前作『100マイルズ・フロム・メンフィス』で「スターダムに憧れた頃の自分」を野性的かつアグレッシヴに鳴らしていた彼女が、カントリーの聖地・ナッシュヴィルを拠点に作り上げた新作アルバムを『フィールズ・ライク・ホーム』と呼び、iTunes先行シングル〝イージー?でオーガニックの極致の如き歌とサウンドを聴かせている―という驚きは、それこそUSルーツ・ミュージックの包容力そのもののような今作の13曲に触れた瞬間にめくるめく歓喜へと変わるはずだ。カントリー・ロックの力強さとともに響く〝ショットガン?〝コーリン・ミー・ホエン・アイム・ロンリー?が彼女のポップ・サイドを浮かび上がらせ、メロウで伸びやかなピアノ・バラード〝ウォータープルーフ・マスカラ?の歌声とペダル・スティールが干し草薫る草原の風のように身体と心を包む……「私のキャリアを通して何か欠けていたものが、ここにあった、という感じ」と現在住んでいる「聖地」を語る彼女のコメントの通り、全世界で3500万枚を売り上げる中で彼女が体現してきたロックとポップの核心に、初めて彼女自身が向き合った、重要な1枚。(高橋智樹)