ポップの既成概念を刺激するSiaのコンサートが面白かった

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この夏NYで行われたPanoramaフェスで初めて観てびっくりしたSiaのライブ。その単独公演を、10月25日にブルックリンのバークレイズ・センター(キャパ約2万人)で観た。

感動的だったのは、ポップな分かりやすさはそのままに、エッジのあるアートと一緒に表現しようとしていたところ。その結果、「ポップ」という表現を少し前進させるようなライブとなっていたのだ。

具体的にどういうことかというと、ステージ上にSiaはいるのだけど、むしろ黒子。実際にパフォーマンスを行っているのは、MVに出演しているようなパフォーマー達だ。
例えばこのMVのような感じ。

2時間弱のライブで、Siaはステージの後ろのほうで動きもせず、ずっと顔を隠して歌っている。その間、Siaと同じ髪型をした彼女の分身のようなダンサー達がパフォーマンスを繰り広げている。
そういう設定だけでも、大ヒット曲が大量にあるポップ・スターのステージとしては、あまりに異様で、かつ画期的だ。
しかもそのパフォーマンス自体も、数人からなる非常にシンプルなもので、例えば、ビヨンセとか、リアーナのステージで派手なパフォーマンスを繰り広げるダンサー達の演出とは対極的で、ステージ・セットもオフ・ブロードウェイのアングラ劇団のようなものなのだ。
ただ、そのパフォーマンスのクオリティは、圧倒的に高くて美しい。

また、巨大なアリーナなので当然、ステージ上で行われているパフォーマンスがスクリーンに映し出されている。

ステージ上のパフォーマンスと、スクリーンに映っている映像は、当然まったく同じ。しかし、途中で、もしかしてスクリーンに映っているのは、ステージのパフォーマンスではないのかも?と気付かされる瞬間がある。それは、映像にポール・ダノや、クリスティン・ウィグなどの有名俳優が登場するからだ。彼らの顔が映し出されると、会場から歓声が上がるのだけど、全米ツアーのステージで彼らがパフォーマンスをするわけがないし、よくよく観てみると、ステージ上にいるのは彼らではないことが分かるのだ。

つまり、ステージ上では、Siaの分身がパフォーマンスをしていて、スクリーン上にはその分身の分身が映し出されているということ。スクリーン上に映っている映像は、もちろん事前に撮影されたものなのだ。
さらに会場には、Siaのウィグを付けたファンが大量にいて、いたるところSiaだらけという感じ。

Siaは、彼女の書くポップ・ソングが自分にとってどんな意味があるのかを、このステージでアーティスティックな方法で表現しているのかも?と、こうした演出を観て思った。

最新作『ディス・イズ・アクティング』に収録された曲は、もともとはリアーナや、ビヨンセ、ケイティ・ペリーなど大物アーティストが歌うことを想定して作られものだ。つまり、彼女達が採用しなかった曲を集めた作品であり、Sia がここで書いた曲は、最初から自分のものであって自分のものではなかったということだ。
そもそもポップ・ソングというのは、歌い手のものであっても、最終的には観客のものになっていく性質がある。そういうポップ・ソングのひとつの性質を、Siaは、このアーティスティックなステージで表現していたように思うのだ。

ただ、スゴいのは、2時間弱、本人が顔も見せず動きもせずに、ミニマルでアーティスティックなパフォーマンスが展開されているのに、ライブは決して小難しいものではなくて、観客は全曲踊りまくり、歌いまくりだということ。それは一重に、Siaの曲がすべてヒット曲だし、ベタと言えるくらいの超メインストリームのポップ・ソングばかりだからだと思う。

超メインストリームなヒット曲と、アーティスティックなステージの組み合わせが、何か刺激的で新しいポップを提示しているように思えて面白かったのだ。

写真は夏のフェスPanorama からのもの。

ケンドリック・ラマーが参加して話題となった“The Greatest”のMVはこちら。

セットリスト
1. Alive
2. Diamonds
3. Reaper
4. Big Girls Cry
5. Bird Set Free
6. One Million Bullets
7. Cheap Thrills
8. Soon We'll Be Found
9. Fire Meet Gasoline
10. Elastic Heart
11. Unstoppable
12. Breathe Me
13. Move Your Body
14. Titanium
15. Chandelier

Encore
16. The Greatest
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