「今日はほんとに来てくれてありがとうございました! そして、もうひとつ……このバンド名に、ありがとうと言わしてください!」と、舞台後方のヴィジョンに浮かび上がった[Champagne]のロゴを見つめる川上洋平の言葉に、1万人超の観客でステージ袖いっぱいまで埋め尽くされた日本武道館から熱い拍手と寂寞感が湧き起こる……4thアルバム『Me No Do Karate.』を引っ提げて、昨年9月13日の千葉LOOK公演を皮切りに、日本全国のみならず台湾公演まで含め行われてきた、[Champagne]の一大ツアー『We Don't Learn Anything Tour 2013-2014』。その終盤の山場であり、川上洋平/白井眞輝/磯部寛之/庄村聡泰の4人にとっての大きな晴れ舞台である、初の日本武道館ワンマンーーであると同時に、この公演は彼らにとって「[Champagne]として最後のライブ」だった。
とは言っても、ご存知の通りこれは「解散ライブ」などではなく、バンド名の「Champagne」がフランス・シャンパーニュ地方の原産地名称として日本国内でも保護されていることから、バンド名の変更を余儀なくされた(詳細はこちらをご参照のこと→http://ro69.jp/news/detail/99410)ため、結果的にこの日が「改名前ラスト・ライブ」となったのである。が、「ウェルカム・トゥ・武道館! 俺たちが[Champagne]だ! 最高の夜にしようぜ!」という川上のコールとともに武道館狭しとどでかいロックンロールが炸裂したこの一夜は紛れもなく、彼らの「その先」への闘志と可能性を観る者すべての心と身体に叩き込んでみせる、充実のステージだった。
「開演中のスリ・置き引き・痴漢・空手は禁止となっております。特に空手は禁止となっております! ここは『武道の殿堂:日本武道館』ですが、本日は『ロックの殿堂:日本武道館』としてお楽しみください!」という陰アナの時点で限界まで高まっていた客席のテンションは、客電が消え、意気揚々と舞台に現れた4人が1曲目の“Rise”を爆音で撃ち放った瞬間にあっさりとレッドゾーンへと振り切れ、「武道館!」とハンドマイクで呼びかける川上の熱唱に応えて満場のシンガロングが巻き起こり、“Burger Queen”で会場激震! “Stimulator”“Ho!” “Wanna Get Out”など、アルバム『Me No Do Karate.』をほぼ全曲盛り込み、ソリッドでダイナミックなロックンロールの威力で武道館をがっつり揺らしてみせたこの日のアクト。サポート・ピアニストを加えて放ったアグレッシブな“Waitress, Waitress!”がひときわグラマラスに響き渡ったり、“Travel”ではピアノのみならずヴァイオリニストを迎えて雄大な音風景を描き出してみせたりーーといったサウンド面でのプラスαの要素までも、その音の肉体にしなやかに取り込んでみせるサウンドのスケール感。そのバンド・アンサンブルの芯を成す楽曲そのものの図太さと強靭さ。そして何より、打ち込みシーケンスも含めてすべてをロックンロールというスタイルーーいや信念のもとに全身全霊傾けて極限爆発させ、途方もないエネルギーを放射してみせる4人の意志が、この日のライブを最高のものにしていた。
「どうすか、ヒロさん? 眺めは?」と呼びかける川上に、「いやあ、まだまだちっちゃいな!」と挑発的に返す磯部。武道館が大歓声に包まれる。
磯部 「もちろん、武道館は歴史のあるハコだし、ここに立てて光栄です! でも、とりあえず今日は、この光栄さと、『ちくしょう! もっとできんのに』っていう気持ちを、俺らは……ここにいる1万1千人弱と、スペースシャワーTVの生放送を観てる人を合わせたらどれぐらいになるかわかんないけどーー」
川上 「まあ、1億人ぐらい観てんじゃない?」
磯部 「(笑)。遠慮なくぶつけさしてもらうんで。かかってきてください!」
といったやりとりのひとつひとつが、オーディエンスの情熱を刻一刻と熱くたぎらせていく。「武道館で最初に観たのはボーイズIIメン」と明かす川上が、「その後ノエル・ギャラガーを観て、アジカンを観て、ストレイテナーを観たんですけど。やっと、先輩たちに続いて、ここに立つことができました!」という言葉とともに万感の想いをこめて歌い上げたのは“涙がこぼれそう”。ハード&ヘヴィな珠玉のバラードが、広大な空間をびりびりと震わせながら広がっていく。さらに、川上&白井の鋭利なギターが冴え渡った“Cat2”で生まれた怒濤の熱量を、そのまま磯部&サトヤスのビートが激しくうねる“Kick&Spin”の高揚感と狂騒感へと直結させて、2階席までびっしり埋まった武道館をライブハウスさながらの躍動感で満たしてみせる。そんな熱演の一方で、ライブ後半には「ここで初の試みをやっていいでしょうか?」という川上の呼びかけとともに、2010年1月にデビューして以来MCをしたことがないというギタリスト・白井の初MCへ。13年前、川上とともに高校でオアシスのコピーバンドを組んで、全校生徒500人以上の前でライブをやったこと。「いつかこんな大勢の前でやりたい」と音楽の道に進んで、今日この舞台に立っていること……彼の想いが堰を切ったようにあふれていく。「僕は運命というものを信じてるんですけど。僕らがこの4
人で揃ったのも運命だし、ここにみんなが来てるのも運命だと思うんですよ。この後、名前が変わったりとかして、いろいろあるんですけど(笑)。俺たちは変わらないです!」。そんな言葉に、客席が拍手喝采で包まれていく。
終盤は最新シングル曲“Run Away”“Oblivion”連射から“Starrrrrrr”へ雪崩れ込んで轟々たるシンガロングを沸き上がらせ、圧巻の狂騒天国を生み出していく4人。そんな濃密な祝祭感に満ちた会場の空気が、「次の曲が、[Champagne]としての最後の曲になります!」という川上のコールとともに、一気にセンチメンタルな色を帯びていく。「まあでも、解散じゃないから! 改名ですから。ツアーも、この後もどんどん続きますんで。みなさん、今後ともよろしくお願いします!」。場内から惜しみない拍手が送られる。ステージ背後のヴィジョンがせり上がったところに現れた8人編成のストリングス・セクションとともに、アルバム『Me No Do Karate.』のラスト・ナンバー“Plus Altra”をどこまでも力強く、美しく鳴り渡らせてーー[Champagne]のライブは終わった。
そしてアンコール。再びSEで轟く“Burger Queen”に乗って舞台に戻ってきた4人は、そのまま改めて挨拶代わりに“Burger Queen”をぶっ放す。「はじめまして!」という川上のコールとともに、ヴィジョンに浮かび上がった新たなバンド名はーー[Alexandros]! そのまま「早速、新曲やっていいですか?」と告げて披露した新曲の、エアロスミスとスラッシュ・メタルがデッドヒートを繰り広げた果てに壮大なロックの地平へと駆け出していくような、バイタリティ過積載のスリルと快楽! [Alexandros]としての幕開けを、武道館満場の驚愕と感激で飾ってみせた。そのまま“For Freedom”“Forever Young”“Don't Fuck With Yoohei Kawakami”を畳み掛け、さらにWアンコールの“Untitled”で堂々のフィナーレ!
「バンド名が変わっただけで、うちら中身はまったく何も変わってません! まあ、強いて言えば、今日また一歩成長したかなと思うんで。来月から始まるツアーで、またどっかでお会いしましょう!」と語る川上の言葉も、「We are [Alexandros], motherfucker!!!」と高らかに叫び上げて去っていく姿も、どこまでも自信に満ちていたのが頼もしかったし、嬉しかった。その進化はなおも止まることはないーーということを実感できた、至上のロックンロール・アクトだった。[Alexandros]として回る『We Don't Learn Anything Tour 2013-2014』は残すところ8公演!(高橋智樹)
セットリスト
01.Rise
02.Burger Queen
03.Stimulator
04.Waitress, Waitress!
05.Yeah Yeah Yeah
06.Ho!
07.言え
08.涙がこぼれそう
09.Travel
10.Instrumental Medley
11.Wanna Get Out
12.city
13.Cat 2
14.Kick&Spin
15.Run Away
16.Oblivion
17.Starrrrrrr
18.Plus Altra
アンコール1
19.Burger Queen
20.新曲
21.For Freedom
22.Forever Young
23.Don't Fuck With Yoohei Kawakami
アンコール2
24.Untitled