黒猫チェルシー @ 恵比寿リキッドルーム

黒猫チェルシー @ 恵比寿リキッドルーム
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黒猫チェルシー @ 恵比寿リキッドルーム - All pic by OhagiAll pic by Ohagi
5月26日にソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズからメジャー移籍第一弾作品となる『猫 Pack』をリリースした黒猫チェルシー。5月末から始まった全7公演のリリースツアーもいよいよファイナル。この日の東京は真夏日を記録したこともあり、多くの黒猫マニアが詰め掛けた恵比寿リキッドルームは、開演前から汗が吹き出すほどの熱気、熱気である。ちなみに黒猫がリキッドでライブを行うのは、澤竜次がMCで話したように約2年半ぶり。渡辺大知曰く、それは2年半前、リキッド近くの歩道橋のふもとにあったマイナーなコンビニ「新鮮組」がつぶれて「ローソン」に変わってしまうほどの期間、ということだ。

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの『ラブレス』がかかっていたフロアは、開演時間の19:00を少しまわった頃に突如暗転。不穏なエレクトリック・ビートにあわせてステージがライティングされ、そして“正義感ある殺しは許される”をSEに4人がステージに登場、それぞれの定位置におさまる。おお、大知もギターを抱えている。SEにとってかわるように“正義感ある殺しは許される”でライブは幕を開け、続く“スピーカー”、“ユメミルクソブクロ”と、どこまでも攻撃的で、それでいてタフな、どす黒いロックンロールを次々とリキッドにぶちかましていく4人。澤のギターと大知のボーカルにたっぷりとリバーブがかかった “毛にからまって”と“のらりのらねこ”のサイケデリアな流れも相変わらずすばらしい。

演奏に関して言えば、時につんのめりながらどしゃめしゃなグルーヴを撒き散らしていた以前よりも、アンサンブルとしてのまとまり、一体感がいっそう強固なものになっていた。これは今日のライブで何度も感じたことだ。要所要所でハードロック・モードのギターアレンジをビシバシキメていく澤、地を這うように蛇行する宮田岳のベースライン、明らかに固いビートで主張するようになった岡本啓佑のドラムス(個人的にこれが最も驚いた)。3人が描き出すアンサンブルは、ストイックになり、無駄が省かれ、音に説得力を持つようになった。そして大知は、7曲目“ショートパンツ”の「ラララー」ではオーディエンスからシンガロングが届けられたが、「あぁ?」、「なんだって?」と余裕すら感じさせるコール&レスポンスを巻き起こしていく。

中盤には、「ああ、わが母校。青春の日々」という高校時代に制作された楽曲を披露するコーナーも。ここでは、黒猫初期の“まるで星”(現在もマイスペに上がったままでパスワードを忘れて消せないらしい)、澤のギターが威勢良くドライヴする“アースジェネレーション”、大知のトレードマーク、学ランを着る理由になった“学蘭のテーマ”、澤がボーカルをとった“日は暮れて僕ははぐれる”、リチャード・ヘルのカバー“ライアーズ・ビーウェア”と5曲を披露。これまでのアルバムで、土着的なロックンロール、パンク、あるいはブルースを鳴らしてきた彼らだが、ここにはハードロックあり、ファンクあり、と懐の深さとルーツへのスピリットを感じた一幕だった。

そして、“オーガニック大陸”、“ベリーゲリーギャング”とアッパーな新曲2曲を畳み掛け、本編ラストは“黒い奴ら”、“嘘とドイツ兵”、憂歌団“嫌んなった”のカバーの3曲。特に“嫌んなった”は、ガレージロック調にアレンジされ、澤のギターが泣き叫び、大知のがなりと色気をたっぷり含んだボーカルからは独特のカタルシスが滲み出ていた。

アンコールで再び登場した黒猫の4人は、大知仕切りのメンバー紹介で珍しく長めのMC。毛皮のマリーズ志磨遼平にかわいくておしゃれなTシャツは売れないと言われた話、渋谷の「SPACE SHOWER TV THE DINER」に岡本が考案したとされる料理があるが、実は考えたのは岡本兄で、しかも神戸の洋食屋のものを再現しただけだという話、澤と宮田が結成した別バンドが「豪華客船ポンポン丸」というひどい名前だという話と、いずれも面白いネタだったのだけど、これがまたゆるゆる、悪く言えばぐだぐだである。

しかし、ひとたび4人が音を合わせればピカピカの、生まれたてのようなロックンロールの「今」が鳴る。高々と拳が突き上げられ、バンドとオーディエンスが一体となったアンセム“ロンリーローリン”を聴いていると、ロックンロールをやるのではなく、彼ら自身がロックンロールそのものになっている、そんな感じがする。ギター、ベース、ドラム、各楽器のパートを追っていくだけで、悶えるほどのかっこよさがある。少年の青さと内面に潜む黒さを混ぜこぜにしてまっすぐに放つ大知のボーカルには不世出のカリスマ性がある。やはりこのバンドには、ロックンロール・バンドに必要なすべてがあらかじめ備わっているのである。

ダブル・アンコールは“地下室のテレビジョン中継”、そして再び“正義感ある殺しは許される”を披露し、全24曲、トータル1時間半のライブは幕となった。時空を食い破るように響く獰猛なロックンロール、この日も一向に底知れない天性の才能と熱量を目の当たりにした夜だった。(古川純基)

1.正義感ある殺しは許される
2.スピーカー
3.ユメミルクソブクロ
4.毛にからまって
5.のらりのらねこ
6.ファンキーガール
7.ショートパンツ
8.まるで星
9.アースジェネレーション
10.学蘭のテーマ
11.日は暮れて僕はぐれる
12.Liars Beware
13.オーガニック大陸
14.Eの流星
15.女にロック
16.排泄物 from 口
17.ベリーゲリーギャング
18.オンボロな紙のはさみ
19.黒い奴ら
20.嘘とドイツ兵
21.嫌んなった

<ENCORE>
22.ロンリーローリン

<ENCORE 2>
23.地下室のテレビジョン中継
24.正義感ある殺しは許される
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