──野田さんはクリエイターとしての藤井監督をどう見ていましたか?野田 正直、『100万円〜』までは存じ上げなくて。オファーいただいた時に過去の作品も観たんですけど、出演自体は、これまでの作品がどうというより、会って決めました。めちゃくちゃギラギラしてたんですよ。ケモノ臭がしたというか(笑)。出るって決めたあとも、脚本を一緒にブラッシュアップしたいっていうことで、撮影の3、4ヵ月前からNetflixに集まって、話をして。その時も、脚本家の人とかにずけずけダメ出ししていて、すごい熱量だなって思いました。ビジョンが明確だし。このギラついた人がこの内容のドラマを撮るんだっていうのが、面白かったですね。でも俺、あれが初めてのドラマだったので、全話を同じ監督が撮るわけじゃないってことを撮影が始まってから知ったんですよ。騙された気持ちでした(笑)。藤井くんは3、4話しか撮らなかったよね?藤井 野田さん、違います。『100万円〜』は12話中8話も撮りました。僕が人生で一番撮ったドラマです。野田 ほんと!? 俺が言ったからかな。予定では違いましたよね。藤井 そうです。野田さんに「もっと撮って」って言っていただいて、8話撮ることになったんです。野田 そうか(笑)。でもおかげでその時、お互いの性格をわかり合った感じはありましたね。──その後、『余命10年』『パレード』では、音楽家と映画監督としてタッグを組みました。あの2作を観て、改めてふたりの表現は似ているなって思ったんです。命に対するアプローチのストレートさ、正面から向き合う姿。そういう共鳴は、一緒に作りながら感じていましたか?藤井 命に対してだけじゃなく、ものづくりへの妥協がないのは似ているかもしれないです。狙って余白を作ることもあるけれど、「とりあえずこういうものを作ったので、フィードバックください」とかがないんですよ。野田さんは最初から完パケが上がってくるんですよね。なぜこんなにビジョンが見えているんだろうっていつも思うけど、それはたぶん、想像力なんじゃないかなと。他者へのイマジネーションというか。野田さんは「パッケージとしてこうしておいたほうがいいでしょ」っていう選択肢が全然ないんです。自分も、『ぽいもの』を作らないというのは大事にしているところで。たとえば誰かが『余命もの』って言い方をしたとしても、そこに生きている人がいた以上、その人たちから逃げない。そういう誠実さは、音楽からも伝わってくると思いますね。野田さんは俳優でもあるので、お芝居を最優先にした上で感情に寄り添うという点でも、一番だなって思います。──野田さんはいかがですか?野田 『余命10年』で初めて藤井くんの作品の劇伴をやりましたけど、ああいった題材って難しいと思っていて。信じ切っていないとできないし、迷いがちょっとでもあると観る人には伝わらないものになる。でも、ラッシュを観させてもらって、原作者の小坂(流加)さんの話がちゃんと生きてるなと思ったし、俳優からも演出からも、やり切る覚悟を感じたんです。映像に音楽を当てていて、あんなに泣きそうになることはなかったです。なんかもう、自分の本当をさらけ出す以外ないっていうか。だからこそ、音楽がいらないなって思うところには「いらないんじゃないですか」とも言いました。そこはなんのエゴもないし、映画がいいものになることがすべてなので。あの映画って不思議で、僕だけが知ってることですけど、音楽なくても成立するんですよ。それぐらい映画として完成されていた。音楽がなくても100になっていたからこそ、自分はさらに100増やしていくぐらいの気持ちでしたね。ドキュメントではなくエンターテインメントではあるべきなので、自分なりの道筋を作ったり、感情を動かすためのちょっとしたきっかけを作った感じです。藤井 『余命10年』も『パレード』もそうだったんですけど、衣装合わせの前の段階で、野田さんが脚本を読んだ上でのモチーフの音楽を作ってくれたんですよ。それをお守りにしてみんなが旅に出られるというか、その音楽を頼りに撮影をすることができて。そういう意味でも、たくさん助けていただいていますね。野田 『余命10年』で味をしめて、その後の作品でも『撮影前に何曲かください』って言ってくるんですよ(笑)。それは僕としても嬉しくて。実写映画の制作時に共通認識として流れてる音があるって、なかなかないことだと思うんです。みんなが同じ空気や匂いを知ってる上で作っていく。それが映画作りのヒントになるなら嬉しいし、そこから地続きで劇伴を作っていくのも、クリエイティブとして美しい流れだなと。命に対してだけじゃなく、ものづくりへの妥協がないのは似ているかもしれない(野田)
──監督は、映画が終わったあとに“夕星-ゆうづつ-”を聴く体験をして、どんな感覚になりましたか?藤井 本当に嬉しいです。映画を観てくださった人、関わってくださった人を最高の形でお見送りすることができるなって。あとは、これから“夕星-ゆうづつ-”のMVを撮るので、どうしよう、プレッシャーだぜ、みたいな(笑)。嬉しい悩みです。映画館を出る人たちにバトンを渡すことを考えた時に、伸びやかだなと思ったんですよね。
映画を観たあとに“夕星-ゆうづつ-”を聴いたら、映画が観客のものになる自信があった(藤井)
──映画の登場人物たちは、いろいろと間違え続けるじゃないですか。でも最終的に、こんなきれいな物語になる。それを夕星-ゆうづつ- が見事に、シンプルに描き切っていて。この曲しかないって思いましたね。野田 よかったです、そういう感想をいただけて。でも、主題歌ってそうなんですよね。映画を観ての感想文でもないし、要約でもないんです。その先にあるものが主題歌なんだなって教えてもらった感じがしました。──監督はこれを作り終えて、30代を美しく締められましたか?藤井 まあ、そうですね。まだ結果とかね、いろいろありますけど。野田 そうか、あの誕生日祝いから。藤井 1年ですよ。野田 あのあたりですよね、この映画のオファーもらったの。藤井 そうです。野田 筆舌のMVのオファーをしたのもその頃で。藤井くんの誕生日に、MVの中身も決めていきました。──へえ! すごく濃い1年。藤井 はい(笑)。野田 ありがとうございました。