オリヴィア・ロドリゴが最高すぎる。中絶の権利を覆した米最高裁判事にリリー・アレンと”ファック・ユー”を捧げ、グラストで大合唱。

オリヴィア・ロドリゴが最高すぎる。中絶の権利を覆した米最高裁判事にリリー・アレンと”ファック・ユー”を捧げ、グラストで大合唱。

イギリスではグラストンベリーが週末に盛大に行われたが、その最中24日に米連邦最高裁が、人工妊娠中絶を認める憲法上の権利を覆す判断を下すという、とんでもないことが起きた。これは、1973年の「ロー対ウェイド判決」を否定するもので、つまりそれだけで約50年遡るということ。

当然のことながらアメリカ中で衝撃が走っているが、25日にグラストンベリーに出演したオリヴィア・ロドリゴが、なんとリリー・アレンを迎えて、その判事たちの名前を読み上げて”ファック・ユー”を楽しそうに大合唱した。映像はこちら。

彼女は単独ツアーでも、各地でアヴリル・ラヴィーンなど彼女の尊敬するアーティストと共演してきたし、中絶の権利についてはこれまでのステージでも怒りとともに語っていたので、絶対何か言うとは思ったけど、この日、この場所で、この曲をリリー・アレンと共演しようと思いついたことが天才だ。

彼女がここで語っているのは、

「大好きな人が今日来てくれている。
みなさん、リリー・アレンです!
今日は本当に本当に特別な日だと思う。
実はグラストンベリーに出るのはこれが初めてだし。
そのステージでリリーと共演できるなんて最高の夢が叶ったみたいなものだから。

だけどそれと同じくらい心が痛い。
昨日アメリカで起きたことのせいで。
最高裁が、”ロー対ウェイド判決”を覆すと決めたから。
それは、女性が安全な中絶をする権利と、
基本的な人権を確保するものだった。

だから今本当に絶望的な気持ちになっている。
それにものすごく怖い。
多くの女性や女の子たちがこの法律のせいで
死ぬことになるから。

次の曲を最高裁の5人の判事に捧げます。
つまるところ、彼らは、自由なんて、どうでもいいと思っているってことを私たちに示してくれたから。

この曲を捧げるのは
サミュエル・アリート
クレランス・トーマス
ニール・ゴーサッチ
エイミー・コニー・バレット
ブレット・カバノー

あなた達が大嫌い」


”ファック・ユー”は、まさにこの瞬間のためにあったかという完璧さ。しかも、この楽しそうなノリなところが彼女達の勝利、という気がする。

オリヴィアの凄いところは、まるで物怖じしていないこと。しかも言葉が明確であること。これはビリー・アイリッシュから、詩人のアマンダ・ゴーマンから、銃乱射があったフロリダの高校生たちも同じで、完全に今の世代に共通していることだ。

その前のミレニアム世代は、音楽の表現にしてもここまで明確に外に向かった言葉が発せない。ビリーがいつも言っているけど、「政治について話すくらいなら死んだ方がマシ。でもそんな私でも話さなくちゃいけないくらい事態が最悪」。その切迫感が、ミレニアムと新世代の大きな違いだ。

ちなみに、オリヴィアは、これがフェス初体験。観客としても行ったことがなかったそう。確かにまだ19歳だし、しかも子役でずっと仕事してきたから、そんな時間はなかったのだ。こんなに若くて、賢くて、才能がある人たちが育っているのが、この最悪の状況においてせめてもの救いだ。

さらにグラストでは、オリヴィア以外にも、ビリー・アイリッシュも、フィービー・ブリッジャーズも怒りと苛立ちを表現した。それを観ていて思ったのは、何度も言っているけど、2019年前後から新人の良いライブは女性ばかりだったのは、世の中がこの瞬間に向かっているのを彼女達が察知していたからだと思う。

リリー・アレンも相変わらずお洒落だし素敵。
https://rockinon.com/blog/nakamura/195656



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オリヴィア・ロドリゴが最高すぎる。中絶の権利を覆した米最高裁判事にリリー・アレンと”ファック・ユー”を捧げ、グラストで大合唱。

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