7ORDERからメンバー・森田美勇人の脱退が発表されたのは6月14日のこと。あれから半年。新体制初ツアー『7ORDER LIVE [ONE,] - DUAL Endroll』のリハーサル中に時間をもらって6人の胸中を聞くことができた。
7ORDERをまだ知らない読者へ紹介すると、彼らはかなり異質なグループだ。ダンス&ボーカルグループであり、バンドでもある。どちらもやるグループは確かに他にもいるが、7ORDERは違う。たとえば“Get Gold”という曲では、ミクスチャーロックの演奏から始まり、間奏では楽器を置いて華麗なフォーメーションダンスで魅せて、その後サックスソロを挟んでまた楽器を演奏し始める。彼らは自分たちで作詞作曲も行う。真田佑馬(G・Vo)が作詞作曲を手がけた、自分たちの存在意義を奮い立たせる“Who I Am”は、今春行われたツアー『7ORDER LIVE TOUR 2023 DUAL』ではセットリストの中に2回組み込まれていて、ダンスバージョンをオープニングに、バンドバージョンをクライマックスの大事なパートで披露するという異例なライブの作り方を見せた。現在は「第1章の区切り」として[ONE,]と題したプロジェクトを敢行中で、YouTubeや各SNSにさまざまなコンテンツがハイペースでアップされているので、その目で確かめてほしい。歌、楽器、バンド、ダンス、演劇などあらゆる要素を使って人間の汗臭さもバカ笑いも見せる表現者集団。それが7ORDERだ。
インタビュー=矢島由佳子 撮影=三川キミ
ブルーノ・マーズとかいろんな音楽が混ざって、スタジアム感の中でダンスとバンドをメインに熱くやる今のスタイルになっていきました(真田)
――7ORDERの個性や面白さのひとつとして、まず「ダンスミュージック」と「バンド」を両方やっている、しかもそれらを1曲の中で融合させてしまっている、という点があると思います。そもそもそれはどういった発想から生まれたのかを聞かせてもらえますか。真田「ブルーノ・マーズが日本へ来たときに、『ステージにいるみんなが同じグルーヴの取り方をしながら弾きながら歌ってるよ』ということを、僕がみんなに熱弁していたんですよ。その頃、僕らもバンドを組むか否かみたいなフェーズで。みんなダンスが得意だということは当然の基準としてあったんですけど、バンドもこういう感じでやったら面白いんじゃないかと思って。そこから、ブルーノとかいろんな音楽が混ざって、スタジアム感の中でダンスとバンドをメインに熱くやる今のスタイルになっていきました」
安井謙太郎(Vo・G)「初めてブルーノがスーパーボウル(のハーフタイムショー)に出たときの映像を見せてもらって」
真田「ドラムで出てくるやつね」
安井「踊りもやるし、『なんでも屋です』みたいな感じで出てきて、『これやばくない?』みたいな。そういうところから始まっていった気がします」
萩谷慧悟(Dr・Vo)「エンターテインメントをめっちゃ大事にしているので。誰も飽きさせないことは難しいんですけど、ライブを作るとき、僕たちは『こじらせすぎているんじゃないかな』というくらい何回も試行錯誤していて。どうやったら面白くなるかを考えた結果、そういう手段を選んだというのが根底にあるのかなと思います」
真田「エンタメがルーツにあるからこそ、枠にとらわれないことが僕らの基盤としてある気がしますね」
――1曲の中で楽器を弾いて踊ったかと思えば、たとえば“なんとかやってますわ”では演劇っぽいこともやるじゃないですか。
長妻怜央(Key・Vo)「コントもできますよ(笑)」
安井「“なんとかやってますわ”はナガツ(長妻)が作ってくれた曲がベースだったけど、7ORDERとしてはあまりチャレンジしたことないジャンルでしたね。楽曲でコミカライズされた世界観をアクティングダンスで表現したのは意外と初めてだったかも。ああいうのも合ってるなと思いました」
――そうやっていろんな要素を全部やろうとするマインドは、お客さんをエンターテインさせたいということは当然あるとして、それ以外に何があると言えますか。
真田「基盤としては『モテたい』がいちばん(笑)。男だったらあるじゃないですか、かっこよくいたいって」
――大事。バンドを始める理由としていちばんあるやつですよね。
真田「かっこよくいたいというのが基盤にはあって。あと、それぞれがいろんな音楽を聴いているので、ルーツも好きなものも違うんですよね」
諸星翔希(Sax・Vo)「みんな寛容です。表現することに対して『俺はこれしかやらない』という人がいない。『これが好きだけど、おまえのその意見もちょっと面白いかもね』ってみんな言えるから、いろんなジャンルに手を出せるし、ダンスとバンドのどっちもできちゃう。そういった寛容さをみんな持っているのかなと思います」
――「寛容」は7ORDERを表すうえで大事なワードかもしれないですね。そもそも7ORDERは「ハッピーをみんなで作り上げていく」というモットーを掲げている中で、音楽に限らず何事も、枠からはみ出して自由なことをやると最初は理解されなかったり「あいつ何やってんだ」という目で見られたりするけど、それを破った先にこそ幸せはあるんだということを表現してくれている気がして。それは「寛容」の先で表現できるメッセージなのかなと。
真田「それだ」
諸星「それですね」
安井「最近、いいフィーリングでリハが進んでいる感じがします。より寛容さがアップした気がする」
――しかもそういった自由さや寛容さをもってひとつのステージにいろんな要素を取り入れるから、7ORDERのライブは観る側の感受性、想像力をいろんな方向から刺激してくれるんですよね。
安井「いろんな表情になるのは強みだなと思います。全員ボーカルも取るし、なんとなく『この曲はこの人が核だよね』みたいなことが曲によって変わるんですけど、それでグループの色がいい意味でめっちゃ変わるんですよね。ダンスも『こういうジャンルのときはこの人が真ん中だな』とかがお互いわかってきているので、すごく面白いです」
阿部顕嵐(Vo・G)「自分たちのライブを客席で観てみたいなって、純粋に思えます。自分で『あんまり観たくないな、観てもつまらなさそうだな』と思うものを他の人たちに観たいとは思ってもらえないだろうから、自分で観たいと思うものじゃないと俺はやる意味がないと思う」
自分の中に人格が2つあるみたいな。それが『DUAL』で自分たちにフィットしてきて、融合できている感じになってますね(諸星)
――1曲の中でダンスとバンドを融合させることにおいては“Get Gold”が現在における集大成といえるくらい重要な曲になっていると思うのですが、そもそもあの曲はどういう発想から作ったものだったんですか。安井「バンドとダンスの両方をやろうってなったときから、『1曲の中で変わったら面白くね?』みたいな感じはあって。もともと世の中にある曲とかを編集してつなげて聴いてみたりしてたんです。半分で切ってくっつけて、『これやったら面白くね?』みたいなことをやってたよね」
――バンドの中に打ち込みやダンスミュージックの要素を取り入れることは当然あるけど、バンドからダンスミュージックに変わる、そしてまたバンドに戻る、という構成はリファレンスもなかなかないだろうなと思っていたら、まさに2曲くっつける発想だったんですね。
真田「『Re:ally?』くらいからダンスの曲をアレンジしてバンドでやるようになって。その理由としてはバンド曲が全然なかったからなんですけど。『Power』を出すときにカップリングをどうしようってなって、そのときが初めてシングルでダンスを全面的に打ち出すタイミングだったので、せっかくだからカップリングに入れさせてくれと言って作ったのが“Get Gold”で」
萩谷「“Get Gold”に関しては特殊なでき方かも。最初サナピー(真田)が作ったトラックがあって、みんなでスタジオに入ってフレーズを集めて、全然違うふうにできあがっていったよね」
――真田さんが作ったデモがあったうえで、みんなでセッションしながら作っていったということですか?
萩谷「そうです。歌詞を作ったときなんて、周年のファンイベントの撮影をしていて、お寺でおじさんの特殊メイクをしながらみんなでiPhoneに打ち込みながら考えてた(笑)」
安井「なんだっけ、最初のテーマ?」
阿部「サッカーの応援歌でしょ?」
真田「7人で作詞するって結構大変なんですよ。だから大体最初に俺がテーマを決めるんです。曲を作って聴かせて、トップラインを決めるときに、みんなに歌詞考えてって言うんですけど、最初にお題を出すんですよ。『今回のテーマはワールドカップで主題歌が決まりました』と。実際は決まってないんですけど」
安井「最初は『Get Goal』だったもんね(笑)」
諸星「バンドとダンスのところもそれぞれリファレンスはあって。リンキン・パークの“Faint”とか。ロックサウンドで、ヒップホップなラップじゃなくてロックなラップを乗せたいねみたいな話をしたり」
真田「オルタナなんだけどミクスチャー寄りというか。ジャンルなきミックスは僕らっぽいし。このアツさみたいなものはロックじゃないと表現できないねというところから、ああいうトラックになっていきました」
諸星「ダンスのサウンドも、グルーヴで取るんじゃなくて、音のポイントで取るアクセントダンスというか。音が動きで見えやすいのがいいよね、みたいな話だったよね」
真田「普通に聴くと間奏がめっちゃ長いんですよ。今の時代にこんなのありえないというか。ちゃんとトップラインを作って、何分以内にして、曲を売り出すというパターンをド無視できたのはカップリングだからで。それがむしろよかったなって。“Power”があったので自由に作らせてもらえる環境でしたね」
――そうやってカップリングのために作った1曲が、『DUAL』ツアーで本編最後にやるくらい、自分たちにとって大事な1曲になっている手応えはあるんじゃないですか。
諸星「どうですか?」
長妻「めっちゃあります!」
安井「初めてロックフェスに出させてもらったときに“Get Gold”をやったんですけど、間奏になってみんな楽器を置いて前へ出た瞬間、お客さんが『え?』ってザワザワしてて(笑)。他と違って印象に残るだろうからいいなって純粋に思いました。さっきの(阿部)顕嵐の話じゃないけど、自分がお客さんで観ていたら、他のアーティストがいろいろいる中でも覚えるだろうなって。『DUAL』のツアーでバンドとダンスの融合が完成した感はあったよね」
真田「『DUAL』というタイトルもそうなんですけど、『ダンス』と『バンド』というものがある種、ちゃんと自分たちにくっついた感じは手応えとしてあった気がします。」
萩谷「ライブで同じ曲を2回やることはあったとしても、違うやり方でやる人ってあんまりいないと思う」
諸星「ダンスが好きな人と、バンドやロック界隈が好きな人って、いる場所というかライフスタイルとかファッションが違うじゃないですか。僕はどっちも行くようにしているんですけど、僕たちはステージ上でどっちもやるから新しいなと思います。自分の中に人格が2つあるみたいな。それが『DUAL』で自分たちにフィットしてきて、融合できている感じになってますね」