フーバスタンク @ SHIBUYA-AX

フーバスタンク @ SHIBUYA-AX - All pics by RYOTA MORIAll pics by RYOTA MORI
フーバスタンク @ SHIBUYA-AX
東京、大阪、名古屋、横浜の全公演が完全ソールドアウト。東京、大阪については追加公演も決まった。11月8日の赤坂ブリッツ(←これが追加公演)を皮切りにスタートしたフーバスタンクの来日ツアーは、昨今の厳しい洋楽事情を考えると信じられないくらいの大盛況となっている。この2012年に、いったいどれだけの洋楽の現役ロック・バンドが来日のたびにチケットを売り切ることができるというのだろう。しかもフーバスタンクは今夏のサマーソニックでも来ているし、SUMMER SONIC EXTRAで単独公演もやっている。あれから僅か3ヶ月のインターバルで再びAXをパンクさせてしまう彼らと、彼らを支えるロイヤルなファンのコミュニティにはつくづく希望を感じずにいられない。

8月にリリースされた最新作『ファイト・オア・フライト』を引っ提げての来日ツアーである。今回のツアーの大きなトピックのひとつは、これがフーバスタンクにとって実に3年ぶりのエレクトリック・セット、フルバンド・セットで回る全国ツアーだということだ。なにしろ2010年の来日はアコースティック・セットだった。『イズ・ディス・ザ・デイ?』がキャリア初の全編アコースティック・アルバムだったからだ。2011年にはパンクスプリングでの来日が予定されていたけれど、ご存じのように東日本大震災でそれもかなわなかった。2009年の『フォーネヴァー』以来となるエレクトリック・アルバムを携えてのエレクトリック・ツアー、フーバスタンクはそこでどんな現在形を見せてくれたのか。

ほぼ定刻どおりにステージに4人が登場し、1曲目からいきなりの“Just One”だ。日本のファンにとっては某CMソングとしてもおなじみのこの曲、まさにエレクトリック・セットの持ち味全開なハード・アンセムに煽られて、場内には高々と突き上げられた数千の人差し指=JUST ONEが揺れる。続く“Pieces”はスクリーモとファンクが融合したよりマッチョなナンバー、そしてフロアが真っ赤なライトに照らされ、燃え立つようなC&Rが交わされた“Out Of Control”へとシームレスで畳みかけ、一気に頂点めがけて駆け上っていく前半3曲だ。

「サンキューベリーマッチトキオ!ドウモアリガトゴザイマス!」と本日最初のダグラスのMCを挟み、“1st Of Me”で場内はちょっとしたチル・タイムに入る。ダグラスのファルセット・ヴォーカルが存分にフィーチャーされたナンバーだ。続く“This Is Gonna Hurt”は『ファイト・オア・フライト』のリード・シングルで、冒頭からハードリフが唸るグル―ヴィーなナンバー。最新のフーバスタンクのヘヴィネスには未だかつてないほどの弾力性が搭載されていることがわかる。

「新作からの曲をプレイしたよ。『ファイト・オア・フライト』はみんな聴いてくれた?」とダグラスが問うとわっと歓声があがる。「今日はほかにもたくさん新曲をやるんで楽しんでほしい。あ、でも、もちろん昔の曲もやるけどね!」と、始まったのがまさに昔の名曲“Running Away”だ。サビで大合唱が巻き起こるのがお約束のこの泣きメロの名曲、そして「ジャンプする準備はできているか?」と煽るダグラスにフロアが波打つような大ホッピングとサークルモッシュで応えた“Don’t Think I Love You”と、ここで中盤のクライマックスが訪れる。

そう、ここまでが今日の前半戦、モダン・ロックの雄としてのフーバスタンクの「基本スタイル」の最新形を披露した流れだったとしたら、“Imcomplete”以降の後半は、『ファイト・オア・フライト』からのナンバーを中心にした、フーバスタンクの「応用スタイル」を指し示すセットだったと思う。ベスト盤『ザ・グレイテスト・ヒッツ』、アコースティック盤『イズ・ディス・ザ・デイ?』と、近年のフーバスタンクはエモ、ヘヴィ・ロック、ファンク、抒情メロ……といったフーバスタンクらしさの集約と解析をしてきた。最新作『ファイト・オア・フライト』にはその成果としての新たなバラエティが生じていたと思うし、そのバラエティがこの日の後半戦にも未だかつてない意外性や深みを与えていたと思う。軽妙なリフが高らかに駆ける“Incomplete”や、“Can You Save Me?”、“Slow Down”といったアコースティック・ギター1本でも再現可能、恐らくは引き算によって生まれたのだろうシンプルな美メロが特に素晴らしかった。

もちろん随所で差し込まれる旧曲がエンジンとして頼もしい働きをしていたのも確かで、直前の“Can You Save Me?”の静謐をブッた切る大なたのような最重&最圧でプレイされた“The Letter”、ファンの手拍子と共に刻まれた鉄板の“My Turn”、そして本編ラストの“The Reason”は文字通りギターの最初の一音でイントロドン状態の大絶叫&大歓声が巻き起こり、黄金のフロアライトに照らされた汗だくのオーディエンスと共にショウはウィニングランの瞬間を迎えた。

なお、個人的に最も新鮮に感じたのはアンコールの1曲目で演奏された新曲“Magnolia”だった。3パート・コーラスにフォーキーなギターが絡まるちょっとサイケなノリで、こんな曲をフーバスタンクが作ることになるとは予想外だった。“Magnolia”が最新の彼らを描写し、オール・ラストのデビュー・シングル“Crawling In The Dark”がフーバスタンクの出発点への循環を促していくという、最高のアンコールだったと思う。(粉川しの)

Just One
Pieces
Out Of Control
1st Of Me
This Is Gonna Hurt
Running Away
Don’t Think I Love You
Incomplete
Can You Save Me?
The Letter
Fight or Flight
No Win Situation
Slow Down
My Turn
The Reason
(encore)
Magnolia
All About You
Give It Up
Crawling In The Dark
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする