「友人の不在を悲しみ、死者を悼む曲もある。「不満を持つな」と自分に言い聞かせている曲もある。以前は、もっといいミュージシャンにとか、そういう思いが強くて、いつも不満を抱いていた」
まるで天上の調べが如き多幸感に溢れているのに、しかしだからこそ、その裏側にもはや自分は実存していないのではないかという濃い不安が張り付いた、あの感覚。限界まで高められた音楽的密度、作家の状態、思想、概念が全て奇跡的なバランスで揃った時にのみ、大衆音楽のひとつの極点としてごく稀にそんなアンビバレントな感覚をもたらす音楽が産み落とされる。その最たる例がビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』だとすれば、同作の高みを志向したフリート・フォクシーズの『Shore』もまた、その領域にリーチしたアルバムであると言い切ってしまっていいだろう。
ロビン・ペックノールドはただ独り、どのようにしてここまで辿り着いたのか。ポジティビティに満ちた曲作に努めた昨2月。3~5月のロックダウン時に図らずも没入することとなった自己探求の旅。そして、今一度社会と向き合いリリックを練りながら、自身が音楽によって成すべきことについてひとつの答えを導き出すに至る、6月以降。「時代を超える作品」を手にすべく、狂気の森に迷い込みそこから帰還するまでのプロセスを、このインタビューでロビンは驚くほど自然体で語ってくれている。(長瀬昇)
フリート・フォクシーズのインタビューは、現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。