テイラー・スウィフトが大統領の「暴力賛美」ツイートに激怒。「11月の選挙では落選させる」という痛烈な一撃は、最も「いいね」がついたツイートに

テイラー・スウィフトが大統領の「暴力賛美」ツイートに激怒。「11月の選挙では落選させる」という痛烈な一撃は、最も「いいね」がついたツイートに

ミネアポリスで、白人警官が黒人男性ジョージ・フロイドを殺害するという悲惨な事件が起きた後、アメリカ各地でプロテストが起きている。映像や実際に行った人に聞くと大半は平和に行なわれているのだが、場所によってはカオスな状況になっている。

しかし、その状況を沈静化するのではなくて、むしろ煽る様なコメントをトランプ大統領がしたため、テイラー・スウィフトが「11月の選挙であなたを落選させる」と激怒のツイートをして大きな注目を浴びている。


あなたは大統領になってからというものこれまでずっと、白人至上主義者や人種差別主義者を煽り続けてきて、しかも今回も暴力で脅しながらも、堂々と自分はまるでより道徳的に優れているフリをする神経があるって一体どういうこと? 「略奪すれば、発砲する」って??? 11月の選挙で、私達はあなたを落選させる


彼女が、ここまで痛烈な発言をしたことはなかったので衝撃的ではあったが、なんと5時間以内に「いいね」が100万件を超えた。彼女のツイートの中では最も「いいね」のついた投稿となり、その後も「いいね」は増え続けている。

ただし、予想はしていたと思うが、強烈なファンの反発も受けている。自分が正しいと思うことを恐れないで言う、というのが今のテイラーの姿勢なんだと思う。

テイラーが引用した大統領の「略奪すれば、発砲する」という言葉は、実際社会的に衝撃が走る大問題となっている。簡単に言ってしまえば、大統領が「プロテストする人達を撃つ」と脅しているわけだ。

NYタイムズ紙によると、近年の大統領、ジョージ・ブッシュ政権以降、クリントン大統領も、ジョージ・W・ブッシュ大統領も、オバマ大統領も似た様な状況に直面しそれぞれ対応は違ったが、誰1人として、プロテストする人を撃つと暴力で脅した大統領はいなかったということ。
https://www.nytimes.com/2020/05/30/us/politics/george-floyd-trump-obama-bush-clinton.html

大統領は、ミネアポリスのプロテストが激化し、警察署の近くにあったスーパー、ターゲットで略奪が起きたためにこのツイートをしたわけだが、ツイッター社は、このコメントがポストされてすぐに、即幹部会議を行った。そして、ツイッター社としては初めて、「暴力を賛美する」内容であると警告し、非表示にした。

ただし、「社会的な関心を考慮して」クリックすると内容は読める。しかも、大統領は警告されたにも関わらず、その後すぐに「略奪」と「発砲」という言葉を使い、違う言い方にしてまたそれを正当化するツイートをしていた。
https://www.bbc.com/japanese/52858130

さらに、今回この事件で知ったのだけど、「略奪すれば、発砲する」というフレーズには、60年代にまでさかのぼる人種差別用語として闇の歴史がある。背景を説明すると長くなってしまうので簡単に言うと、1967年にマイアミの白人の警察長官が、警察による黒人への不当な暴力、殺害を正当化する意味合いで使ったフレーズなのだ。

その後も人種差別主義者のリーダー達が使ってきた。
だから大統領は今回、敢えて使ったのだろうと誰もが思っていたが、記者にそう訊かれた彼は知らなかったと答えていた。
https://www.nytimes.com/2020/05/29/us/looting-starts-shooting-starts.html

テイラー・スウィフトは、Netflixのドキュメンタリー『ミス・アメリカーナ』の中で、政治的な発言をすることに関して今までなぜ躊躇していたのか正直に打ち明けていた。前回の大統領選の時は、どちらに投票するのか発表しなかったことで叩かれていたのだ。


今回の発言も、ここまで明確な大統領批判をしているアーティストはまだいないので衝撃的だった。CNNなどのヘッドラインにもすぐになっていたし、記録的な「いいね」が付いていた。が、コメント欄を見ると大荒れで、「これでファンを失った」とか「黙れ」とか「これまで子供を連れて観に行ったけど、もう2度と行かない」とかたくさん書かれていた。

2年前の選挙では、彼女が呼びかけた瞬間に記録的に投票登録者が増えた。つまり彼女は、自分の影響力を知った上で、こうなることは分かっていながら発言したのだと思う。その影響力を自分が正しいと思うことのために使い、反発があっても、それを引き受ける覚悟ができているということだと思う。ここまで強烈な発言をする人がいないことも分かるように、それは非常に難しいことだ。

前回の大統領選では、誰に投票するのか発表しなかったため批判されていた。個人的には、彼女は政治家ではないんだから、発言しなくても彼女の勝手だろうと思ったし、元々カントリーという保守的な環境で育って来ているのも影響していると思った。それ以前に、彼女自身の性格もある。

しかも、あのドキュメンタリーでも語っているけど、ディクシー・チックスの顛末を見ていれば誰だって怖いはずだ。ただ、彼女なりの目覚めと、彼女なりのスピードで意識の変化、成長があり、新作周辺で政治的な発言やLGBTQコミュニティへの発言もするようになった。


また、ディクシー・チックスが彼女の新作に参加しているのも良いなあと思った。


すべてが自然な流れでの成長に思え、だから共感できた。今回さらに痛烈な一撃だったので、驚いたが、強くなったなあと思った。

アメリカでは、コロナ禍で元々あった問題が露呈し、それがドミノ式に大きく発展。今回の事件でとうとう爆発してしまった、という感じだ。これをきっかけにBlack Lives Matterの運動が再び加熱している。と同時に各地でそれとは意味が違う暴動にも繋がっていて、コロナ禍からそろそろ国が開き出すという時に、予想していなかったカオスの顛末に向かっているようにも思う。こういう時こそリーダーが舵を取るわけだが……

アメリカでは『ラヴァー』の発売を記念したパリでのライブが放送されたばかりだが、日本ではその音源が聴けるようになっている。



これまでテイラーは、料理やネコのまったりしたポストで外出禁止を呼びかけていた。



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