打首獄門同好会 日本人のDNAを歌え!
──魚介と音楽への愛はこうして繋がった(2)
「時間がないのは重々承知だ! 悪いが寝ないでくれ!」と各関係者に血の汗を流させております(笑)
──“島国DNA”のミュージックビデオも素晴らしかったです。
「漁船の上で演奏し、それを空から撮りたかったので、ドローンを使いました。漁船に関しては知り合いのとあるミュージシャンから、『飲み仲間が料理人で、港に直接仕入れに行く人がいるよ』という話を聞きまして。その人を紹介してもらったら、親子3代漁師の一家に出会えたんです。一番若い後継者が元バンドマンなんですけど、交渉したらふたつ返事で『いいよ』と。そして、丁度知り合いに紹介してもらった料理人さんのお店が改装中で、大工さんが来ていたので、ドラムセットを漁船に設置するのもお願いして……という具合で、いろんなことが驚くほどスムーズに進みました。唯一足を引っ張ったのが、ウチのベース。直前のライブ中にダイブをした結果、落下して足を骨折。船の上で踏ん張れなくなってしまい、撮影を1日延期しました(笑)」
──漁港の森田釣竿さん(Vo / 包丁)の調理シーンもかっこいいですね。
「魚の歌をバンドで歌うとなると、その道を貫いてきた先輩にご挨拶の言葉の一言もないのはいかんと思って、まずはご連絡をしました。『この歌を聴いて頂けますか? ライブの対バンもして頂けませんか? あと、ミュージックビデオのゲストに出て頂けませんか? 魚をさばくシーンがありまして、俺のイメージが森田さんなんですよ』と、いろいろとお願いをし過ぎまして(笑)。あのミュージックビデオの画は森田さんだからこそですよ。『ナイスキャスティング!』と我ながら思いました」
──お料理や食材、本物がたくさん出てくるのもいいですね。
「『どうにか実写で用意できないか?』と相談したら、先ほどお話した料理人の方が『俺が用意するよ』と、見事に盛り付けをしてくださいました。番組で盛り付けのお仕事もされているらしいんですよ。そういう点でもナイスキャスティングでした。かなり満足のいくものになったので、みなさんにぜひ観て頂きたいです」
──お腹が空くミュージックビデオです。
「『この後、スタッフが美味しく頂きました』だったんですけど、さすがに『こんなに魚を1日で食べることはないな』というくらいに食べましたね。量がすごかったので『暇なやつはみんな呼べ! スタジオに来ないか? このままだと魚が余るんだ!』と(笑)」
──(笑)ジャケットの大漁旗のイラストも、熱いこだわりを感じます。
「デザイナーに無理を言って、何度も書き直して頂きました。『もっと波が荒々しく、こっちに迫ってる感じで!』とか(笑)。これ、気に入っちゃって、最新のTシャツとタオル、全部この絵柄です。ウチのドラム(河本あす香)が、これの旗を作ってステージに飾りたいとまで言いだしまして。ただでさえ物が多いバンドなのに、これ以上増やしてどうするのかと思ってるところなんですけど」
──細かなところまでこだわり抜いて楽しむ心意気って、打首獄門同好会の大切な核ではないでしょうか。
「ありがとうございます。みなさんになかなか気づかれない部分もいろいろやってますからね。“島国DNA”のミュージックビデオの中でいろんな魚がぼんやり出てくるシーンがあるんですが、そこだけでも素材の選択に1週間くらいかけましたから。そして映像監督が『よおし!』と、すごい動きでそれを入れてくれたんですけど、『そんなに主張しなくていい! 俺らは素材を集めるために苦労したけど、名脇役を集めるために苦労したんだ! 涙を飲んで地味に写せ! 時間がないのは重々承知だ! 悪いが寝ないでくれ!』と。各関係者に血の汗を流させております(笑)」
今の目標は……武道館?(笑)
──カップリングの“Natto Never Dies”にも、すごいこだわりを感じました。
「シングルのカップリングは、好き勝手やっていいと認識しておりますので、好き勝手やってみました。こっちは『伝わらなくていいや』くらいの気持ち(笑)。高校生の時以来の速弾きの練習をして作りました」
──納豆が食べられる人と食べられない人、ふたつの人類を作ったという神のいたずらをドラマチックに描いていますね。
「納豆ばかりは、共感を100%得られるわけではないですからね。俺は大好きですけど、みんなに響く納豆の表現の仕方を探した結果、こうなりました。『食べられない人もいるのって悲しいし、やるせないよね?』というもの悲しさは、マイナー調のメタルに乗せるに限ると。あと、ピアノゾンビと2マンをした際、アンコールでクリスタルキングのカバーを一緒にやりまして。ハイトーン(『北斗の拳』の主題歌となった“愛をとりもどせ!!”の中にものすごいハイトーンの部分が出てくる)を練習することになったんです。それで目覚めたハイトーンも、この曲に詰まってます。《俺との愛を~》のテンションで《Natto Never Dies》と歌いたくて」
──さて。2曲についてお話をして頂きましたが、最近、バンドへの注目が一気に高まっていることに関しては、どう感じています?
「自分たちとしては『一気に』という感じでもないんですよね、意外と活動歴が長いバンドですから。フジロックのルーキー(・ア・ゴーゴー)に出たのが2009年とかで、『30歳越えてルーキーか』と。そこから2016年までを辿ると、『じわあああ~』が、ずっと続いてるんです。『ドーン!』というのは、あんまりないんですよね。『今、調子いいですね』というのを5、6年連続で言われてきました(笑)。でも、やはり、テレビの地上波のゴールデンタイムに先日出たのは、ライブハウスに出るのとはまた別の反応がありましたよ」
──『行列のできる法律相談所』ですね。
「はい。ライブのお客さんがドーンと増える感じではなかったんですけど、AmazonとかiTunesとかの動きには反映されましたね」
──あと、『グレイトモーニングダンス体操』(ケロッグのウェブCM)の音楽を担当したことは、子供たちのハートを掴むきっかけになりそうですね。テロップのアーティスト名を見て「お母さん、うちくびって?」っていうような心温まる会話が各家庭で生まれているんじゃないでしょうか。
「『首をチョンってやる死刑だよお~』と(笑)。まあ、我々は別にスプラッターとかが好きなわけじゃないんですけどね。メンバーはみんな心霊の話は一切ダメ。俺は『バイオハザード』をやった時、序盤で犬が飛び込んできた途端にコントローラーを投げつけ、リセットボタンを押し、それ以来やってません。『そんなので何が打首獄門同好会だ!』と(笑)」
──(笑)名前の恐ろしさにかけては、ロック業界随一なんですけどね。
「よくある感想が『怖いと思ったら怖くなかった』ですから。『どんな人たちが来るのかとドキドキしてたんですけど、なんでそんな腰が低いんですか!』と対バンに怒られる有様で(笑)」
──現時点での目標は、何かあります?
「今まで、ワンマンの会場を常にちょっと背伸びをしてやってきたんです。この前、Zepp Tokyoでやったわけで、次はどこか? 関係者のひとりに『次、武道館しかないね』と言われて、『そ、そうっすよね……』となりました。俺、成り行きで次の目標、武道館になったんですかね? 不思議な気分です。だから、今の目標は……武道館?(笑)」
──武道館で名曲の数々が鳴り響くかと思うと、ロマンを感じますよ。
「『俺、何やってんだろう?』って思うでしょうね。『焼き鳥の名前、叫んでくれるかい?』って言って、《せせり!》ってやったり、まぐろの風船を武道館の客席に投げ込む日を目指してると思うと……不思議だなあ(笑)」
ミュージックビデオ
リリース情報

『島国DNA』
発売中
価格:¥500(本体)+税
271-LDKCD
1. 島国DNA
2. Natto Never Dies
[購入者特典]
タワーレコード:島国缶バッジ
ヴィレッジヴァンガード:島国ステッカー
ライブ情報
打首獄門同好会『島国DNA』レコ発ライブ「おさかな天獄」
日程:2016年8月26日(金)恵比寿LIQUID ROOM
出演:打首獄門同好会 / 漁港
開場18:00 / 開演19:00
前売 ¥3,000(税別/D代別)
提供:LD&K
企画・制作:RO69編集部