何カニ弾カレナガラ、何カニヤラレナガラ生キテテ。ソレデモ成シ遂ゲタイモノガアルノデアレバ、ドンダケ周リガアザ笑オウガトニカク突キ進ム、ソノ意思シカナイ気ガスルンデス
――その一方で、今作には“blue soul”という曲がありますけど、『Ⅰ』の“Anonymous”にも通じる、すごくパーソナルな風景を感じさせる曲になっていて。これはどういう想いで書いたんですか?「スポーツ情報番組のテーマソングとして書かせてもらった楽曲なので、僕自身がスポーツを志している方、単純に言うと一流選手だと言われてる方々の、成し遂げたこと以上に彼らの歴史のほうにどうしても心を動かされてしまうというか。やっぱりふるいにかけられてるわけじゃないですか。スポーツをやってる人たちって、常に。そうなると、一流の選手はめちゃめちゃふるいにかけられても残ってる人たちで、それでもなおそこに立って、いまだにずっとふるいにかけられ続けているような人たちというか。僕自身もそうですけど、途中でふるい落とされた我々は、やっぱりそこにはものすごく恋焦がれるわけじゃないですか。そこに行き着くだけの大変さももちろん身に沁みてわかっているから。結果とか記録だけじゃねえよ、その人の歴史があるんだよっていう、スポーツのそっちのほうに焦点を当てたくて書いた楽曲でしたね」
――ふるいにかけられても踏ん張って第一線に立っているその姿は、まさに今、ロックバンドとして一線を張っているMAN WITH A MISSIONにも通じるものがあると思ったんですが。
「やっぱり、これはスポーツの世界だけじゃなく、否が応でも何かに弾かれながら、何かにやられながら生きてて。それでも成し遂げたいものがあるのであれば、どんだけ周りがあざ笑おうがとにかく突き進むという、その意思がいちばん大事というよりはそれしかないような気がするんです。音楽においてもそういった場面は多々見てきましたし、そこに心を動かされる何かが存在しているのは確かですね。テーマがありましたから主語はスポーツになりましたけれども、スポーツ以外でも共感できるメッセージは込めさせてもらいました」
10年後、20年後モ聴イテホシイデスケレドモ、ヤッパリ「今聴イテホシイ」トイウ作品ニ仕上ガッテクレタ
――アルバムの最後には“小さきものたち”のアコースティックバージョンが収録されています。「これはアレンジャーさんにオーケストラに入るような楽器を選んでいただきまして。子どもの歌でもありますので、ピアノの先生が伴奏してくれるような雰囲気を携えながらも、同時に世界平和を歌っている楽曲でもあるので、哲学的に突き刺さるようなシンプルさというか。自分が期待している以上のものが出来上がったので嬉しかったですね」
――この曲がアルバムの最後になって、ある種結論のように聴こえてくるっていうのはすごく意味のあることだなと。
「結果的に、この楽曲も今の戦争が起こるより前に出来上がった楽曲でしたけど、世界平和を願うとか、世界の思想の摩擦というものに憂いを感じるっていうのは古来あったことだと思いますし、いつの時代でも普遍的なものだと思うんです。それがまた改めて、この時代に出るこのアルバムの最後の曲として鳴っているっていうのが、より深いメッセージ性を持ってしまったなという感触を受けますね。いつの時代もこうあるべきだなと思いながら書いたものが、変な話ですけど、時代が勝手にそうなってしまったという。悲しいことですけども」
――このアルバムというか二部作は、そういう曲だらけですよね。本当に時代も、バンドの歴史も、ロックに対する想いも重なって、ある種集大成みたいな作品になったなっていう手応えを感じるんですが。ジャン・ケンさんとしてはここから先に向けては今どういうふうに見据えていますか?
「2枚で28曲、ずいぶんな物量の作品ですけど、不思議とやり終えてもう何も出ないみたいな感覚はあまりなくて。かといって別にアイディアが溢れ出てくるというわけでもないんですけど(笑)。それはなんでかなって思うと、たぶん、このバンドの芯がどこにあるのか、確固たるものをこの12年間ないしここ数年でまた見出せたので。これさえ見出せれば、どれだけ楽曲を書いて、どれだけ新しいことにチャレンジしても、危機感を感じることはないんだろうなと。自分たちが本当に鳴らしたい音楽というものがどこにあったのか、もしくはどこに『なった』のかっていうのを再確認できたアルバムでもあったので。このアルバムに関しては、10年後、20年後ももちろん聴いてほしいですけれども、やっぱり『今聴いてほしい』という作品に仕上がってくれたのが、いちばん大きな意味があるのかなと思いますね」