見所満載。昨日のグラミー賞のライブ映像が一気に公開。レッチリ、ポスト・マローン、デュア・リパ、カーディ・Bなど。女性が本当に「頑張った」&スターが欠席だった授賞式雑感。

見所満載。昨日のグラミー賞のライブ映像が一気に公開。レッチリ、ポスト・マローン、デュア・リパ、カーディ・Bなど。女性が本当に「頑張った」&スターが欠席だった授賞式雑感。

昨日行われたグラミー賞だが、主要部門のアルバム賞は、ケイシー・マスグレイヴス、レコード賞と楽曲賞がチャイルディッシュ・ガンビーノの”This Is America”で、ヒップホップとしては史上初の受賞となった。つまり、少し変化があったと言えるグラミー賞だったと思う。全結果はこちら。
https://www.grammy.com/grammys/awards/61st-annual-grammy-awards

また、授賞式で行われたライブの映像が一気に公開されている。

レッド・ホット・チリ・ペッパーズポスト・マローンの共演。“Stay”、“Rockstar”、“Dark Necessities”。



●激戦の新人賞を勝ち取ったデュア・リパセイント・ヴィンセントのドッペンゲルガーで超クールな共演。“Masseducation”/“One Kiss”。



●女性のソロ・アーティストとして史上初のラップ・アルバム賞を受賞したカーディ・Bの”Money”。今年のグラミー賞のハイライトのひとつに挙げられている。ここまで堂々としたパフォーマンスを観せながらも、スピーチではいきなり「息ができない」と言って素に戻っていた。どんな時でも自分らしくあるのが、彼女が人の心をつかんだ最大の理由だ、というのがこの2つのシーンで明らかに分かる。

https://www.grammy.com/grammys/videos/cardi-b-money-2019-grammys-performance

また彼女は、同じ部門でノミネートされていたマック・ミラーの両親が招待されていたことや、さらに彼らがもし自分の息子が獲れなかったらカーディに獲って欲しいと言っていたのを後から知ったそう。この賞はマック・ミラーと分かち合います、と言っている。


●共演したプリンスの影響をもろに感じるジャネール・モネイの“Make Me Feel”。カーディ・Bやセイント・ヴィンセント同様、今の女性の自由なセクシャリティの表現をクールに象徴している。

https://www.grammy.com/grammys/videos/janelle-monae-make-me-feel-2019-grammys-performance

●ジャネール同様、プリンスを彷彿とさせる、あまりに味のあるギターを聴かせて話題となったH.E.R.の”Hard Place”。見事R&BパフォーマンスとR&Bアルバムを受賞。「まだアルバムも出てなくて、EPなのに!」と受賞スピーチであどけなく言ったのが印象的だった。



●女性アーティストとして最高の6部門でノミネーションされていながら、H.E.R.同様知名度が低かったブランディ・カーライル。しかし、このパフォーマンスがあまりにパワフルで、会場が感動で包まれていくのが分かる。ポスト・マローンも聴き入ってる。

放送される前の受賞式では、「アメリカーナは、ミスフィッツで溢れた島だと思う。私は本当にミスフィッツだったから。高校生の時、15歳でゲイと告白してから誰もダンスパーティに誘ってくれなかった。だから私はダンスする場所がなかった。だけど、このコミュニティが温かく迎え入れてくれたおかげで、生涯ダンスができるようになった。この島に感謝したい」と感動的なスピーチをしていた。彼女は、アメリカーナ・アルバムなど3部門で受賞。

https://www.grammy.com/grammys/videos/brandi-carlile-joke-2019-grammys-performance

ショーン・メンデスのパフォーマンスにマイリー・サイラスがサプライズで登場。



●さらに、時代を超えた共演をみせたドリー・パートンのメドレー。BTSがダンスしている姿があまりに楽しそうで話題に。ドリー・パートンの売り上げに貢献したはず。

https://www.grammy.com/grammys/videos/dolly-parton-friends-medley-2019-grammys-performance

●また映像はポストされていないが、割と行儀の良いパフォーマンスが多い中で、トラヴィス・スコットのパフォーマンスは変化があって良かった。冒頭で、ジェイムス・ブレイクが出演したのも嬉しかった。

●グラミー賞全体のハイライト。去年は、テレビ放送枠で女性が1人しか受賞しなかったことも批判されたが、パフォーマンスのみならず、ガガの受賞に始まり、ケイシーの受賞に終わった今年、受賞者も女性が目立った。

https://twitter.com/RecordingAcad/status/1095124073930092549

●デュア・リパが受賞スピーチで、「今年は女性達が本当に『頑張った』年だった」と語ったのも賞賛された。去年、レコーディング・アカデミーの会長が「女性はもっと頑張れ」と発言したのを反撃するコメントだったからだ。

実際、今年のグラミー賞のハイライトはほとんどが女性のパフォーマンスだったと多くのメディアも書いている。さらにラテンに始まり、ヒップホップが主要部門で初受賞するなど、これまで以上に多様性のあったグラミー賞でもあったと言える。

●司会のアリシア・キーズに始まり、のっけからこの日最大の盛り上がりとなったミシェル・オバマのサプライズ登場。そこで彼女が告げたように、音楽が力を発揮した授賞式だった。


●『アリー/ スター誕生』でブラッドリー・クーパーとハリウッドの王道的なパフォーマンスを披露してきたレディー・ガガ。この日は、ブラッドリーがイギリスのBAFTAに出席して出られないため“Shallow”をこれまでの泣きの解釈とは一転、いきなりハード・ロックか、グラムか、という予想外のパフォーマンスを観せたのだが、さすがガガ。いまだに人を驚かし続けると絶賛された。いかにヒットしても、彼女が常に最大の努力をし続けている証拠だ。


●キューバ出身のカミラ・カベロは、去年大ヒットしたのに、グラミー賞の主要部門を受賞せずに非難された“Despacito”のお返しとは言わないが、今どれだけラテン人口が音楽シーンでパワーを持っているのかを見せつける、誰をも受ける入れるような圧巻のパフォーマンスを披露。リッキー・マーティンに、Young Thug、J.Balvinもコラボ。

しかも、これは後で気付いたのだけど、何気に「壁を作るな、橋を作れ」というメキシコとの国境へ壁を作ると言っている大統領へのメッセージも掲げていたのだ。政治的なメッセージが最小限だった今年の授賞式において、重要な瞬間となった。


●そして肝心のアルバム賞は、ケイシー・マスグレイヴス。グラミー賞の趣味にふりきれるでもなく、ヒップホップが獲るでもなく、中間のジャネール・モネイか、ケイシーかという選択肢の中で、彼女に振れたのはグラミー賞らしいとも言える。

しかし、「カントリーだった。やはりグラミー賞は変わらない」と簡単に片付けるのは違うと思う。というのも、彼女は自分の曲でLGBTQコミュニティを支持するなど、その曲のあり方や表現がカントリー・シーンの異端であり、そこがカントリー・シーン以外の場所で評価された理由だったから。しかもそのせいで、伝統のカントリー・シーンでは無視されてきたのだ。つまり、彼女は危険を犯しながらも、自分らしい表現を恐れなかった。それは、カーディ・B、ジャネールといった、今の女性達の表現に共通している。

だから、ハリー・スタイルズなどが彼女を前座に起用したのだと思う。そういう意味では今年を象徴していたのだ。ただ、ケンドリック・ラマードレイクのようなスーパースターではないので、どうしても地味であるのは否めない。ただ、ケンドリックはサントラだし、ドレイクは批評家の評判が高くなかったので、今回決定的な作品はなかったのだ。批評家の評価は高かったが、一般的なメディアは「驚きの受賞」と書いていた。


●また、今年は初めてグラミー賞に出席したというBTSが各所でスターの輝きを放ち目立っていたのが話題となり、GIFになりまくっていて、授賞式の最中も何度もカメラで抜かれていた。ラテンに続き、韓国スターのアメリカでの大ヒットも時代の変貌を象徴していたと思う。

https://twitter.com/billboard/status/1095025927476703232

●放送されなかった部分の授賞式では、クリス・コーネルがロック・パフォーマンスを受賞し、子供達がスピーチしたのも話題となった。


●女性が頑張った以外で大きな特徴だったのが、出席しなかったスーパースターだ。まず、そんな中でドレイクは来た! なんとこれまで、グラミー賞を批判し、ボイコットをしたこともあったドレイク。今回も来ないのではと言われていたが、ラップ・ソングを受賞し、初めてテレビ放送中に賞を受け取った。過去に3回受賞しているが、初めての際はテレビ放送されず、その他2回はボイコット。だから今回初となったのだ。

ドレイクは、言わずもながだが、世界一ストリーミングが多いアーティストだ。つまり、今世界一のスーパースターと言える彼がステージに上がることはファンにとっては大事な瞬間だ。しかし、なんとその貴重なスピーチを途中で切ったのだ!!! ありえない。もちろん大騒ぎとなっている。プロデューサー側は、「もう終わったと思った」と語っているのだが........。

怪しいのは、彼がそのスピーチでグラミー賞の批判をしたことだ。なので、わざと切ったのではと誰もが思った。しかし、そのスピーチの内容は正しいし、感動的とすら言えるものだった。

「この機会を使って、いつか音楽をやりたいと思っているキッズに、また心を込めて音楽を作り、純粋に真実を語ろうとしている仲間に言っておきたいことがある。俺達がやっているのは、事実に基づいたスポーツではなく、意見に基づいたスポーツだ。だからNBAのように正しい決断をして、試合に勝ったからトロフィーを持っているわけではない。このビジネスは、場合によってはカナダ出身で人種の混じった子供が何を言いたいのか、NY出身のクールなスパニッシュの女の子(カーディ・Bのこと)や、またはヒューストン出身のブラザー、トラヴィス(・スコット)が言わんとしていることが理解できないかもしれない人達によって決められている。だけど俺がここで言いたいのは、自分の曲を頭から終わりまで全部歌ってくれる人がいたらもうそれで勝者なんだということ。自分の故郷でヒーローだったらもう勝者なんだ。もし普通の仕事を持った人が、地道に働いて稼いだお金でチケットを買ってくれて、雨が降っても、雪が降っても、自分のコンサートを観に来てくれたら、これ(グラミー賞)は必要ないんだ。絶対に。君はすでに勝者なんだから」と。そこで、一瞬間を置き、「だけど」と言った時、映像が引きになって切られてしまった。

酷い。酷すぎる!!!!!

だからスーパースターは来ないんだよ。

ドレイクは、しばらくはもう出席しないだろう。

それでしばらく怒り心頭だったのだが、ドレイクは余裕のインスタをしていた。「正直すぎてTV向きじゃなかった」と。


また「故郷のヒーロー」と言っているが、彼の故郷のトロントがグラミー賞を讃え、街の中で一番目立つCNタワーを金色にしている。ドレイクのアルバムのジャケットでも使われているタワーだ。


●今年のグラミー賞は、不在であることが何より雄弁に語っていた。まず、ヒップホップで史上初の主要部門2部門で受賞する快挙を成し遂げたチャイルディッシュ・ガンビーノが欠席。これは大問題だ。しかし奇妙だったのは、ガンビーノがPLAYMOJIになるGoogle PixelのCMが放送中に流れ続けたこと。しかもここで新曲“Human Sacrifice”を発表している。ガンビーノは去年のツアーで最後と言っていたが、まだ今年もライブしているので、引き続き新作を待ちたい。


●さらに、最多ノミネートされたケンドリック・ラマーも欠席。また、ドレイク、チャイルディッシュ・ガンビーノ、ケンドリックという、今のスーパースター3人が揃ってパフォーマンスを断った。それにより、グラミー賞がどれだけ改革をしようとしても大きな問題が残っていることは明らかだ。つまり、多くのファンが見てくれないから。しかし、今回のドレイクの扱いを見てもそれが解消される気配はない。

アリアナ・グランデテイラー・スウィフトが欠席。今最も人気のあるポップスター2人も欠席。アリアナを「侮辱された」と思わせてしまうグラミー賞は間違いだし、テイラーも1部門しかノミネートされていなかった。しかも、ポップ・ボーカル・アルバム部門で、それはアリアナ・グランデが初受賞した。

しかし2人ともインスタで雄弁に語っていた。本来だったらグラミー賞に着ていくはずだったZac Posenが作ってくれたお姫様ドレスを披露したアリアナ。「今日は会場に行けなかった。(信じて。最大限の努力はしたの。)こういう賞には重きを置かない様にしているけど、でもファック……すごくワイルドで美しい。ありがとう」とコメントしている。


さらにガンビーノと一緒で、アリアナも新曲の“7 rings”が流れるアップルのCMが何度も放送されていた。


テイラーもテイラーでお姫さまのようなドレスを披露。


ボーイフレンドのジョー・アルウィンとBAFTAに出席している。


つまり、みんなファンとソーシャルメディアで直にコミュニケーションが取れる。そんな今だからこそ、彼女達に出てもらうことが大事なのに。そこが分かっていないようだ。

視聴者数は、去年の史上最低を記録した1980万人から1990万人に少しだけ増えたようだ。しかし肝心の19歳から49歳枠は5%下がったそう。若者のスターが出なかったからだ。

またグラミー賞でパフォーマンスしたアーティストの売り上げは全体で480%上昇。

H.E.R.の“Hard Place”は、102000%アップ。ケイシー・マスグレイヴスは、9430%アップ。ブランディ・カーライルの“The Joke”は、2771%アップ。ガガの“Shallow”は229%アップした。

少し前進したと思えるグラミー賞、まだまだ改革が必要だが、来年はどうなるのか? スーパースターが出てくれるのか?
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