イトヲカシ 初の全国盤、フェス出演、路上ライブツアー……激動の1年を今振り返る(2)

お互いに重ねてきた失敗を寄せ集めて、ふたりの地図を描いていく――死ぬまで成長過程かなあって

――今回、『さいごまで/カナデアイ』という両A面シングルが完成したわけですが。“さいごまで”は「受験生応援キャンペーンテーマソング」という使命を担った曲でもあるわけですが?

伊東 たとえば、「自分たちの中にない気持ちを曲にしてください」って言われたら、それはそれでひとつ面白いことだなと思うんですけど。この“さいごまで”にこめた想いは、僕らが心の底から思ってることでもあるんですよ。僕も昔は塾講師として受験生と向き合っていて。その前には自分自身も受験していて、受験生の気持ちがわかった上で――路上ライブでは必ず、時間の許す限りお客さんと言葉を交わさせてもらうんですけど、その中で受験生もすごく多くて。ミュージシャンとして、誰かの背中を押すとか、人生をプラスにしたい! とか、そうやって僕らも音楽に救われてきた身なので。「お客さんも受験生が多いし、イトヲカシはそういうことを本当に思ってるっぽいな」っていうことを感じ取った上で、僕らにこのキャンペーンの話を持ってきてくれたのかもしれないですね(笑)。

――でも、この曲って「対・受験生」だけの曲ではないなあと思うんですよね。というのは――今日話してくれた今までの歩み、とくに去年1年間の活動におけるイトヲカシの姿勢が、《はるか遠くにあるゴールテープまで》とか、《届くまであと少し歌い続ける》とか、この“さいごまで”の中に全部あるんですよ。

伊東 そう! そうなんですよ。

――改めて「一貫してるなあ」と思って。

宮田 ……つまんないですよね?

――(笑)。いやいやいや。

宮田 球種がね、ストレートしかないんですよね。ナックルとか投げられたらいいかもしれないですけど(笑)。でもやっぱり、心のコアのところにあるものをそのまま吐き出していくってなると、一貫性は出てきてしまうんですよね。

――《間違いを重ねたら正解に近づいて/気づかぬうちに握っていた/君だけの地図を二度と離さずに/もう迷わず進めばいい》っていうのも、ここまで至るイトヲカシの道程とそのまま地続きですからね。まあ、バンド時代の足取りとかが間違いとは言わないですけど――。

宮田 いや、間違いですよ(笑)。

伊東 何を言ってるんですか!

――ははははは。

伊東 バンドやってた頃は、あえて言いますけど、大失敗を重ねてきたと俺は思ってるし。失敗をめちゃめちゃ重ねたからこそ、今自分たちが持ってる地図は――今でも一回一回のライブはぶっちゃけ失敗だらけだし、それを重ねて握り締めた地図は、どんどん変わっていったほうがいいと思うんですよね。ただ、芯みたいなものは絶対に変わらないから。そこは間違いじゃないと思うんですよね。

宮田 1年前・2年前ぐらいの自分から見れば、「120点ぐらいじゃない?」みたいなことをやってるのかもしれないけど、やっぱりそこもアップデートされていくっていう。終わりのない闘いだなあって。その中で、ふたりで描いていかないといけない地図だと思うんで。お互いに重ねてきた失敗を寄せ集めて、ふたりの地図を描いていく――まだまだその過程だと思うんで。死ぬまで成長過程かなあって。

伊東 「好きなことを仕事にするのは止めたほうがいいよ」って、世の中で何億回と言われてることじゃない? 俺言いたいんですけど――じゃあ、そう言ってる人は好きなことを仕事にしたのかな? って。好きなことを仕事にするのが、一番夢のあることじゃないかなって僕は思うんですよね。「仕事にするのは止めたほうがいい」っていう言葉に惑わされて「ああ、それは止めよう」って世の中の人が思うのは、すげえもったいないなあって思い続けてるんですよ。

宮田 その人の事情を考えずに言えば、それは「好きなこと」を仕事にした後に、それが「実は自分の好きなことじゃなかった」って気付いちゃった人なのかな、って思うんですよね。

伊東 ほんと、「嫌だなあ」って思ったこと一回もないよな、どんなことがあっても。

宮田 「やっぱり好きなんだなあ」っていうところに帰着してきちゃうし。だからやっぱり……逃れられないというか(笑)。でも、自分の意志を貫いてやれてるのはすごくハッピーだよね、俺たちは。ほんと中学から変わらないので。

これはたぶん一生言いますけど――「王道の音楽をやりたい」

――そしてもう一曲“カナデアイ”。これは前作の“宿り星”からタッグを組んでいるアニメ『双星の陰陽師』で、今度はオープニング曲として作られた曲なわけですが。

伊東 2期続けて再びやらせてもらえるっていうことは、なかなかないと思っているので。僕らの大阪のライブに去年、原作の助野(嘉昭)先生が観に来てくれたんですよ。客席の奥のほうで、すっごいノリノリの男性の方がいて「おおっ!」と思ってたら、楽屋でその人が「助野です」って(笑)。「マジ楽しかったです!」って言ってくれて、ああ確かにそうだろうなあっていう感じで。それが一番嬉しいなあと。

――かなりアニメの世界観に「寄せた」内容の曲ではあるんですけど、それも含めてイトヲカシの普遍的な歌の世界の中にあるなあと思ったんですが。「広く浅く」じゃなくて、核心的な部分を研ぎ澄ませていくことで、ユニバーサルな訴求力が生まれていくっていう。

伊東 この曲に関して言えば実は、イトヲカシ史上ではかなり苦労してできあがった曲なんですよね。前回の“宿り星”は、「TVアニメのエンディングである」「イトヲカシらしいものである」「『双星の陰陽師』の世界観を提言したい」っていう3本の柱が、エンディングだったからこそスッとうまくバランスを取れたんですね。で、今回も行けるっしょ! って思ってたんですけど……「オープニング」「イトヲカシらしさ」「『双星の陰陽師』の世界観」っていう3つの柱が、意外と混ざらなかったんですね。実は最初、全然別の曲を作っていて――わりとアメリカンというか、筋肉というか。

宮田 マッチョな感じね(笑)。

伊東 そうそう。でもそれは、イトヲカシじゃなければ全然カッコいいと思うし、アニメのオープニングとしては成立したと思うんですよね。

――ただ、それは果たしてイトヲカシか? と言うと――っていうことですよね。

宮田 そうなんですよ。お互いいろんな音楽を聴いて、いろんな音楽をやってきた中で得てきた貯蓄をどんどん出していく、っていう流れにおいては、最初にできあがったものは正解なんだけど、その「3本の柱」を並び立てるためには不正解だよ、っていうところで。いろんな要素を差したり抜いたり……っていうことをやっていって。最終的に「これならイトヲカシだね」っていうところに辿り着いて。

伊東 嬉しかったのは――彼がアレンジメントの面で、最初にできあがったものに「マッチョすぎる」っていうことを感じてて、俺も同じことを感じてて。「イトヲカシはバンドではない」っていうところを、ふたりの中でもう一回確認し合えた曲だったんですよね。昔から不思議と、アレンジの方向性とかでぶつかることがものすごく少なくて、同じ方向を向いてるような気はしてたんですけど、結構それがはっきりしたというか。同じ王道を俺たちは目指してたんだなあって。それが俺はこの曲に関してはすごく嬉しかったんですよね。

宮田 これはたぶん一生言いますけど――「王道の音楽をやりたい」っていう。で、その王道の音楽のために、自分たちで作り上げた柱があるんですけど、その柱の範疇がどこからどこまでなのか、っていうのを――ある程度変わるかもしれないけど――現時点ではここだよね、っていうのが見えたなって。「ここまでは行っていい」っていう。

――おふたりの皮膚感覚と、「バンドとは違うイトヲカシ」っていうものを確認する意味でも大事な曲だし。イトヲカシの根本的な世界観と、ある種の作家性みたいな部分とをどう擦り合わせていくか、っていうところでも重要な曲だと思いますね。

伊東 確かにそうですね。これからさ、全然俺たちが思ってないようなことをテーマに曲を書いたらさ、ついに俺たちも「仕事感」を感じるようになるのかな?

宮田 いや、それも俺は楽しめると思う。その範囲にもよるけどね(笑)。商業的になりすぎてしまいたくはないけど、お題をいただいて曲を作るっていうこと自体はすごくクリエイティブなことだし、アーティスティックなことだと思うんですよね。

伊東 「イトヲカシの音楽は売れ線なのか」って言われたら、それは自分たちではわからないですけど……自分たちなりに「王道」っていうのは、多くの人が聴いて、いい気持ちになってもらうものだと思うので、もしかしたら言葉を変えたら「売れ線」なのかもしれないし。でも、俺らはそれが本当にやりたいから。自分たちの中で「いや、こうしたほうが『売れる』でしょ」って曲を作ったことは一度もないし。このまま「王道」の範囲の中に、「自分たちのやりたいこと」が収まったまま行けるんじゃないかなあ、とは思ってますね。

提供:エイベックス・ミュージック・クリエイディヴ株式会社

企画・制作:RO69編集部

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