イク作『Hidden World』以降何度か登場してきたキャラ)の魂の目覚め・凋落・再生を綴る大作ロック・オペラ……というわけで、始祖ザ・フーの決定打『四重人格』はもちろん、爆風とイノセンスが同居する痛快な楽曲(②⑤⑩他、号泣必至)そしてプロットのシンクロにハスカー・ドゥ『ゼン・アーケード』を重ねたくもなる。
ザ・ホールド・ステディ、タイタス・アンドロニカスら、近年のブルー・カラー系文学パンクのコンセプト・アルバムへの野心はこれが初ではない。が、過去に較べ低音よりウワモノ重視.ギター・サウンドの変化も著しい本作は、同郷ラッシュのパワー・プログレにも通じる饒舌な聴体験と、メタフィクションの導入でジャンルの「型」をひねる現代的な叙述感覚との融合で18曲を聴かせきる。とはいえ、ジャケットが物語るようにこのアルバムの核にあるのは愛の勝利。そのまっとうさもまた、このバンドを無条件で支持したくなる理由だったりする。(坂本麻里子)