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人を悲しくさせるより、楽しくさせて、笑顔になった瞬間のほうが、私の音楽はやっぱり合ってると思う
――それから、誰に届けたいのか、誰が自分の歌を聴いてくれる人なのかっていうことにもより自覚的になっているなっていうのがあって。これまではたとえばライヴハウスで、自分の歌を聴いてくれる人、自分のファンっていう人と、あとはそれ以外の人という感覚だったのかなと。それがもっと広がったというか、自分の歌はもっと誰もが聴いてくれる可能性があるっていう、そういう気持ちになれたのかなっていう気はする。ライヴハウス以外の場所にいる、観に来てはいないけど、CDを出したら聴いてくれる、遠くにいる人だとか。
「前からそういう、遠くにいる人については考えてたんですけど、やっぱり漠然としすぎていて。でも、全然知らない、これまで出会うことのなかった人たちと出会うことによって、そこに人がいるっていうことにちゃんと気づいて。だからそういう人が身近になってるとは思いましたね」
――前は、CDを作った時に、「良い曲ができた」っていう自信はあったと思うけど、ただそれを聴いている人っていうのが、はっきりと具体的にイメージできなかった?
「そうですね。やっぱり自分のために作ってる歌だったので。だからこれを聴いてみんながどう思うかっていうのが、ちょっと現実的じゃなかったですね。あれを聴いて、『自分の歌だと思ってください』っていうのはちょっと、現実離れしてたかなっていう感じがして。私の歌がより広がっていくことが目標なんだけれども、それを聴いた人がどういうところで聴いて、共感するかってことが少しずつわかってきたので。あの時の歌は、そういう意味では力は足りてないかなっていうふうに思いました」
――それこそ”無限の力”は完全に人のために書いた曲じゃないですか。その作業を経て、変わったというか。これまでは自分の個性だとか、自分がどういう人間で、こういうことを歌いたいから歌う、だからそのためにはこういう表現をするっていう方向だったと思うんですけど、今回の2曲は、これを聴いた人を全員笑顔にするみたいな、そういう目的を持って明確に書かれた曲だなあと。
「はい、まさに。笑顔にしたくてって感じですかね」
――さっきも言ったけど、この曲に触れる人、聴いてくれる人の想定がとても広がっているわけですよね。顔も見えない人まで笑顔にしたい、そう思うのは何でですか?
「何でですかね。そこが自分の主張っていうか。あなたが好きだと言ってくれてるこの歌は、私が作りましたって言いたいっていうところですね。人を悲しくさせるより、やっぱり楽しくさせて、笑顔になった瞬間にいるほうが、私の音楽は合ってると思うので。そっちで頑張ろうと思って」
――その、自分の音楽が笑顔に合ってるっていうのはやっぱり、この1年間で明確に感じることができたと思うんですよね。どんな場所であろうと、自分が歌えば、最初は興味なさそうにしていたかもしれないけど、自分の歌を通してコミュニケーションが取れる、笑顔になってくれる、拍手をしてくれる人がいると。そういうところで感じられたのかな。
「そうですね。結構みんな興味なさそうな顔をしてるけど、実は興味を持ってくれてたりするのがおもしろいし。そういうことをライヴ会場でもそうだし、CDでもしたいっていうか。何気ないところでかかっていて聴いてくれて、思いがけないところから好きになってくれたりするのがやっぱり楽しいなっていうふうに思いますね」
――だから、「本当に自分の歌が、限定された範囲の外でも、不特定多数の人にも届くんだな」っていうことを感じられた1年だったんだろうなと思うんです。
「ああ、そうですね」
――その上で、全員を絶対に笑顔にしてやるんだ、全員に絶対自分の歌を届けるんだっていう、そういうことにおいてはすごく欲が出てきたのかなっていう感じもする。たとえば前までは、ある程度伝わらなくても仕方がないかなって、諦めてたところもあるのかもしれない。
「でも、自分の実力以上の場所に出させてもらうことってやっぱり多かったから。基本的には、自分のことをそんなにすごい好きな人ばっかりなわけないっていう気持ちで、それこそ、今やれることをやるしかない、とにかくがむしゃらにやれば伝わるんだってやってたんですけど。やっぱりそれだけじゃない方法は取れるようになってきたので。いろんな自分の持ってるスキルのカードの中から、切り出せるんだったら、切り出せるだけ切り出してやったほうがいいなっていうふうになってきました。何か『ああ、どうしたらいいんだろうなあ』で終われなくなってきてるというか。最初の頃はそれで良かったんですけど。やっぱりいろんなところでライヴしたりとか、いろんな経験を経てきて、『一生懸命やったけどよくわかんなかったなあ』じゃやっぱりダメだから。だからちゃんとやっていかないと、次にいけないなというのは感じるようになりました」
――表現者として、伝える人として成長したっていうことだと思います。2から4になった話もあったけど、それがどんどんまた新しい経験をすることで5になり、6になり、最終的には10以上にもなっていくかもしれない。じゃあ今、1番近くの目標って何でしょう?
「うーん、何ですかね。ワンマンツアーをやるってことですかね」
――じゃあ、最終目標って言われたら?
「最終目標ですか? これやったら死ねるみたいなやつですか(笑)? おばあちゃんでギター弾きながら歌ってる人になる。『おばあちゃんシンガーソングライター』ってみんなに認知されたら死ねるかな(笑)」
――(笑)とにかくずっと曲を作って音楽には関わってる、もう切り離せないものだと。
「うん、そうですね。そういうことにも気づきましたね。なんだかんだ言って続けるしかない。自分が満足する生活っていうのは、やっぱりギターを弾いて歌ってることしかないんだろうなと思いましたね、去年1年は。音楽やることのほうが夢みたいなことだと思ってたんですけど、でも逆にもう自分にとっては、ギターを弾いて歌うことが一番現実味のある人生なんだなっていうのを思って。すごい好きとかそういうこと以前に、それをやってないことが想像できないみたいに思いましたね」
――逆にそう思えたからこそ頑張れたっていうのもあるかもしれないですね。自分が表現者として生きていくためにはどうしても成長が必要だし。目の前の人に伝える、見えない人にも伝えるっていうことが必要だなっていうことを実感したのかなと。
「はい」
――今年も「まんパク」で歌うということで。また絶対そこで成長できると思うし、そこから良い曲が生まれてくると思います。私も行きますので。楽しみにしてます。
「よろしくお願いします。頑張ります!」
提供:ランデブーレコーズ
企画・制作:RO69編集部
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