All photo by 吉澤健太
●セットリスト1. 会いにゆく
2. 夢みる二人
3. ヘアカラー
4. セカイイチ☆片想い
5. ブルーナ
6. 素直に生きたい
7. Home
8. 休みの日 (
JUN SKY WALKER(S) カバー)
9. やさしさに包まれたなら (
荒井由実 カバー)
10. うつくしい夜
11. ランジェリー
12. 夜が明ける
13. ハロー、グッドミュージック
(アンコール)
EN1. 愛だなんて呼ぶからだ
EN2. ベッド・シッティング・ルーム
シンガーソングライターの
宇宙まおが、2017年10月、12月、そしてこの2018年2月と、ソロ弾き語りで繰り広げてきたシリーズライブ「Wardrobe Songs」。毎回異なるテーマのもとセットリストを構成し、今回は「vol.3 -休日と白いシャツ-」というサブタイトルが付けられていた。見事、会場をソールドアウトさせた宇宙まおは、サブタイトルどおりに真っ白なシャツに身を包んで登場。喝采を浴びて「よろしくお願いしまーす!」と第一声を上げる。
ソロライブならではの、彼女自身の呼吸と間でアコギをストロークさせるオープニング曲は、“会いにゆく”。とめどなく溢れ出る思いを歌詞に乗せ、メロディだけで心象の広がりの中へとオーディエンスを誘い込む。今回のテーマは、白いシャツを着て出かけたくなるような前向きなメッセージであることを伝えると、小気味良いモータウンビートのギターリフで手拍子を自然発生させる“夢みる二人”を届ける。そこからノンストップで繋ぐ“ヘアカラー”は、目下の最新アルバム『ベッド・シッティング・ルーム』収録曲の中でも際立ってキャッチーに弾けるナンバーだ。音源では華やかなバンドアレンジが施されていたが、健気な女子マインドを伝える楽曲の根幹は弾き語りでも力強く響き渡っている。
フォーキーな演奏で独創的なポップの領域に触れる“セカイイチ☆片想い”までは近作曲が続き、この後にはキャリアを遡る楽曲群へ。ソロパフォーマンスの新たな試みとして、今回はループマシンを用いることを告げ、エレキギターのリフレインを重ねながら“ブルーナ”を披露する。続いて、ビートをループさせる“素直に生きたい”へと向かうのだが、ギターのチューニングがおかしいことに気づいて一旦仕切り直し。「ループマシンのおかげで間がもった」と笑いを誘い、再び手拍子の援護を受けて歌ってゆくのだった。音源リリース当時とはまたひと味違った、深みを感じさせる歌として聴こえてくる。ソロ弾き語りということもあって、寂しさや喪失感を伴う孤独な情景を歌い込んだ楽曲の数々はさらに輪郭をくっきりと浮かび上がらせているのだが、一方で温かな場所に思いを馳せる“Home”のような楽曲も豊かさを増している。
そして、過去2回にKiroroや
キリンジ、
ユニコーンなどを取り上げてきたカバー・コーナーでは、今回のサブタイトルにかけるようにJUN SKY WALKER(S)の“休みの日”を披露。2018年にデビュー30周年を迎えるジュンスカが、宇宙まおの所属レーベル=ドリーミュージックに移籍したこともあり、「おこがましいようですが、レーベルメイトということになるんですね! 言ってみたかった」と楽しそうに告げる。静謐さの中で、寂しげなグッドメロディを大切にするパフォーマンスだ。さらには、荒井由実時代のユーミンの名曲“やさしさに包まれたなら”も、伸びやかに歌い上げてみせた。
また、「Wardrobe Songs」では毎回新曲が披露されており、前回の12月に届けられた“うつくしい夜”と今回の新曲が同じ主人公をイメージできる作品になったことを説明して、まずは控えめに電飾されたステージで“うつくしい夜”をプレイ。いびつな恋の形に思い悩みながらも身を委ねる物語だ。そして新曲“ランジェリー”なのだが、これが素晴らしかった。“ヘアカラー”にも通ずる、傷心を反骨の生活力へと転化させた珠玉のポップチューン。衣服を着替えるように趣向を凝らしたシリーズライブの先で生み出された、強がりのぶんだけ愛おしいワードローブ・ソングなのである。「新曲は、そのときの気分が反映されておもしろいです。違うテーマで良かった」と彼女は告げていた。
そしてここで、今回のソールドアウトを受け、追加公演「Wardrobe Songs -スニーカーとパンプス-」の追加公演が決定したことを発表。4月15日、会場はこれまでと同じく、晴れたら空に豆まいて。新生活へと向かう人の多い春に、集大成なセットリストで臨みたい、という意気込みを告げる。そして、時の流れに一人向き合うような“夜が明ける”を経ると、心に触れる音楽が聴こえていなければならない、という切実さを宿した“ハロー、グッドミュージック”を晴れやかに歌い上げるのだった。
アンコールでは、会場、協力者やスタッフ、そしてオーディエンス(ツイッター上では白いシャツでの参加が呼びかけられており、それに応えてくれた人も)にあらためて感謝の思いを伝えながら、「やっとスタートラインに立てたなって、前向きに思えます。これからもいい歌を書きます。よろしくお願いします」と挨拶。シリーズライブのために最初に生み出された新曲“愛だなんて呼ぶからだ”を、そして「これからもずっと歌い続ける大切な曲です」と言葉を添えた“ベッド・シッティング・ルーム”を届け、彼女は今回のステージを締め括った。孤独に正面から向き合い、音楽の力でそれを人々に共有させるステージは、今回も不思議と胸を満たして深い余韻を残す、濃厚なライブ体験であった。(小池宏和)
終演後ブログ