の指導下にいられたことを本当に幸運に思うんだ。それからフィリップ・シーモア・ホフマンに。彼の我慢強さとアドバイスに感謝したい。それからエイミー・アダムスに。彼女の怒りに感謝したい。

それから、Megan Ellison（プロデューサー／億万長者の娘で彼女がひとりで資金を出した）とAnnapurnaの皆さん。俺が借金を返せるようにこの映画をサポートしてくれてありがとう。

他にも名前だけでは知られていないような人達がたくさんいる。例えばMike Kennaが要だったと思うんだけど、でも彼は20個くらいの仕事をしていたから、実際何をしていたのかはよく分からない。それから監督の第一アシスタントだったAdam Sonmer。オフィスで仕事してくれたKaren Ramirez。トミー……彼の苗字も分からないけど。そんなわけで挙げだしたらきりがないほどの人達が仕事をしてくれていたんだ。

だから、俺がここで言いたいのは、つまり真実はと言えば、彼らの仕事と俺がやったことを切り離して考えることはできないということ。なぜなら俺たちはひとりひとりが同じゴールを目指して繋がり合った支え木のようなもので、つまりは、全員がポール・トーマス・アンダーソンのビジョンを叶えるために団結していたわけだから。

だから俺は、今回の賞をこの作品に関わったすべての人達の仕事に対する評価であると受け止めたい。

もちろん、この賞は、俺が情熱を持って俳優の仕事を一生やっていく上での大きな励みになったことは間違いない。だけど、それを必要以上に尊重して時間を無駄にするようなことは絶対にない。

PS.ちなみに、ダニエルという新人俳優が『リンカーン』という映画に出ているから、それをチェックした方がいいと思うよ」

という、最後のダニエル・デイ＝ルイスの部分はもちろんジョークですが、俺にくれるくらいなら、ダニエル・デイ＝ルイスにあげればいいのに、ということだと思います。

果たして、オスカーはどうなるでしょうか？？？？ オスカーの発表は、２月２４日です。

ちなみに、傑作『ザ・マスター』の日本公開は３月22日！
http://themastermovie.jp/

日本語の予告編はこちら。