NANO-MUGEN FES.2014(2日目)@横浜アリーナ

NANO-MUGEN FES.2014(2日目)@横浜アリーナ - ASIAN KUNG-FU GENERATIONASIAN KUNG-FU GENERATION
「昨日も大盛況でしてね。ありがとうございます!」と、ASIAN KUNG-FU GENERATION・山田貴洋(B・Vo)&伊地知潔(Dr)の堂に入った前説でスタートした「NANO-MUGEN FES. 2014」2日目の模様をレポートしたい(初日の模様はこちら→http://ro69.jp/live/detail/105645)。潔が首から下げているのは、今年開業25周年を迎えている横浜アリーナのマスコット=ヨコアリくんの人形である。「Kiyoshi’s Bar GUESTReALM」、そして今年から新設された「Ken’s CAFE Sunday in Brooklyn」に触れながら「Takahiro’s なんとか、が無いんですよ」とボヤく山田に「キレてるんですか?」と潔が問いかけると、「キレてないっすよ」と朝イチのモノマネも飛び出して、いよいよ2日目開幕である。

NANO-MUGEN FES.2014(2日目)@横浜アリーナ - NICO Touches the WallsNICO Touches the Walls
SIDE STAGEにトップ・バッターとして立つのは、初出演のNICO Touches the Walls。アコースティック・セットでの出演だが、熱いカントリー・ロックのアレンジに光村龍哉(Vo・G)の男気ヴォーカルが映える“THE BUNGY”に始まり、“手をたたけ”で満場のオーディエンスを巻き込むなど、スケールの大きなプレイでアリーナを焚き付けてくれていた。「超かっこいい先輩の背中を追いかけて行きたいと思います!」と「NANO-MUGEN FES.」初出演を喜びながら、光村は新曲“天地ガエシ”をアジカン・後藤正文(Vo・G)からツイッター上で褒められた(スタッフがこぞってリツイートしたらしい)ことも語り、その曲のパフォーマンスに向かう。むしろこのためのアコースティック・セットなんじゃないかと思うほど、生々しい躍動感を一層強く伝える迫力の名演であった。

NANO-MUGEN FES.2014(2日目)@横浜アリーナ - 東京スカパラダイスオーケストラ東京スカパラダイスオーケストラ
続いてMAIN STAGEに立ったのは、黒スーツの東京スカパラダイスオーケストラだ。“Mission Impossible Theme”~“ルパン三世’78”、“ペドラーズ2014”と、何をやってもスカパラになってしまうカヴァーの連打でカチ上げ、谷中敦 (Baritone Sax)が「心の中には、音楽でしか表せない部分が必ずあると思う。今日は音楽のシャワーをたっぷり浴びてくれよ! 戦うように楽しんでくれよー!」と決め文句を放つ。さすがに世界中の音楽フェスを戦い抜いて来たスカパラ、という横綱相撲ではあったのだが、山田&伊地知の前説でも触れられていたように、終盤にはアジカンとのバンド・コラボ曲“Wake Up! feat. ASIAN KUNG-FU GENERATION”がライヴ初お披露目である。スカパラと同じく黒スーツで登場したアジカンの4人。谷中は「ゴッチと歌詞を共作したんだけど、レスポンスが迅速・丁寧で。俺がWake Upしちゃったよ」とご機嫌に語りつつ、華々しい大所帯サウンドがゴッチの歌を後押しするパフォーマンスへと向かった。音の感触そのものが新鮮な視界を伝え、明らかに可能性が広がるコラボだ。続いてアジカンの“遥か彼方”も合同セッションでプレイされ、他者を生かせて自身も活きる、そんなスカパラの姿勢が垣間みられるようなステージを繰り広げるのだった。

この後には2日間出演となる海外アクトが続き、まずはドイツ×スウェーデンの男女ユニット=It’s A Musicalだ。演奏曲は前日とほとんど変わらないが、2日目で慣れのアドヴァンテージがあったか、ハーモニーもサウンドも一層伸び伸びとして、オーディエンスのレスポンスも実に親密なムード。最終ナンバー“Fish Song”の遊泳サイケデリアで触れる者を酔わせると、エラ&ロバートは肩を組んで挨拶し、投げキスをしながら嬉しそうにステージを後にした。アジカン・喜多建介(G・Vo)と後藤正文が登場し、ゴッチが喜多とオーディエンスに「ヨコ!」「ハマ!」「たそ!」「がれ!」のコール&レスポンスを促しつつ紹介したカナダ人双子姉妹デュオ=ティーガン・アンド・サラも、オーディエンスに感謝の言葉を連発しながら(特にティーガン)ツインのアコギで披露するレトロなガールズ・ポップ風メロディの“Back In Your Head”、そしてシンセ・サウンドのレイヤーがなびく力強いビート・ポップまで、華やかにしてエモーショナルなステージを繰り広げてくれた。

NANO-MUGEN FES.2014(2日目)@横浜アリーナ - the chef cooks methe chef cooks me
メンバー全員がモノトーン・ストライプ模様の衣装で揃えたthe chef cooks meは、万華鏡のようにコロコロと表情を変えるオーガニックなバンド・サウンドに生き難さの思いを滲ませ、下村亮介(Vo・Key・Programming・etc)が全身で楽曲を乗りこなすように動き回りながら歌う。彼が「たくさんの素敵な音楽に出会わせてくれるフェスだと思うんですよね」と語って“四季に歌えば”のハーモニー・ワークに身を委ねると、「音楽好きがこんなにめちゃくちゃ集まって、もう何でも出来るんじゃないか、って曲です」と告げて“song of sick”に向かう。しゃがみ込んだ姿勢からサウンドの爆発に合わせて一気に跳ね上がるパフォーマンスでオーディエンスを巻き込み、最後に狂騒の一幕を生み出した渾身のステージであった。
NANO-MUGEN FES.2014(2日目)@横浜アリーナ - ユニコーンユニコーン
そして“KEEP ON ROCK’N ROLL”で豪快に幕を開けたユニコーンは、EBI(B)がフレディ・マーキュリー・スタイルのマイク捌きで歌っては巨大フラフープを回し、奥田民生(Vo・G)は「ツアーが終わったところで、まだ元気です! まだ曲覚えてます!」と笑わせてくれる。ABEDON(Key)が前線で“WAO!”にアジカンへの感謝の言葉も織り交ぜながらスタンド・マイクを寝かせては起こすという余裕の足技も披露、その間に手島いさむ(G)の馬鹿テクギターも冴えまくる。メンバー5人があちらこちらから手を出してくるような全7曲のうち、解散前の曲は“服部”のみであった。それでもめちゃくちゃカッコいいロックを鳴らして笑わせるなんて、所謂「復活バンド」の佇まいとは掛け離れている。やはりユニコーンは、特別なバンドなのだ。

さて、マット・シャープ(Vo)による「ヨーコーハーマー!!」の煽りでスタートしたザ・レンタルズは、この日も重厚なパワー・ポップの数々をスペシャルなメンバー編成で繰り出し、マットは相変わらずメンバーたちに纏わり付いたり、カメラに接近してアップの表情を見せたりしている。マットとハンター・バーガン(B/AFI)はかつてそれぞれティーガン・アンド・サラの作品に携わっており、その辺りの繋がりも面白い今回のラインナップではあるのだが、何よりゴッチのレーベル、only in dreamsから8月にリリースされるザ・レンタルズ新作『Lost in Alphaville』(会場のみで先行販売も行われていた。プロデューサーがデイヴ・サーディというのも泣ける)のトピックが大きい。シンセの使い方は今風だが紛れもなくレンタルズな“Thought of Sound”や“Stardust”が披露され、この日のティム・ウィーラー(G・Vo)が歌うのはアッシュ“Kung Fu”だ。最高である。一方、ELECTRIC STAGEに登場した「NANO-MUGEN FES.」お馴染みのTHE YOUNG PUNXは、連日連夜のタイトなショウ・スケジュールにも関わらず見事なアゲっぷりのダンス性を発揮。スペシャル・ゲストとしてパフォーマンスを支えていた女子ヴォーカル・デュオのRedNPinkに注目すると、華やかなダブステップの“Supersonic”やドラマティックなグライムの歌モノ“READY FOR THE FIGHT”をパワフルな声量で歌いこなしていてなかなか見事だった。そしてこの日も、SOIL&”PIMP”SESSIONSのタブゾンビ(Trumpet)&元晴(Sax)が掩護射撃し、アリーナをまんまとダンス・フロアと化してしまうパフォーマンスである。

NANO-MUGEN FES.2014(2日目)@横浜アリーナ - the HIATUSthe HIATUS
サウンド・チェックにいきなり“Horse Riding”を丸々披露してしまったthe HIATUSだが、本編はさらにびっくりした。筆者は5月から行われているツアーをまだ観ていなかったのだが、ライヴで披露される新作曲群がとんでもないことになっている。飽くなき先鋭性と魅惑のポップを、針の穴を通すような精度で同時に撃ち抜く凄まじい演奏とアレンジなのである。ロック・リスナーを甘やかさず、しかし離さない。そんな歌心に満ちる“Something Ever After”を披露すると、細美武士(Vo・G)は「『NANO-MUGEN FES.』の1回目のこと良く覚えてるんだけどさ、すげえ大変そうだったんだよ。新しい事を思いついて一回だけやって止めるのはバカでも出来るけど、続けてるのは本当にすげえなと思ってさ。『The Future Times』もやって、ツイッターでお前らとケンカしてさあ(笑)。あいつらだって本当は、家でゆっくりしたいと思うんだよ。テレビ観て、おいしいもん食べて。なんで大変なことばっか選んでやってるのかっつったら、やっぱり、お前らのためにやってるんだよ。いいバンド見つけたね。一生付いていった方がいいんじゃないの?」と語って大喝采を巻き起こし、あとはもうひたすら熱くなればいいだけ、とばかりに“Storm Racers”や“紺碧の夜に”といった鉄壁のロック・ナンバーを叩き付けるのであった。

ここで、この日の「Kiyoshi’s Bar GUESTReALM」の模様も駆け足でレポートしたいのだが、こちらに出演した3組にはすべて伊地知潔がパーカッションで参加。磯部正文(HUSKING BEE)は“摩訶不思議テーゼ”の弾き語りを長渕剛のモノマネで歌って沸かせ、続いて鎌倉発の小川コータ&とまそんはオーガニックかつボヘミアンなブルース/フォークを披露。日本生まれ、5歳から大学卒業までをニュージーランドで過ごしたというKat McDowellは、その弾むような歌声で最前線に陣取ったチビっ子たちも楽しませる。一方、新設エリアの「Ken’s CAFE Sunday in Brooklyn」では、片平里菜が「休めると思って来たな!」とオーディエンスを追及しながら“Hey boy!”で楽しげなコール&レスポンスを巻き起こし、Gotchバンドにも参加していたYeYeは「建さんが、事務所の上にカフェをオープンするのかと思って、『NANO-MUGEN FES.』と同じ日にオープン記念パーティやるんやと思ってた」と、どこまで本気なんだか知れない話題で笑わせながら夢見心地のポップ・ソングを届ける。そして木下理樹(ART-SCHOOL)は、伊東真一(HINTO)を招き入れると、2本のギターの交錯が余りに鮮やかで美しいKilling Boyの“Perfect Lovers”を歌うのだった。

NANO-MUGEN FES.2014(2日目)@横浜アリーナ - OWL CITYOWL CITY
MAIN STAGEでは、喜多&山田のコンビMCにゴッチも登場し、恒例行事の四股を踏んで、景気よくトリ前アクト=アウル・シティーの呼び込みへ。「コニチハー、ヨコハマー!」の第一声を放ったアダム・ヤング(Vo)が歌い出すのは、前日のステージでは披露されなかった“Dreams And Disasters”だ。2日間のオーディエンスの好反応に笑顔と感慨の言葉を溢れさせながら、ときにダンサブルに、ときに情感たっぷりに描き出されるバンド編成シンセ・ポップの中で歌い上げてゆく。オーディエンスに歌メロを預ける“Fireflies”では、ブレイク部分でクイッとどや顔を覗かせ、終盤にかけてはロマンチックな“Beautiful Times”を語りかけるように聴かせると、この日も“Good Time”でアリーナ一面を跳ね上がらせるクライマックスへ。邦楽バンド主催のフェスで、まるでワンマン公演のような歓迎ぶりを受ける姿には目頭が熱くなった。

NANO-MUGEN FES.2014(2日目)@横浜アリーナ - ASIAN KUNG-FU GENERATIONASIAN KUNG-FU GENERATION
NANO-MUGEN FES.2014(2日目)@横浜アリーナ - ASIAN KUNG-FU GENERATIONASIAN KUNG-FU GENERATION
さあ、いよいよ大トリのASIAN KUNG-FU GENERATIONである。もう思い残すことは何もない、とばかりに“センスレス”からの爆発力に満ちたスタート・ダッシュを決め、OIコールやシンガロングを巻きながら“Re:Re:”“アンダースタンド”と畳み掛ける。「続けていく、っていうことの難しさは確かにあって。バンドでもね。本当のことを言うと、『マジックディスク』のツアーのときに大喧嘩をしたんだ。それからあの……2011年3月11日にスタジオに入るまで、1年以上、ほとんど話すことも無くて」「今、俺たちがやれることってやっぱり音楽なんじゃないか、って言って。まあ潔はゴネたんだけど(笑)。音楽をやれる気分じゃないって言って、その気持ちも分かるんだ。でも、そっからは凄かったよ。本当に喧嘩してたのかっていうチームワークで、曲がポコポコ出来て。最近もまた4人でスタジオ入ってるんだけど、なんだろう、今年は特に、ただいまって感じです」「八方塞がりで、たとえ負け犬でもね、でっかい声で吠え続けていきますよ。“ライカ”!」。序盤からの勢いに、ゴッチのMCがまるで燃料のように注がれ、そこから喜多のリクエストだったという“長谷サンズ”にかけてバンドもオーディエンスも凄まじい燃え上がり方を見せていった。

NANO-MUGEN FES.2014(2日目)@横浜アリーナ - ASIAN KUNG-FU GENERATIONASIAN KUNG-FU GENERATION
「変な奴って思われることもあるかも知れないけど、それを見つけてくれる人がいて、何だろうって思ってくれる人がいて、それでいろんなことが少しずつ、変わっていくんだと思うんだ。売れてない頃に俺たちを見つけてくれた人には勿論ありがとうだけど、昨日ふと思い立って来てくれた人にも、ありがとうって言いたいです」。そんなゴッチのMCを受けて、まるで古参新参を問わない新たなアンセムとして輝きを放つ“スタンダード”。そしてメドレーのように繰り出される“フラッシュバック”→“リライト”→“ループ&ループ”→盛大な合いの手が加わる“君という花”という必殺ナンバーの連打である。ゴッチはここで、「曲が連れて行ってくれた」と初めて韓国の大型フェス出演し歓迎されたときの経験を振り返り、「本当に鮮やかに海を越えて国境を越えて。音楽には力があるし、もちろん万能ではないんだけど、俺たちは信じてます」と言葉を残し、本編ラストを“転がる岩、君に朝が降る”で飾るのだった。

NANO-MUGEN FES.2014(2日目)@横浜アリーナ - ASIAN KUNG-FU GENERATIONASIAN KUNG-FU GENERATION
アンコールに応えると、この日も「ベスト・フレンド」と呼ぶマット・シャープとティム・ウィーラーを連れ立って再登場したアジカン。「2011年にウィーザーが来てくれたとき、そこでマットと2人で一緒に観てたんだ。そのときの思い出の曲をやります」と6人でプレイされたのは、ウィーザーによる泣きの美曲“Say It Ain’t So”カヴァーである。そしてアジカンの4人はマット&ティムと各々ハグを交わしてステージから見送ると、今度はゲスト=スカパラ・ホーンズの4人を迎え入れ、最後の最後には華々しく“迷子犬と雨のビート”を披露する。本編が余りにもドラマティックに締め括られたものだから、この8人のパフォーマンスは今にもエンド・ロールが見えてしまいそうな大団円として目に映った。
NANO-MUGEN FES.2014(2日目)@横浜アリーナ - ASIAN KUNG-FU GENERATIONASIAN KUNG-FU GENERATION
「続ける」ことの困難さと、それがもたらす人々の太く頑強な結びつきを再確認したこの2日目は、だからこそ、またいつの日かの「NANO-MUGEN FES.」開催を期待させて止まなかった。(小池宏和)
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