蒼き途上の名作

ナダ・サーフ『スターズ・アー・インディファレント・トゥ・アストロノミー』
2012年01月18日発売
ALBUM
ナダ・サーフ スターズ・アー・インディファレント・トゥ・アストロノミー
ここ日本では前作『ラッキー』(08)によってようやく発見された観もあるナダ・サーフだが、彼ら自身は15年以上に亙る歴史を刻んできたUSオルタナ・シーンのヴェテランでもある。2010年にはケイト・ブッシュからゴー・ビトウィーンズまで多様なアーティストを網羅した初のカヴァー・アルバムをリリースし、一区切りついたということなのかもしれない。この最新オリジナル・アルバムはまるでデビュー・アルバムのような瑞々しさが隅々まで行き渡り、ナダ・サーフの再出発の意思を感じる一枚に仕上がっている。彼らのようなパワーポップ・バンドにとって、エヴァーグリーンなメロディやコーラスというものはえてして様式美に陥りがちなものだが、エヴァーグリーンとして完結する寸前の「揺らぎ」を活写できるというナダ・サーフの最大の魅力が存分に発揮されているのが本作なのだ。歌詞の内容もポジティヴである。いや、ポジティヴで「あろう」とする強い想いを感じる。エヴァーグリーンにしろポジティヴィティにしろ、それを手にするまでのプロセス自体に宿る逸る気持ちや切なさこそがこのバンドの本領なのだとつくづく感じる一枚だ。(粉川しの)
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