After the Rain/富士急ハイランド・コニファーフォレスト

After the Rain/富士急ハイランド・コニファーフォレスト - All photo by ・小松陽祐 [ODD JOB]、堀卓朗 [ELENORE]、釘野孝宏All photo by ・小松陽祐 [ODD JOB]、堀卓朗 [ELENORE]、釘野孝宏

●セットリスト
OPENING VTR
01.絶対よい子のエトセトラ
02.四季折々に揺蕩いて
03.解読不能
04.負け犬ドライブ
05.アイフェイクミー
06.箱庭鏡
07.快晴のバスに乗る
BAND SESSION「Sparkle」
08.恋の始まる方程式
09.マリンスノーの花束を
10.曼珠沙華
11.アンチクロックワイズ
12.ハローディストピア
13.ブラッククリスマス
14.アイスリープウェル
15.彗星列車のベルが鳴る
16.世界を変えるひとつのノウハウ
(アンコール)
EN01.チョコレイトと秘密のレシピ
EN02.桜花ニ月夜ト袖シグレ
EN03.セカイシックに少年少女


8月25日、日曜日。
After the Rain2019 真夏のそらまふ大発生!!@富士急ハイランド」2日目は、予報をくつがえし晴天だった。
ライブ会場であるコニファーフォレストでは、キービジュアルと同じく遊園地を思わせるファンシーな野外ステージが開演を待っている。
8月の夕方はまだ昼と言えるほどの明るさだ。ペンライトの光の色が判別つかないくらい。

After the Rain/富士急ハイランド・コニファーフォレスト

17時、オープニングムービーが流れ始め、それとともにセンターステージで白いバルーンがふくらみだす。会場の期待そのものみたいに、どんどん大きく、丸くなっていくバルーン。スクリーン上のカウントに促され、会場の声が一つになる。
3、2、1!
バルーンがはじけ、そらるまふまふが姿を現す。
「After the Rainです!」
高らかな声とともに昼花火が打ちあがる。
青空の下、After the Rainの夏が始まった。

After the Rain/富士急ハイランド・コニファーフォレスト

1曲目は“絶対よい子のエトセトラ”。
青と黒、色違いの燕尾服風の衣装を身にまとった二人が手を振りながら歌う。小気味よくハイテンションなメロディに、会場のテンションは一気に上がる。

その後メインステージへ移動し、MCに入る……と思いきや、腕を振り上げたまま固まっているそらる。
衣装のピンが引っかかってしまったらしく、まふまふが慌てて外しにかかる。続けざまに「そらるチャック開いてる疑惑」が発生。ステージ上で「開いてる」、「開いてないよ」とひそひそ話す二人。結果的には閉まっていることが確認されたが、開始早々全開になる「そらまふワールド」に会場の空気が一気になごむ。
そう、これを観に来たのだ。ソロでも精力的に活動する彼らの、単独のライブでは観られないユニットとして立つ姿、かけ合い、音楽を。

After the Rain/富士急ハイランド・コニファーフォレスト

気を取り直して、会場のこと、天気のことに触れる。
今回はAfter the Rain初の野外ライブだ。たしかに、屋外の明るい日差しの中で見る二人の姿は新鮮だった。
晴れだけど気温はそこまで高くない心地いい気温で、「気持ちいいね」と笑う。二人がステージを走れば、日の光を受けて衣装のすそが光りながらひらめいた。

「懐かしい曲をやります」と言って始まった“負け犬ドライブ”では、そらる、まふまふともにギターを持ち、その後のそらるの単独曲“アイフェイクミー”でもまふまふがギターを担当。この光景は二人がそろっている時にしかお目にかかれない。
続いて、アルバム『イザナワレトラベラー』発売以降、After theRain名義では初のライブということで、“箱庭鏡”と“快晴のバスに乗る”が披露される。
MCではラフな姿を見せる二人が、ひとたび歌いだせばあっというまに会場を魅了していくのがたまらない。

After the Rain/富士急ハイランド・コニファーフォレスト

バンドセッションを挟んで衣装をチェンジ。“マリンスノーの花束を”でバスを模したトロッコに乗り込んで会場を周回しながら、ホースを構えて客席に向けて水を噴射。会場のあちこちから歓声が上がる。
そらるは以前配信で「お客さんに水をかけたい」と言っていたこともあって、自分の歌唱パートを忘れるほど水かけに熱中。まふまふもそらるに向けて水を噴射したりと、はしゃぐ姿が目に焼きついた。

After the Rain/富士急ハイランド・コニファーフォレスト
After the Rain/富士急ハイランド・コニファーフォレスト

ステージに戻ってからは、“曼珠沙華”、“アンチクロックワイズ”、“ハローディストピア”と、彼ららしいアップテンポでパワーのある曲がジェットコースターのように続く。“ブラッククリスマス”では、会場が一体となって季節外れの「Merry Christmas!!」を叫んだ。

再びMCに入り、まふまふが「盛り上がってますか? 遠くまで来てくれてありがとう」と会場に呼びかけ、そらるは「オレたち夏らしいこと何もしてなくて、夏のイベントはこのライブが最初で最後」と語った。
いつのまにか日が落ちていて、ほの暗い夕空のなか、ほとんど見えなかったペンライトが光を放ち始めていた。
長かったはずの夏の昼が終わり、夜に場を明け渡そうとしている。
「やっとオレたちの時間になった」とそらる。
「ペンライトがきれいになってきたね」とまふまふ。
夜にふさわしい曲を、と始まるのは“アイスリープウェル”。
《夕焼けの落ちたバス停/こんなに綺麗で目を奪う景色を/何ひとつ疑いはしない》という歌詞と現実の光景がシンクロして、まるで夢を見ているようだ。

After the Rain/富士急ハイランド・コニファーフォレスト

その後のMCでは、先日そらるが体調を崩していた話に。
ライブ中も時折咳が出ていたようで、歌いづらそうにしている場面もあった。けれどそのたびにまふまふの歌声が伸び、支えているように感じられた。

ソロ活動でも輝かしい実績のある二人だ。それぞれが十二分な魅力を持つアーティストだけれど、二人が組んで「After the Rain」として立つ時、お互いが補完し合うことで、なんというか、満たされた形になる気がする。
歌ももちろんそう。まったく声質の異なる二人なのに、まふまふの特徴的な高音にそらるの柔らかな低音が重なると、信じられないほど心地いい音が生まれる。
ライブもやっぱりそうで、それぞれの単独でのライブの時よりも、二人とも肩の力が抜けて自然体に感じられる。

After the Rain/富士急ハイランド・コニファーフォレスト

その日も、心配させたことを謝るそらるに、まふまふは「サポート代ください」と返して笑いをさそい、会場の不安も軽やかにぬぐいさった。
そして、「世界を変えたいか!」という煽りとともに、本編最後の曲“世界を変えるひとつのノウハウ”が始まる。

今回のライブのテーマソングとして発表されたこの曲は、遊園地みたいに色彩豊かでにぎやかで、時間を忘れてはしゃぐ気持ちを歌にしたような曲だ。
キャラクターのイラストがあしらわれたボールも投入され、観客の上を跳ねる。
センターステージに繰り出してきた二人も、飛んでくるボールを蹴り返したりしながら楽しそうに歌う。
《たったひとつで世界を変えてしまう/素敵なノウハウで/明日も新体験/そしたら少しだけ笑ってよ》
「少しだけ」なんてとんでもない。鳴り止まない拍手と歓声のなかで、数えきれない笑顔が咲いていた。

After the Rain/富士急ハイランド・コニファーフォレスト

アンコールでは、“チョコレイトと秘密のレシピ”で再登場。
二人ともライブグッズのセーラー服風のTシャツを身に着けている――のだが、なんとそらるがピンク、まふまふが青と、互いのデザインのTシャツを交換していた。
二人のいたずら心に、会場は再びはじけるような歓声に包まれた。

After the Rain/富士急ハイランド・コニファーフォレスト

記念撮影を挟み、いよいよ締めくくり。
10月に新曲を投稿する予定であること、今後の活動についても計画中であることを発表。
そして、まふまふの「僕らの始まりの曲をやります」という言葉から“桜花ニ月夜ト袖シグレ”が始まり、そして“セカイシックに少年少女”へ。

あたりはもうすっかり暗い。昼間は見えなかった青と白のペンライトの光が星のように広がる光景はびっくりするほど綺麗なのに、どうしようもなくこの「夏」の終幕を感じさせる。
加速する会場のボルテージに反するように、「どうか終わらないで」と叶わないことを願ってしまう。

ラストまで完走した二人は、ステージ上を回って挨拶し、最後にハイタッチして、舞台の上から去っていった。
空っぽのステージに、会場に一抹のさみしさが広がる。それを消し去るように閃光が空に伸びて、はっとして見上げるといくつもの花火が咲いた。

After the Rain/富士急ハイランド・コニファーフォレスト
After the Rain/富士急ハイランド・コニファーフォレスト

夏のイベントはこのライブが最初で最後。
その言葉の通り、遊園地に、水かけに、花火にと、夏の楽しさすべてを詰め込んだようなライブだった。
それをAfter the Rainにしかできないやり方で実現した、夢みたいな夏だった。(満島エリオ)

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