最終回まであと2話。今からでも遅くないので見て欲しい『ザ・ラスト・オブ・アス』。大人気ゲームのドラマ化で初めて成功したと大絶賛。音楽も最高。デペッシュ・モード、リンダ・ロンシュタット、パール・ジャムなどについてクリエイター達が語る。ネタバレなので番組を見た人に読んで欲しい。

最終回まであと2話。今からでも遅くないので見て欲しい『ザ・ラスト・オブ・アス』。大人気ゲームのドラマ化で初めて成功したと大絶賛。音楽も最高。デペッシュ・モード、リンダ・ロンシュタット、パール・ジャムなどについてクリエイター達が語る。ネタバレなので番組を見た人に読んで欲しい。 - ©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.(U-NEXTにて独占配信中)©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.(U-NEXTにて独占配信中)

今、アメリカではHBOで、日本でもU-NEXTで同時配信されているTVシリーズ『ザ・ラスト・オブ・アス』が、素晴らしすぎて大絶賛され、大人気となっている。これは、世界で2000万以上の売上を記録したゲームのテレビシリーズ化だが、ゲームが好きだった人も、普段は全くゲームをやらない人も作品として最高なので、様々な人が夢中になっているのだ。


第1シーズンは全9話で、現在7回目まで配信。まだ見てない方も、遅くないのでぜひぜひ見て欲しい。日本では、ゲームで吹き替えをしたキャストがそのままTVシリーズの吹き替えで出演していることも話題となっている。第1話は現在無料で公開中だ。

https://www.youtube.com/watch?v=neDA2Dx2_ag


『ザ・ラスト・オブ・アス』は、2013年にPlayStation3とその後4専用タイトルとして発売され、爆発的な人気となった「サバイバル・アクションゲーム」を元にして作られた作品だ。これまでも様々な人気ゲームの映画化、テレビ化は試みられてきたけど、どれもゲーマーにとって、または映画としての完成度が今ひとつ満足いくものではなかった。

しかし今回は、大人気作でありながらも、そのゲームファンの期待に答える作品になっていると大絶賛されているばかりか、私のような全くゲームもしないし、『ウォーキング・デッド』から『ハンドメイズ・テイル』まで、アポカリプス、ゾンビ、サバイバル物語を見すぎてもう見たくないと思っているような人までも夢中になる素晴らしい完成度の大感動作となっている。数多くのメディアが既に今年最高のTV番組のひとつと称賛。視聴者数も、アメリカ国内で上がり続けている。

内容は、2023年を舞台にしたポストアポカリプスのドラマ。20年前に菌類による感染症が発生しパンデミックとなり、感染した人はゾンビのようなクリチャーとなって文明が崩壊。アメリカでは、生存者による争いが勃発していて、生き延びた主人公で「運び屋」のジョエル(ペドロ・パスカル)は、ボストンの隔離地域から、ある特別な理由のために14歳のエリー(ベラ・ラムジー)を連れてアメリカ横断する物語だ。ちなみにこの2人は同じくHBOで記録的な人気を獲得した『ゲーム・オブ・スローンズ』にも出演している。

最終回まであと2話。今からでも遅くないので見て欲しい『ザ・ラスト・オブ・アス』。大人気ゲームのドラマ化で初めて成功したと大絶賛。音楽も最高。デペッシュ・モード、リンダ・ロンシュタット、パール・ジャムなどについてクリエイター達が語る。ネタバレなので番組を見た人に読んで欲しい。 - ©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.

目的地に無事に辿り着くために進んで行く内容なのだけど、驚くのは、ゲームのクリエイターであるノーティードッグのニール・ドラッグマンも、ドラマのクリエイターであるクレイグ・メイジン(TVシリーズ『チェルノブイリ』のクリエイター)も、ポッドキャストで、
「これはラブストーリーだ」

と言っていたこと。

さらに、クレイグは、番組のテーマについてこう語っていた。「愛は、すべてを克服する。だけどそれが問題だ」と。

また、ゲームのクリエイターであるニールは、「親が子供に対して抱く無条件の愛を探求し、体験できるゲームにしたいと思っていた。だからそれを体験するために、物語や、インタラクションを通して、登場人物、その関係性、音楽、ここに登場する全てのものを通して、愛かがもたらす最高のもの、そして最悪なものを体験してもらいたいと思った」と。

最終回まであと2話。今からでも遅くないので見て欲しい『ザ・ラスト・オブ・アス』。大人気ゲームのドラマ化で初めて成功したと大絶賛。音楽も最高。デペッシュ・モード、リンダ・ロンシュタット、パール・ジャムなどについてクリエイター達が語る。ネタバレなので番組を見た人に読んで欲しい。 - ©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.

番組について、クレイグは、

「僕らは、愛を、ものすごくポジティブなもの、美しいものだと思っている。実際そうだ。だけど、とりわけ親が子供に抱く愛は、本能的であり、だから最も強烈な恐怖感に繋がることがある。そして、その最も強烈な恐怖感は、最も強烈な行動に繋がることがある。それが暴力となることもある。だから、例えば、部族主義や人種差別、外国人嫌悪の下には愛が隠れていることもある。つまり愛とは必ずしもいつも良いものとは限らない。この番組では、お互いに愛する人たちを何度も何度も見ることになる。それがどうなるのかを何度も何度も見ることになる」


このTVシリーズが、ポストアポカリプスのドラマであり、ゾンビが出てくるけど、それが嫌いな人も夢中になるのは、このテーマがまず大きな理由のひとつだと思う。

最終回まであと2話。今からでも遅くないので見て欲しい『ザ・ラスト・オブ・アス』。大人気ゲームのドラマ化で初めて成功したと大絶賛。音楽も最高。デペッシュ・モード、リンダ・ロンシュタット、パール・ジャムなどについてクリエイター達が語る。ネタバレなので番組を見た人に読んで欲しい。 - ©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.

それで物語について書きたいこともたくさんあるのだけど、ここでは音楽について紹介したい。

多くの優れたドラマや映画がそうであるように、音楽の選び方も最高で、それについてクリエイターたちが放送後にポッドキャストで語っているのを聞いたら、それがとても面白かったのだ。

ちなみに、ここから先はネタバレになる。

この番組には毎回数々の驚きがあるのも見どころなので、以下は絶対に番組を見てから読んで欲しい。現在、少なくとも第1話が無料で見られる。なので、それを見てからデペッシュ・モードについて読んでみて欲しい。それ以外は見る前は読まないで欲しい。

1)第1話:デペッシュ・モード”Never Let Me Down Again”。放送後、ストリームが220.5%上昇。Spotifyでは377%上昇。歌詞の検索は999%上昇



第1話の最後で使われたデペッシュ・モードの”Never Let Me Down Again”のストリーミングが210%上昇した。さらに、歌詞の検索は、999%も上昇した。なぜみんなが歌詞を調べたかというと、歌詞と物語の内容に非常に重要な結びつきがあるからだ。それは、この番組の特徴のひとつでもあり、歌詞が物語を説明していることが多々ある。

クレイグはこの曲についてこう語る

「ここでは、80年代の音楽を多く使っているのだけど、80年代の曲は、問題発生を意味している。ニールが、ゲームでやったことの素晴らしいところは、自分が愛するもののために、自分が傷付くということだ。それから、明るく、元気が出て、美しいものを手にすると、その根底にある闇もついてくること。

それで80年代の音楽には、元気が出るし、楽しい曲がある。”Never Let Me Down Again”を選んだのは、まず聴いた時に、アップテンポな80年代の曲だ!と思うようなものにしたかったから。でも歌詞には闇があるものにしたいと思っていた。それで、この曲で歌われているのは、『I’m taking a ride with my best friend』 (=親友と行くんだ)。つまり、ドラッグについて歌われている。これはドラッグ中毒について曲だからね。

ここでエリーは、親友と旅に行こうとしている。でも、ジョエルは危険な男だ。ジョエルも彼の親友と旅に出ようとしているわけだけど、でも、エリーが彼の親友だということはここではまだ分かっていない。彼女も危険な子供だ。ここで一番大事なのは、お互いが、『Never let me down』(=絶対に失望させないでくれ)と思っていること。でもお互いに失望させることがあり、させないことがあり、させることがある。だからこの曲で始めるのがぴったりだと思ったんだ。

最終回まであと2話。今からでも遅くないので見て欲しい『ザ・ラスト・オブ・アス』。大人気ゲームのドラマ化で初めて成功したと大絶賛。音楽も最高。デペッシュ・モード、リンダ・ロンシュタット、パール・ジャムなどについてクリエイター達が語る。ネタバレなので番組を見た人に読んで欲しい。 - ©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.

この曲は後でもう1度出てくる。それがいつで、どんな風にかはまだ言わない。ものすごく違う方法で、違う場所で聴くことになる」


第1話で使われる曲。

"The Last of Us” Gustavo Santaolalla (ゲームの作曲も手がける
“Tomorrow” Avril Lavigne
“White Flag” Dido
“Chonophobia” “New Oblivion
“I Can’t Believe You’re Back” Had Mhanna, Roy Abdallah, Carole Aoun
“Unstable” Gustavo Santaolalla
“Never Let Me Down Again” Depeche Mode

2)第2話で使われる曲。
“Hampa” Ari Lass
“Allowed to Be Happy” Gustavo Santaolalla

3)第3話:リンダ・ロンシュタット”Long Long Time” 。放送終了から1時間以内でSpotifyでは4900%上昇。翌日には14万9000%上昇。

この回はシリーズの中でも最も話題となった美しい回だ。

最終回まであと2話。今からでも遅くないので見て欲しい『ザ・ラスト・オブ・アス』。大人気ゲームのドラマ化で初めて成功したと大絶賛。音楽も最高。デペッシュ・モード、リンダ・ロンシュタット、パール・ジャムなどについてクリエイター達が語る。ネタバレなので番組を見た人に読んで欲しい。 - ©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.

リンダ・ロンシュタットの曲について、クレイグが語る。

「ビル(ニック・オファーマン)とフランク(マーレイ・バートレット)の心が、この曲を通して通じ合うようなものにしたいと思っていた。それをきっかけにフランクのビルについての思いが変わるようなものにしたかったんだ。彼を深く理解するだけじゃなくて、好きになるようなものにしたかった。それでビルは、ピアノも上手くて声も美しい。ちなみに、実際はマーレイ・バートレットもピアノが上手いし、声も素晴らしいのだけど、ここではものすごく下手な演技をしてもらっているから、それはめちゃくちゃ笑える」


ちなみにこれがビルによるカバーバージョン。

「ビルはこの歌詞にものすごく共感している。だから、絶対に癒されることのない永遠の孤独と傷心を歌う曲を探していた。でもありがちな曲にしたくなかったし、知られすぎてない曲にしたかった。でも、そういう曲を見つけるのはすごく難しかった。だからSeth Rudetskyというブロードウェイで活躍する友人に訊くことにした。彼は全ジャンルの音楽の百科事典並の知識を持っている人だから。

それで彼にメッセージを送った。『永遠の喪失と、切望があるんだが、でもそこに絶対に辿り着くことができない。だから自分は一体何者なんだ?と思っている曲』ってね。そしたらたった4秒後に、『リンダ・ロンシュタットの”Long Long Time” 』って返事がきた。

これは僕も存在を忘れていた曲だった。それで聴いてみたら、これ以上ない完璧な曲だった。それでニックとは、歌詞を理解するのがすごく大事だと言っていた。

ここで歌われているのは、『愛はいつか見つかるし、苦痛や傷心も癒されるから、大丈夫、と人は言うけど。実際そんなことはない。だから私は遠くから、自分の求める人を、最も報われない方法で永遠に愛する』ということだ。

僕は、絶対にそこに辿り着けないと自覚するって、なんて美しいんだろうと思ったんだ」



この突然のヒットを受けてリンダ・ロンシュタットは、現在、現在進行性核上性麻痺というパーキンソン病に近い難病を患っているが、ビルボードのインタビューにメールで答えている。

最終回まであと2話。今からでも遅くないので見て欲しい『ザ・ラスト・オブ・アス』。大人気ゲームのドラマ化で初めて成功したと大絶賛。音楽も最高。デペッシュ・モード、リンダ・ロンシュタット、パール・ジャムなどについてクリエイター達が語る。ネタバレなので番組を見た人に読んで欲しい。

「ゲイリー(・ホワイト/作曲家)には、ギタリストのDavid Brombergを通じて知ったのだけど、彼が、(NYの)グリニッチビレッジにあったCafé Au Go Goに連れて行ってくれて、ゲイリーがPaul Siebelとパフォーマンスするところを見た。それでショーの後に、ゲイリーが、私に”Long Long Time”を演奏してくれたんだけど、聴いた瞬間にレコーディングしたいと思った」

「それはカントリー・ソングではないと思ったし、フォーク・ソングでもないし、ロック・ソングでもない。だけど、ものすごく良い曲だと思った」


実は、リンダ・ロンシュタットは、全キャリアの曲の権利を売ってしまっているため、今回のヒットによって1セントも儲かるわけではないのだけど、「それでも曲が大好きだし、ゲイリーに臨時収入が入ることを嬉しく思う」とも語っている。

ビルボードによるとこの曲は、ロックデジタルソングセールと、リリックファインド USチャート、リリックファインドグローバルチャートの3つのチャートで1位を獲得したそうだ。つまり、クリエイター達の思惑通り、その週世界中の人達が最も調べた曲の歌詞、となったわけだ! この曲は、1970年『Silk Purse』に収録され、当時は、最高で米シングルチャートの25位だった。

TikTokによるフリートウッド・マックの曲から、『ストレンジャー・シングス』によるケイト・ブッシュ、『Wednesday』によるThe Crampsのヒットなども彷彿とさせる現象であり、また昨今原盤権を売るのが流行となっていることも思い出させるヒットだ。

第3話で使われる曲。
“I’m Coming Home to Stay” Fleetwood Mac
“White Room” Cream
“On the Nature of Daylight” Max Richter
“Vanishing Grace” Gustavo Santaolalla
“Long Long Time” Linda Ronstadt

4)第4話で使われる曲。
”Alone And Forsaken” Hank Williams
“True Faith” Lotte Kestner

5)第5話で使われる曲。
“The Way We Were” Eleven.Five
“Fuel to Fire” Agnes Obel

6)第6話:”Never Let Me Down Again”のカバー。

クレイグ曰く第6話の終わりで、再び”Never Let Me Down Again”が使われるのは、

「ジョエルの傷が深刻で、このままで死んでしまう。彼は床に倒れて意識を失い血を流している。ベラがここで見せるのは、『自分が今どこにいるのかも分からないのに、あなたが死んだらどうすればいいの?』という莫大な恐怖感だ。だから”Never Let Me Down Again”が再び使われるんだ」


これは、クレイグにとってはとりわけパーソナルだ。この曲をカバーしているのはクレイグの娘さんJessica Mazinなのだ。

「これは僕の娘なんだ。娘は18歳で、ものすごく才能があるシンガーだ。親バカで言ってるわけじゃない。この回の終わりで、エリーはジョエルを見つめているけど、ジョエルは、エリーが一緒に『taking a ride=旅に出かけた』人だったのに、彼が『Let Her Down=彼女を失望させた』。この曲は”Never Let Me Down Again”(=2度と失望させたりしない)という曲だけど、ここでは、悲しみと喪失という視点から使いたかった。それから女性の声で歌っているものとして使いたかった。それはエリーの心境を代弁していると思うんだ。それでこのカバーは誰でもやってくれたと思うけど、でも僕の家では、廊下の向こう側いにる娘に頼めた。彼女なら絶対にできると分かっていた。

それで娘にこの曲を送って、『スローで恐怖に取り憑かれたような、娘が父を喪失して悲しんでいるような感じでカバーして欲しい』とお願いした。そしたら『分かった』と言われたんだけど、2週間経ってももらえなかった(笑)。それで『どうした?』って訊いたら、『忘れてた』と(笑)。

『お願いしたのはテレビで使いたいからなんだ』って言ったら、『….分かった』とようやくやってくれた(笑)。

ここで使ったバージョンは、エリーの気持ちを代弁したものになったと思う。ジェシカは僕の娘だし、僕はベラのことを自分の養子のように思っているから、この回の最後で自分の2人の娘が一緒になったような個人的に最も美しい瞬間となった」


第6話で使われている曲
“As Palavras na Canção” Pedro Dralha
“All Gone” Gustavo Santaolall
“Ruach Elohim” Gustavo Santaolalla
”Never Let Me Down Again”

7)第7話:パール・ジャムからa-haからザ・キュア

最終回まであと2話。今からでも遅くないので見て欲しい『ザ・ラスト・オブ・アス』。大人気ゲームのドラマ化で初めて成功したと大絶賛。音楽も最高。デペッシュ・モード、リンダ・ロンシュタット、パール・ジャムなどについてクリエイター達が語る。ネタバレなので番組を見た人に読んで欲しい。 - ©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.©2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.

a. クレジットの代わりに冒頭にパール・ジャムの”All or None”が流れる。

ニールがこのオープニングの絶望的な瞬間にパール・ジャムを使ったのは、

「自分が子供の頃から聴いてきたバンドだし、パール・ジャムはとりわけ、物事が辛くなったり落ち込んでいる時に逃避するために聴いていた。それでこの曲は、エリーのこの時の心境を代弁していると思えたんだ。彼女は孤独で、自分がいたい場所にいるわけじゃない。何をすれば良いのか分からない。それから”All or None"というタイトルも、エリーそのものだと思った。『全てかゼロか』という常にやるからには全力を捧げるところがあるから」


クレイグ

「曲を選ぶ時に大事なのは、例えば”Never Let Me Down Again”や “Long Long Time”などもそうだけど、歌詞を徹底的に考えるし、分かりやすすぎるものにはしたくない。それから、使われすぎてる曲にもしたくないし、ポップすぎるものにもしたくない。それで、”Never Let Me Down Again”を使った後で、あの曲をサーチした人達の数が莫大に増えた。まさにそういう曲を選びたいと思っているんだ。この番組を見てファンじゃなかった人にもその曲を知って欲しいから。

それで、僕もパール・ジャムは好きだけど、ニールほどのファンじゃないから、この曲は知らなかった。この曲が素晴らしいのは、始まり方だ。エディ・ヴェダーが歌い出す前に、ギターがすべてを語ってしまっている。『ああ、最悪だ』っていう感じがすでにここにはある。

ここでのエリーの状況は、この曲の歌詞(”It’s hopeless situation”=絶望的な状況だ)で歌われているように単純に絶望的というものではない。なぜなら、誰かがいないから絶望的なわけだから」


b. メリーゴーラウンドのシーンで流れるマジカルなThe Cureの”Just Like Heaven” オルゴールバージョン

クレイグ

「これは編集スタッフのおかげなんだけど、彼はこの番組に関わった多くの人たちと同じでこのゲームにものすごい思い入れがある。それで、このシーンでは絶対にこの曲を使いたいと思っていたみたいで、聴かせてくれたんだけど、これ以上美しい曲もないと思えた。このメリーゴーランドで実際にオルゴールバージョンのこの曲がかかったら最高だし、例えば、オルゴールバージョンの”OKコンピューター”でもカッコ良かったと思うけど。

このバージョンを聴いた時に、この曲を知ってる人ですら、『えっ、これってザ・キュアだっけ?』と一瞬分からなくなるんじゃないかと思う。そうなることも意図していた。というのも、ここでエリーは、ファンタジーの世界に入り込むことを許した場面だから。しかも、本当に”Just Like Heaven” =天国のよう”な瞬間だから」


c. a-ha の”Take On Me”

a-haの”Take On Me”は、エリーがカセットテープで自分の部屋に持っているのが映るのだけど、モールに行った時に、エスカレーターに乗ると流れる曲だ。

この曲の歌詞は、エリーのこの日のライリー(ストーム・リード)との運命を代弁している。

例えば、「I’ll be gone in a day or two(1日か2日でいなくなってしまう)」とか。

さらに歌詞の始まりも「ずっと話しているけど/本当は何を話せばいいのか分からない/でも話し続ける/恥ずかしがりながら今日はあなたに会う日だから」。この日、お互いが気持ちを探ろうとして、ぎこちない会話をする2人の心境を反映している。「あなたに愛して欲しいから行くつもりだ、いいよね?」という部分も。

さらにこの後の歌詞も、この後のエリーの人生を物語っているようだ。
「不器用なりに、人生はなんとかなると学んでいる」「それに行動しないくらいなら(やるだけやって)後悔する方がマシだから」

またゲーマーによると、この曲は『2』でも大事な意味を持つそうだ。

d. Etta Jamesの”I Got You Babe”
この回の最もアイコニックなシーン。モールの中のハロウィンストアで使われるEtta Jamesの”I Got You Babe”。

クレイグ

「これはゲームからそのまま使った曲。ただゲームをした人達も、”I Got You Babe”だと気付かないんじゃないかと思う。なぜならエタのバージョンが(オリジナルと)あまりに違うから。ファンキーだし楽しい」


ニール

「ここでの目標は、ロマンスについての曲でありながら、でもロマンスについてだけのセンチメンタルなものにはしたくなかった。それでこのバージョンに、完璧なバランスがあったんだ。歌詞はロマンスについてだけど、でもこのバイブがすごくファンキーでエネルギーがあるから、本当に何を歌っているのかを隠している。つまりそれこそが、この場面でエリーとライリーの間で起きていることでもあるんだ」


クレイグ

「それに文字通り、(この場面で2人がかぶっているハロウィンの)マスクの下に(本当の気持ちを)隠しているわけだしね。それからこの2人のダンスシーンの撮影の仕方も気に入っているんだ。ライリーは間違いなくエリーよりダンスが上手い。それでエリーはマスクをつけたままゆっくりと止まる。そこでベラ・ラムジーがいかに優れた俳優なのかが分かるんだけど、彼女はマスクをしているから僕らには顔が見えないのに、彼女の体の動きだけで、見ている人たちは彼女が何を感じているのか正確に伝わってくる。それはもう彼女の魔法としか言いようがない」


第7話で使われている曲。
“All or None” Pearl Jam
“Take On Me” a-ha
“Just Like Heaven” The Cure (Carousel Cover)
“I Got You Babe” Etta James
“The Choice” Gustavo Santaolalla

8)第8話 日本時間3月6日放送
9)第9話 日本時間3月13日放送

クリエイター達の話を聞くと、ゲームの展開や、そこで使われている曲を調べれば、この最後の2話の展開が予想ついてしまうのだけど、ゲームをしている人達が絶対に知らない方がいいというので、我慢したいと思う。



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