DIYを極めて、さらなる開花

フアナ・モリーナ『ウェンズデイ 21』
2013年11月27日発売
ALBUM
フアナ・モリーナ ウェンズデイ 21
「アルゼンチン音響派」というコピーもとんと聞かなくなり……実に5年ぶりとなるブエノスアイレスの女性SSWによる最新作。生楽器と電子音を織り交ぜ、多彩な音色を重ねた多重録音が彼女のスタイルだが、今回は全演奏をひとりでこなし、完全セルフ・プロデュースで制作されたという。そうした十分な時間と密な環境の賜物か、ブルージーなベースが印象的なリード曲M1、エレキ・ギターとムーグ音がうねるM4を始め、レイヤーの構築と練られたアレンジ&曲構成はこれまででもっとも完成度が高い。アフロ・ファンクな⑦、シェイカーやヴォイス・サンプリング(?)も交えて混沌としたポリリズムを展開するM11も刺激的だ。空間を活かした浮遊感ある音作りというより、その隙間の細部にまで趣向を凝らした音の情報量が際立つ。とりわけ白眉は、オノマトペ的な耳愉しさがブラック・ダイスも連想させるストレンジ・ポップM2だろうか。DIYな多重録音の女性SSWは過去にも例はあるが、本作からは、たとえばチューン・ヤーズやキンブラといった後続と彼女との繋がりも改めて浮かび上がってくるようで興味深い。HCWでのステージも期待。(天井潤之介)
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