ヴァンパイア・ウィークエンドのエズラ、パンダ・ベアとの奇妙な一夜を語る
2013.10.11 11:45
ヴァンパイア・ウィークエンドのエズラ・クーニグは、ミュージシャンが自由にエッセイを執筆するサイト、ザ・トークハウスでデンマークの某バンドのヴォーカル「ハンス」を「許すまじ」と語っている。
エッセイは元々10月16日にリリース予定のドレイクの最新作『ナッシング・ワズ・ザ・セイム』についてエズラが10点満点だと評価する内容のものだったのだが、実はまだ全部聴いていないと白状しつつ、エズラは特に"Worst Behaviour"という曲を絶賛していて、音楽をやっていると人に裏切られることが多々あって、そんな心情をよく代弁してくれていると解説している。そして、自分は大概のことは許すけれども忘れないようにして、ただ、なかには忘れも許しもできないこともあると綴り、そうした一例が問題の「ハンス」なのだと綴っている。
このデンマークのバンドに出会ったのは2007年オレゴン州ポートランドのことで、この時ヴァンパイアは前座を務めたのだが、このバンドのアンプが壊れてしまったので貸してくれないかという依頼がツアー・マネージャーを通してあって、バンドは喜んでエズラのアンプを貸したという。ライヴの後、エズラはハンスと言葉を交わし、お互いにいいライヴだったと称え合い、さらに二人ともいかにアニマル・コレクティヴが大好きかという話で盛り上がり、ハンスは数か月後にはニューヨークでライヴがあるからその時は必ず落ち合おうという話になったそう。
その数か月後、エズラはハンスのバンドがニューヨークに翌日来ることを知るが、メールをくまなくチェックしても連絡が来ている痕跡はなし。ヴァンパイアのSNSも隅までチェックするがまったくなんのコンタクトをよこしてきた気配がない。なお、この時点でヴァンパイアのブログではハンスたちのバンドが好きなトップ8位に置かれていたという。
なんだか苛々してきてオーストラリアの女性ラッパーでモデルのイギー・アザリアに持ちかけてみると、「きっと大変なのよ」でも自分から声をかけてみたらと言われて、ショートメールでライヴが完売しているようなので入れてほしいと送ってみるが、これにも返信はなし。
きっとデンマークの携帯がアメリカではうまく機能しないのだろうと気を取り直してエズラはライヴの会場となるバワリー・ボールルームのスタッフの友達に連絡を入れて二人入れてほしいとお願いする。ただ、当時の奥さんは子供がまだ小さくて面倒を看なければならず行けなかったので、エズラはハンスと話で盛り上がったアニマル・コレクティヴのパンダ・ベアに一緒に行かないかと声をかけて、「ではお言葉に甘えまして」との返事を得る。そこへ携帯が震えて、ついにハンスからメールが来たと確認するが、メールはパンダ・ベアからで大学時代の友人のネイサンも入れてほしいというもので、エズラは会場の友達にまた話をつけたという。
その後、エズラはパンダ・ベアとネイサンと落ち合うが、ネイサンはエズラと初めて会った開口一番に「一番近いATMってどこ?」といきなり訊いてきたそうで、こいつ何者だとエズラは怪訝に思ったそう。そこから3人でバーベキューを食べて(エズラの発案ではなかったという)会場に向かうことにしたが、その間、パンダ・ベアとネイサンはずっと大学の思い出話に興じていたという。「こんな話をしても退屈だよね」とエズラに断りながら延々と大学の話をし続けたとか。
しかし、時間の読みはピッタリで会場に着くと、ハンスのバンドの出番の1曲目。ライヴは最高だったとエズラは振り返っていて、アンコールで観客は狂乱状態になったほどだったという。その後、挨拶をしに楽屋へ向かうと、セキュリティーにパスがAAA(オール・エリア・アクセス)ではないからだめと止められる。そこでエズラはまたしてもハンスにショートメール送信を試みる。
「ライヴ最高だったね! 下にパンダとパンダの変な大学の友達といるんだけど。挨拶に行っていいかな? なんか飲みもの買ってく?」
ハンスから連絡を待っていると、パンダはグリズリー・ベアのダニエル・ロッセンがバーにいるから挨拶してくると言ってその場を離れてしまったが、エズラはこの当時はダニエルを知らなかったので自分が行くのは遠慮したとか。というわけで、ネイサンと二人っきりで残されて妙に間抜けな展開になってしまい、今日のライヴはよかったかとネイサンに訊くと、ネイサンはイカシてたと答えてから、いきなり従兄弟がチェロ弾きで、大きなオーディションの前にはいつもベータ受容体遮断薬(心臓発作の予防薬)を飲んでいるのだなどといった意味不明な話をし続けたという。エズラは話を次のようにまとめている。
「おっと、でも原稿の字数制限まで来ちゃった。ここまで読んでくれてありがとう。というわけで、ハンスのやつにファック。パンダ、やっぱりあんたかっこいいね。ネイサン、もっとチャンスをあげなくてごめん。でも、かなり早い段階できみはアウトだったよ。前の奥さん、ずっと愛しているからね。結婚生活をどうにかできなかったことが今でも悲しいです。きみとぼくたちの息子がアトランタでの生活を楽しんでいることを願っています」
なお、ハンスの在籍するデンマークのバンドとはザ・ドリームズのことかと思われる。