何より驚くべきは、たなかとササノマリイによる初のツインボーカル体制が取られたことだ。リリースよりも一足先、10月23日にZepp DiverCity(TOKYO)で行われた「Dios Tour 2023"&疾走"」ファイナル公演にて披露された際にも、オーディエンスからは大喝采と歓呼の声が上がっていた。皮膚の内側を素手でなぞるような鋭敏さで容易に琴線に触れてくるIchika Nitoのギターリフ、《スタンダロン/うまくいくよ、ひとりで泳げる 大丈夫》と歌い出すたなかのボーカルからは己を信じて鼓舞する力強さを感じつつもファルセットで見せるギリギリの危うさに酔いしれる。そして、《君がいなくても 生きてかないとさ》とか細くも確信を持って絞り出されるササノマリイの歌声が響いた瞬間、ササノ個人の楽曲"自傷無色”(たなかもカバーしている)でも感じた、心に、脳裏に焼き付く強烈な薫りは彼の歌声が持つ奇特な吸引力が成せる業なのだと思い知らされた。ササノの歌声は、放たれた瞬間に交わる音を片っ端から吸い込むようにそこに存在しているのだ。
続く《そうして僕ら強くなるんだ》という一節では一瞬たなかとササノどちらが歌っているのかわからなくなってしまうほどにその歌声はDiosを丸呑みにしていた。今作ではTAKU INOUEと永山ひろなおがアレンジに参加していて、もちろんこれまでの楽曲同様に頭を空っぽにして身も心も預けなら聴くことができるダンサブルなナンバーとしても申し分ない。しかし、ひとたびたなかが紡ぐ言葉をひもといていけば、頭をフル回転させながら踊り狂うことが可能となるのだ。《ひとりで泳げる》と歌いながらも《あなた無しでなんて生きていけない》と嘆き、最終的には《スタンダロン/ 誰の手にも 委ねやしないよ 超だるいけど》とあけすけに本音をぶちまけながら《共依存の海を抜けて》着実に明日へと突き進む。他者と交わることで自己を確立し、共依存から抜け出し互いに独立して始めて共存することができる。"スタンダロン”と題されたこの歌をツインボーカルで歌うのは、それが「自立と共存」の最適解であるからに違いない。(橋本創)
『ROCKIN'ON JAPAN』12月号のご購入はこちら