ピーター・フック、幻のジョイ・ディヴィジョンのテープ獲得に失敗したと語る

ピーター・フック、幻のジョイ・ディヴィジョンのテープ獲得に失敗したと語る

先月、ジョイ・ディヴィジョンのファースト『アンノウン・プレジャーズ』のマスター・テープのコピー音源やアウトテイク音源などのテープが売りに出されていることが明らかになって話題を呼んだが、ピーター・フックは音源の入手に失敗したことを『ザ・ハリウッド・リポーター』誌に語っていて、「ハッピー・エンディングにはならなかった」と説明している。

テープを売りに出しているのはプロデューサーでレーベル・オーナーのジュリー・アダムソンで、今回売りに出したテープはどれもファクトリー・レコードのプロデューサーのマーティン・ハネットが廃棄処分していたのをジュリーがゴミ箱から救い出したものだとされている。そのテープの中には『アンノウン・プレジャーズ』のマスター・テープのコピー音源、ジョイ・ディヴィジョンのアウトテイク音源、ニュー・オーダーの音源など、ジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーに関してのテープが6本含まれていたという。特に『アンノウン・プレジャーズ』に関してはレーベルからマスター・テープが失われてしまっていて、現在リリースされている音源はアナログ盤から起こした音源だとされているだけに非常に価値のある音源だと話題になっていた。

この報道を受けて、ピーターはジュリーに接触を試みたというが、「それ相当の金額を申し出」て、1週間ほど考えてほしいと提案した結果、その翌日にジュリーから連絡を受けて「金額が足りない」と断られたことを『ザ・ハリウッド・リポーター』誌に語っている。

「まるで誰かがファラオの墓を発見したようなもんだよ。これまで隠されてきたジョイ・ディヴィジョンのテープが煌めく甲冑を装った騎士の手によって取り戻されたんだよ。と思ってたら、残念なことにジュリーはテープを人質に取り始めたんだ」

なお、ピーターは音源を実際に聴いてはいないが、ジョイ・ディヴィジョンの音源に関しては“シーズ・ロスト・コントロール”の未発表テイクと“ニュー・ドーン・フェイズ”のテイク2種が含まれているのではないかと踏んでいる。ただ、音源が一般に公開されてしまったら最後、ダウンロードされてしまうので、コスト的に見合わなくなってレコード会社も音源獲得に動けなくなるとピーターは指摘している。なお、ピーターとしては自身がテープを獲得できていたなら、音源をリリースできるか判断した後、テープはマンチェスターの科学産業博物館に寄贈するつもりだったと語っている。

さらにピーターはジュリーに提供するつもりだった見返りについて次のように説明している。
「ジュリーはテープを探し当てたんだよ。これはすごいことだよ! 以後、ずっと俺たちのダチだという世界だな! それで、では、謝礼金をお支払いします、ありがとうございますとなって、もちろん、リリースしたレコードにはクレジットも入れさせていただきます、となるんだよ。さらに、あなたなしにはこの作品は可能にはならなかったんだから、作品の売上のうちの数パーセントも印税としてお譲りしますということになってたはずだよ」

しかし、ジュリーがいったんバンドからの申し出を断ったからには、ジョイ・ディヴィジョンとニュー・オーダーの作品のリリース権を持っているワーナーはジュリーに対してそう寛容には出ないだろうと説明していて、今後訴訟沙汰になるのではないかとピーターは予想している。そうなった時の唯一の望みをピーターは次のように説明している。
「髪長姫のラプンツェルのように髪を牢の塔から垂らしておいてくれれば、よじ登ってテープを救出し、龍の首を叩き斬るんだけどな。俺とバーニー(・サムナー)とで白馬の騎士となる図なんて想像できる?」

なお、9月10日からピーターは自身のユニット、ザ・ライトを率いたニュー・オーダーのアルバム全曲ライヴのアメリカ・ツアーを開始しているが、現在執筆中だというニュー・オーダーについての回想記について次のように語っている。
「半分以上はもう書き終えたんだけど、面白いことにバーニーも本を出すって発表したんだよね。だから、俺の本はバーニーの本と同じ日に、2014年の10月に出すつもりだよ。こうしてまた、ブラー対オアシスの再来となるんだよ。俺の方の本はジョイ・ディヴィジョンの本(ピーターが昨年出版した『Unknown Pleasures: Inside Joy Division』)とはずいぶん違った感じになるはずだよ。俺としては書いててあまり楽しいもんじゃないんだ。いろいろ書いてて辛いことがあるからね。もちろん、最初の頃はすごく楽しかったと認めざるを得ないし、そういうことは思い出してみてよかったよ。ただ、ニュー・オーダーではいろんな問題がその後はびこることとなってね。あんまり自慢できないようなことがたくさんあったんだ。ジョイ・ディヴィジョンの頃はもっと単純だったし、活動期間も短かったし、みんなの関係も密で、みんなしっかり活動に専念してたからね。唯一問題となっていたのはイアン(・カーティス)の病気だったんだ。でも、ニュー・オーダーには当てにならないところがあって、それが解散までどんどんどんどんひどくなっていったんだよ。それとファクトリー・レコードとハシエンダの資金的な問題も山積してたしね。それとニュー・オーダーの中では権力闘争がたくさんあって、これはとても不愉快だったし、思い出すにも不快なもんなんだよ」

なお、現在のツアーでピーターはニュー・オーダーのファーストの『ムーヴメント』とセカンド『権力の美学』の全曲ライヴを披露しているが、現在のセットで一番気に入っているナンバーは“エイジ・オブ・コンセント”だとピーターは次のように語っている。
「“エイジ・オブ・コンセント”を今やっているように演奏するのは最高なんだ。どろどろの離婚調停を経た後で、週末に自分の子供たちに会えたような気分になるんだよ」
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