「『ソルファ』を再録してわかったんですけど、バンドって体、ボディが大事で。だから、ソフトはなんでもいいんじゃないか、何から何まで自分たちで作んなくてもいいんじゃないかと思って。(中略)自分たちがどんなバンドか一回調べてみるっていう意味もあったんです。その時に他人の曲でやったほうができること、できないことがわかっておもしろいかなって」
そんな共作曲の中で今回注目したいのは、初回生産限定盤の付属CD『Can’t Sleep EP』に収められている“廃墟の記憶”。作詞を後藤正文、作曲をホリエアツシ(ストレイテナー)が手掛け、ホリエはボーカルとキーボードでレコーディングにも参加している。
ホリエの澄み切ったコードワークとメロディを、今作の楽曲群の中でもとりわけ開放的な躍動感をもって体現してみせるゴッチの歌声。
自身が描いた旋律とゴッチの歌詞が渾然一体となった歌世界を、伸びやかなファルセット混じりで凛と歌い上げるホリエ――。
前述のインタビューでゴッチ自身も「僕が思う、ホリエくんが書きそうな歌詞で書いたの」と語っていたように、“戦士の屍のマーチ”をはじめインディーズ時代のストレイテナーの楽曲に通底していた「荒れ果て誰もが見捨てた街と、その中をひとり彷徨う戦士」のイメージが、《若者たちが掴み損ねた理想や/君の名前の墓標や/足の途絶えた参列者》といったリリックからも鮮烈に浮かび上がってくるし、長年シーンでともに切磋琢磨してきた盟友同士だからこその信頼感が窺える。
そして何より、そんな歌詞が他でもない「アジカンの曲」として響いてくるのは取りも直さず、ホリエ自身もまたゴッチとアジカンへの「今」へのリスペクトをこの楽曲とメロディに託しているからに他ならない――そう思わせるだけの豊かな共鳴感が、この楽曲には確かに備わっている。
「自分の表現」の殻に閉じこもることなく、大きく扉を開け放った風通しの良いクリエイティビティの先に、どこまでもクリアな「アジカンらしさ」が立ち昇ってくる。“廃墟の記憶”はそんなマジカルな1曲だ。他のコラボ楽曲についてはまた稿を改めて詳述したい。(高橋智樹)