ブルース・スプリングスティーン登場!@TIFFその4

ブルース・スプリングスティーン登場!@TIFFその4

トロント映画祭にて”THE PROMISE : THE MAKING OF DARKNESS ON THE EDGE OF TOWN"の初上映が行われるため、ブルース・スプリングスティーンがトロント入りした。

この上映はふたつのパートに分かれていて、第一部は、スプリングスティーン本人が登場し、このドキュメンタリー/アルバムについて語るというもの。司会は、昨日お伝えした通りエドワード・ノートンだったのだが、これが!さすがのノートンも緊張しているようにみえた。超斬れ者でいつも自信満々の勝ち気な話しっぷりなのに、今日は何度も詰まってたし、しかも、質問に思いがこもりすぎて不必要に長い(笑)。まるでダメな自分を見ているようだった……(汗)。しかし、それでも面白い内容になったのは、スプリングスティーンの語ることがどっからどう切っても面白かったから。

そのまま全部インタビューを掲載したいくらいなのですが、とりあえずその中の少しを紹介すると。

まず"Darkness"の前に、”Born to Run"の「成功」を味わったことで、自分の周りの世界が一気に広がり怖くなったと。というのも、これまで自分の周りに「成功」した人なんてひとりもいなかったから、自分が仲間、知り合いの中で、突然変種になってしまった。だからこの作品は、自分を見失ってしまう前に、自分のアイデンティティを確立しようとした、自分が誰なのかを見つけ出そうとしたアルバムであった、ということ。

それでこの作品では、「自分」と絶対に切り離せないものと向き合っている。失ってしまったら、自分が狂ってしまうものと向き合ったと。それが、自分の故郷であり、両親の生活について語るということだった。この作品から、自分にとって誰が大事で、誰について語っていくのか、ということが明確になり、ここからオーディエンスと対話が始まったと思う。その前の3作はだから、それに向けての前章だったと思うと。

さらにこの作品を作るときに、元マネージャーとの裁判があり、それもこの作品のダークネスには関係していて、それは映画の中でさらに詳しく語られているのだが、さらに、自分の中に怒りがあり、とてつもない野心があったと。若いむき出しの野心があったと。自分が「重要な何か」になりたかったんだと。自分は小さい町の出身だったから、とにかく「BIG」なることが大事だったんだ。中間は存在しなかった。この作品で少しでも失敗したら、それですべて崩れさると思っていたということ。

だからこの作品は、最初にできた10曲をまとめてアルバムにしたのではなくて、70曲も書いて、その中から一番タフでハードな曲を10曲選んだんだということ。ここに収録されなかった曲には、シングルヒットになりそうな曲もたくさんあったし、もっと明るい曲もあったらしいのだけど(これから発売のボックスセットに収録)、そういう曲は意識的に外したということ。そしてそういう作品の作り方はその後現在に至まで変わらないと。

俺達はもちろんピンクのキャデラックも欲しかったし、ガールフレンドも欲しかったけど、でも一番手に入れたかったのは、意味のある作品、だった。それを手に入れるための苦悩がこのドキュメンタリーに描かれている、ということ。

というわけで、話はここからランドスケープや、”声”になりたかったという話に続いたのですが、とりあえずこの辺で。写真は、ノートンの後に別の会場で行われたプレミア上映会の壇上で。なんと、その後本人達も劇場で一緒に鑑賞したのですが、私達の3列前に座っていた!

映画は、よくぞこんな映像を撮っていてくれたなあという貴重なものだった。そして、作品を細かく読み解いていくというものだった。
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