名作アニメ『101匹わんちゃん』(61年)で初登場し、毛皮のコートを愛しすぎるがゆえに、ダルメシアンの子犬たちを誘拐しようと企んだ、ディズニー史上最強の「悪女キャラ」は? 答えはもちろん、クルエラ・ド・ビル!
現在公開中の『クルエラ』は、華麗な英国ファッション業界を舞台に、そんな過激な悪女の「誕生秘話」が明かされる実写映画なのだけど、中でもロック・ファンにとって注目なのは、若き日のクルエラ(エマ・ストーン)の重要なインスピレーションとして「パンク」が登場することだろう。
ご存じのように、70年代の後半、英国のロンドンで興ったパンク・ムーブメントでは、音楽のみならず、ファッションもまた重要な「武器」のひとつであった。その一番の象徴が、セックス・ピストルズのファッション・デザイナーにして、のちに「パンクの女王」と崇められたヴィヴィアン・ウエストウッドだったわけだけど、映画『クルエラ』には、そんな「元祖ロンドン・パンク」へのオマージュをちりばめた、エッジ利きまくりなファッションが満載。
「他の誰とも絶対カブらないこと」へのこだわりこそが圧倒的なカリスマ=クルエラ・ド・ビルの原点だった!……という、大胆不敵で、「ウォルト・ディズニーもびっくり!?」な新説に、思わずニヤリとほくそ笑んでしまう人も多いはず。
そして、そんな「パンク魂」が映画中で最高潮に荒ぶる瞬間はと言うと、クルエラと仲間たちが「ゴミ収集車」で颯爽と現われ、宿敵のバロネス(エマ・トンプソン)を挑発しまくるシーン!
BGMとして流れるのはクラッシュの“ステイ・オア・ゴー”だ。82年発表の5thアルバム『コンバット・ロック』に収録された同曲は、言うまでもなく彼らのキャリアを代表する人気曲であり、《とどまるべきか? それとも進むべきか?》という意味深な歌詞も含め、クルエラからの「宣戦布告ソング」としてまさにぴったり。Cool(クール)にしてCruel(残酷)なパンクの「新女王」、ここに爆誕!の瞬間を、ぜひお見逃しなく。 (内瀬戸久司)
映画『クルエラ』の記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。