2009下半期ベスト 第9位

2009下半期ベスト 第9位

2009年超私的ベスト・アルバム、下半期編、第9位はThe Drumsの『Summertime』。

この作品を果たしてアルバムとしてランクインさせてしまっていいのか、というか、それよりも私が購入した盤って、裏ジャケットの曲順と実際に収録されてる曲順がまったく違ってるんだけどいいのだろうか(1曲目と最後の7曲目しか合ってないでやんの)、という心配もあるのだけど、どうしても2009年にはこの作品があったということを刻んでおきたくてセレクト。

とにかくこのバンドの音が伝えているものがいいのだ。それは、サウンドがいいとかではない。それが伝えるものが、たとえば肯定的でいいとか、暴力的で凄いとか、いろんな「いい」の見方があって、そういう視点から見た場合、このThe Drumsの音の伝えるものというのが、「凄まじくアイロニカル」というところがいい、のである。
たとえばそれは、セックス・ピストルズが「I Wanna Be An Anarchist」と歌うときに感じるアイロニーに似ているものだ。それは、もちろん字義通りに受け取れるものでもありながら、同時に言葉通りに受け取ってはいけないものでもある。というか、その2つの間を軽やかに移動する、その移動そのものにこそ、ピストルズの画期性と凄味があるのだ。
The Drumsも同様である。彼らが「ママー、サーフィン行きたいー」と口笛交じりに歌うとき、あるいは、「自分が正しいのか間違っているのかわからないけど、そばにいてね、ベイベー」と歌うとき、そこには、決して言葉通りに、あるいは、そのポップネスの通りに、それらを受け取ってはいけない何かがある。それは、周到に練られた、あるいは、彼らがこの時代に生きる者として必然的に体得してしまったアイロニーかもしれないからだ。

全7曲にわたって展開される、この恥も外聞もかなぐり捨てたポップ・アレンジと、痴呆寸前とすら呼んでもいい内容のラブ・ソングを聴いていると、なぜだか無性に、エキセントリックな覚醒感に襲われていくのである。
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