──雄大さん的に、売れ線とは別の、自分のこだわりポイントはどういうところだったんですか?雄大 変な音を入れるのが好きで。たぶん、誰も気づかないんですけど……たとえば、アニメに「神の使い」とされるキャラクターが出てくるんですけど、彼らはどういうふうに来るだろうと想像したときに、ドコドコ来るなと思ったんです。だから足音とかを入れたいけど、そのまま足音じゃ面白くないし、いいサンプルも見つからなくて。うちにあったボードゲームの箱を抱えてマイクで叩いたのを録って、それを足音みたいな音に加工して入れ込みました。他にも、刀の音のサンプルをリバースさせてシンバルみたいな音にしてみたり、そういう誰にも伝わらない自己満みたいなポイントが無限にあって、特に大好きです。──そういう、ちょっとした変な音が、聴き手の耳に引っかかったり記憶に残ったりする要素になるというのが、ポップスの不思議であり面白さですよね。雄大 そうなってくれたらいいなって思いますね。──歌詞に関しても、台本を読み尽くして書いたものなんだろうなと思うんですけど、作品からどういうことを汲み取って、何を表現したいと考えたのでしょう。雄大 テンション的には、僕がサムライトルーパーの立場で実況しているようなイメージで書きました。最初に、僕がトルーパーの立場だったら、というテーマで書こうと思って。というのも、トルーパーの水色のキャラクター・北条武蔵が、ちょっと僕と似ているなと思ったんです。この人もきっとこういうことを思っているだろうなって。14、15歳の少年が世界を背負って悪に立ち向かうってかっこいいけど、仮に僕だったら「無理無理!」と思って。それくらいきつい立場にいるサムライトルーパーたちを書きたいと思いましたね。わりとネガティブなところから始まったので、歌い出しは《この世は腐ってる》にしました。──北条武蔵のどういうところが自分っぽいなと思ったんですか?雄大 ずっと、折れそうになるんですよ。「やめようよ」「もういいよ」って言うタイプの人。「もう僕には無理だ」みたいな。……わかるぜ、と思いながら書いていましたね。──雄大さんも、普段の生活やバンドの中で、実はそういうタイプだったりしますか?雄大 そうですね。僕は、バッと胸を張れるタイプでもないし、あんまり自信を持てるタイプでもないので。だから重なってグッと入ったんだと思います。──だからこの曲で書いていること──特に10代の子たちとか、《この世は腐ってる》や「この世は全員敵だ」みたいな心境の人っていっぱいいて、きっと心の支えになるだろうなと思うんですよね。雄大 そうなったら本当に嬉しいです。「あ、大丈夫なんだな」って思ってほしいですね。こういうことを歌う大人もいるんだよっていう。明るい歌詞ではないと思っているんですけど、僕はこういう明るくないものを見るとスカッとするというか、許されたような気持ちになるんです。たとえば、仲良い人とふたりでゲームをしていて、自分がゲームオーバーで「うわあ」ってなったあと、友達もゲームオーバーになると「はい、良かった、もう一回」みたいになる、あの感覚。なんていうか……嫌なことを一緒に体験すると、スカッとするというか。そういうふうなストレスのはけ口になってくれたらいいなとは思っていました。「大丈夫だぜ」って言うと軽いんですけど、最終的にはそういうことを伝えたい曲ですね。僕は自分のことを否定してばっかりで、そういう人がスカッとなればなって。「僕もいるぜ」みたいなニュアンスが伝わったら嬉しい(雄大)
──「ヒーロー」じゃなくて《インスタントヒーロー》と言っているし、《僕はこの世界を背負ってみると/そう少し、思っている》で「少し」と使っているところが、漠然としたでっかい希望をぶつけてくれるようなロックとは違うんだけど、自己否定からちょっと救ってくれる感覚がある。そういう曲だなと思います。雄大 僕は本当に、否定から入るタイプの人間というか、自分のことを自分で否定してばっかりで。そういう人がスカッとなればなって。「僕もいるぜ」みたいなニュアンスが伝わったら嬉しいですね。──今話してくれたことが、“ばけもん”に限らず、雄大さんにとってダークな側面や毒を吐くタイプの歌詞を書く原動力になっているとも言えそうですね。雄大 間違いなくなっていると思います。音楽でしか毒を吐けない人間もいるぜ、っていう感じですね。──でもこうやって話している感じ、雄大さんは自己否定がスタートになっているタイプにはあまり見えないなと思って。雄大 そうですね、よく言われます。──音楽でしか吐けないというのが、雄大さんの音楽をやる強い理由になっているのだなと感じます。雄大 本当に、その通りですね。──『ネオンテトラ』以降の歌詞について、他のメンバーから変化を感じる部分はありますか?樹 最近の曲のほうがわかりやすくなった気がする。かずき 確かにそれはある。雄大 ああ、それはあるかもしれない。やっぱり、伝えたいなと思って。わかんないことばっかり言っててもしょうがないなって。特に最近は、自分だけが納得して曲を作るのとはまた別だよなと思って作っていますね。「もっとたくさん伝えたい」って想いがちょっとずつ表れているのかなって思います。
──いろんな面から“ばけもん”について語ってもらいましたけど、他に語り足りてないこだわりポイントはありますか? そりゃ、挙げればキリがないほどあると思うんですけど。樹 ベースは、全体的に耳につきやすいところは侍っぽいかもしれない(笑)。かずき 2番の韻もいいですよね。《ダーウィンの進化論》という言葉を歌詞に使うのも雄大っぽいなと思います。雄大 アレンジは、今サポートでギターをやってくれている永田涼司とふたり体制で作っていって、やっぱりギターがめちゃくちゃかっこよくて。めっちゃ侍だし(笑)。イントロも、サビの裏で鳴っているギターやシンセも涼くんが作ってくれたりするので、そういうところも聴いてほしいです。レコーディングに対する気持ちもすごくて、尊敬していますね。「シャキーン」とか、「この変な音、何?」っていうのは大体僕が作っているので、やりたかったんだなって思ってもらえれば嬉しいです(笑)。──9月のワンマンライブは『鎧真伝サムライトルーパー』の舞台である新宿、しかも「SAMURAI」という名のライブハウスでやるという。粋な企画ですね。雄大 そうなんですよ、こんなにぴったりなライブハウスがあるかと。すごすぎる。しかも大好きなライブハウスなので超嬉しくて、めっちゃ楽しみです。タイトルの「ばけもん vs ばけもん」にある通り、「お客さんvs僕ら」みたいなイメージで、いいシナジーが生まれる日になったら嬉しいなと思います。樹 ワンマンだと普段できない曲もたくさんできると思うので、最初のEPの曲から“ばけもん”までいっぱいやって、みんなで楽しめたらなと思います。かずき 僕はとにかく楽しもうっていう気持ちです。雄大 いいね! それがいちばん大事。かずき 楽しみでしかたないです。(ライブは)「お客さんvs僕ら」みたいなイメージで、いいシナジーが生まれる日になったら嬉しいなと思います(雄大)