YUKI@NHKホール

YUKI@NHKホール
「『YUKIconcert tour“Flyin’ High”’14~’15』、NHKホールへようこそ!本当は今日、ファイナルだったんだけど……でもファイナルじゃないんだけど、最高の夜にしようね!」

約3年ぶりのオリジナル・アルバム『FLY』をひっさげ、昨年10月より今回の全国ツアーはスタートした。「YUKI」のアルファベット文字が模られたオブジェを自身がハンマーで破壊するという印象的なオープニング映像から、アルバムの先行シングル曲“誰でもロンリー”でライヴはスタート、2曲目には早くも“JOY”でひとしきり盛り上がる。序盤から、この先どんな展開が待ち受けているんだろうとワクワクするセットリストだ。そんな今回のツアー、24本目となる1月22日の東京・NHKホール公演のレポートをお届けしたいのだが、最初のMCでYUKIは冒頭のようにファンに挨拶をした。そう、本当はこの日で最終日を迎えるはずだったが、途中で体調不良により延期となった仙台公演がまだ残されていた。しかしYUKIはもちろん、この日も冒頭から全力のパフォーマンスで魅了する。頭にハエの形をした飾りを付け、ピンクのコスチューム姿で「各地でみなさんのあたたかい声援を受けてここまで来ました」と感謝を告げ、「みんな、いいとこ行きたいよね? いいとこ連れてっちゃうぜ!」と煽り、続く“波乗り500マイル (feat. KAKATO)”へ。この曲ではKAKATO(環ROY&鎮座DOPENESS)がオンステージ!これまでの公演では、この曲でステージ上の大きなヴィジョンに客席が映し出され(しかし明らかに外国人しかいないのですぐにそれが既に用意されていた映像だとわかる・笑)、その中にKAKATOのふたりが混ざっていて客席からライヴに参加するように見えるという仕掛けで、それも面白いのだが、東京公演では実際にKAKATOとYUKIの3人で陽気に踊りながら歌を披露する様が何とも楽しい。

そして今回は舞台セットがミュージアムをコンセプトに作られているのだが、ステージに並ぶいくつものオブジェには開演時、まだ白い布がかけられていて、歌いながらYUKI本人がそれをひとつひとつ外して披露していく演出も見逃せない。その中のひとつ、赤いずきんがトレードマークのキャラクター「ゆきんこ」が地中に埋まっているように顔をのぞかせる大きなオブジェがあるのだが、YUKIがその上に腰掛けて歌ったり、歌いながら頭の部分からスルリと滑り降りたりする場面も実にキュート。

しかし、やっぱり凄まじいのはYUKIのヴォーカルである。愛するオーディエンスに問いかけるような熱唱が鳥肌モノだった“相思相愛”、そしてキラキラとしたしずくが零れるようなピアノのイントロだけで会場から歓声が上がる“プリズム”の流れでじっくりと聴かせた。しかし一転して軽やかなR&Bサウンドと柔らかな歌声が印象的な“君はスーパーラジカル”、そしてホーン・セクションもムーディな“It's like heaven”といった、最新アルバム『FLY』を象徴するナンバーが続く部分は、観客とYUKIが一対一でどっぷり音楽に浸るような時間になっている。心地良く体を揺らしながら、深く深く自分の内側へと入っていくような、この感覚。YUKIにとって踊ることは生きること、を体現してみせるような、そんな滋味があってディープなダンス・ミュージック。かと思えば、オーディエンスと大合唱するゴスペル調ナンバー“ティンカーベル”で一気に光溢れるオープンな空間へと様変わりしたりして、アルバム『FLY』の真髄を味わわせてもらいつつも、間にライヴでの人気曲を惜しみなく挟んでくる構成が何とも贅沢だ。

ちなみに今回のツアー、バンドのメンバーは沖山優司(B)、白根賢一(D)、浜口高知(G) 、伊藤隆博(Key)、大嶋吾郎(Cho) 、鈴木精華(Cho)といった新たな顔ぶれで、タイトかつスタイリッシュなアンサンブルを生み出す。そこに中野勇介(Tp)、五十嵐 誠(Tb)、鈴木 圭(Sax)による3人のホーン隊が加わると、時にファンキーでグルーヴィな『FLY』サウンドが完成する。

YUKI@NHKホール
シンデレラやピーターパンや白雪姫といった色んな物語のキャストたちが一度に登場するような不思議な映像が流れ、その間に衣装チェンジをしたYUKIが“スリーエンジェルス”を歌いながらステージに再び登場してから本編最後まで、ライヴは一気に駆け抜ける。“ワンダーライン”や“ランデヴー”で熱く盛り上がりながらも、“わたしの願い事”や“ポートレイト”、“STARMANN”といったアルバム『FLY』の中でもドラマチックでシリアスなナンバーで、更にYUKIと音楽の中で共に踊るような感覚は深まっていく。明るくポップな“坂道のメロディ”を歌い終わった終盤、YUKIが晴れやかな表情で両手を上げると“カ・リ・ス・マ in the dark”が始まった。ゆるやかなレゲエのビートに乗ってひとつひとつの言葉を丁寧に歌っていくYUKI。やがてキラキラとした細やかな紙吹雪がステージに降り注ぎ、YUKIを中心にオブジェがたくさん並ぶステージ全体がまるでスノードームのように綺麗だった。「どうもありがとうございました」とお辞儀するYUKIを、キラキラ紙吹雪に負けない大きな拍手が包み込んだ。

そして本編ラスト。YUKIがステージ上の時計の振り子を動かすと、カチカチカチと音が鳴り、それを合図にアルバム『FLY』のラストチューン“fly”が始まる。「今日は素敵な時間を過ごすことができて、とても嬉しかったです。私たち、まだまだ飛べるよね?」とYUKIは問いかける。鍵盤の音色と時が刻まれる音に乗って、《泣いてたあの子はもういない》《泣いてた私はもういない》という歌のフレーズが切なく、でも力強く羽ばたいていく。ダンス・ミュージックの中で踊りながら自らと対話して、新たな世界へと旅立つようなアルバム『FLY』に込められた想いは、このツアーを通じてしっかりと観客に届けられた。

YUKI@NHKホール
会場のみんなで歌いながらYUKIを待ったアンコール。黒地に赤い装飾が施されたコスチュームに着替えて「私を呼んだー?」と登場すると、バンドのメンバー紹介へ。もうすぐ終わるこのツアーを振り返るように「そっか、思い出になっちゃうのか……でも最高をずっと更新してるじゃん! 今が最高なんだよ!」とロックな名言を叫ぶと、青いギターを抱えて掻き鳴らし始める。そのまま何故かバンドのセッションへと突入し、即興でロックンロールな歌を叫ぶYUKI。これがめちゃくちゃカッコイイのだが、終わって客席から「もう1回!」のコールが始まると、躊躇う間もなくすぐに再びセッションを繰り広げるサービス精神もさすがである。そして「なんかさ、知らない自分がいっぱい出てくるんだよ。みんなも自分の中に怪獣飼ってない? 口からウワーッと出したくなる時ってない? それが私にとってのライヴです!」と再びロック名言をサラリと口にして、オーディエンスのボルテージも更に急上昇したところで“鳴いてる怪獣”へ。オリジナルのメロディをはみ出した自由なフェイクを交えてステージでYUKIがまさに怪獣となって表現する様に、観客も負けじと体と声をいっぱいに使って返していく。このエネルギーの交流こそが、YUKIのライヴの素晴らしいところだ。約2年ぶりのツアーで、しかもスタジアムやドームといった大きな会場でのライヴが続いた後の今回のツアーということもあり、YUKIの存在をより近くに感じ取れた。

「最後の、最後の曲です!」とYUKIが叫ぶ。アルバム『FLY』をひっさげて行われた今回のツアーで新たなアンセムと化した“はみだせ ラインダンスから”。お客さんたちによるオーオーオー!の大きな歌声も加われば、YUKIもすかさず歌いながらラインダンスを披露。曲の後半、会場中にキラキラのテープが一気に降り注ぐと、両手を振り上げてジャンプする観客の姿にYUKIのピカピカの笑顔が見えた。もう最高のテンションのまま、そう、気持ちがフラインハイなまま、ライヴは終了。クルクルと回転しながらステージを去るYUKIの姿は最後まで愛らしく、最後まで屈強のポップ・スターだった。(上野三樹)

■セットリスト

01.誰でもロンリー
02.JOY
03.Jodi Wideman
04.波乗り500マイル (feat. KAKATO)
05.相思相愛
06.プリズム
07.君はスーパーラジカル
08.It's like heaven
09.ティンカーベル
10.スリーエンジェルス
11.長い夢
12.わたしの願い事
13.ポートレイト
14.ワンダーライン
15.ランデヴー
16.STARMANN
17.坂道のメロディ
18.カ・リ・ス・マ in the dark
19.fly

(encore)
20.真夜中の恋人
21.鳴いてる怪獣
22.はみだせ ラインダンスから
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