吉井和哉の新たな原点

吉井和哉『After The Apples』
吉井和哉 After The Apples
そう、私たちはいつもこんな見たことのない新しいロックの音に興奮し続けるんだ! 斬新でかっこいい。でも、ある意味むちゃくちゃ変。スター性、ソングライティング、文学性、歌唱力どれをとっても群を抜いた才能を持っている人だが、ここでは彼の「ロックの才能」が爆発していて、それがとても嬉しい。なぜかというと、それこそが吉井和哉が音楽を続けていく原動力だから。
 
自身の血を普遍性へと転化した集大成『The Apples』、そこに収録されなかった〝Born〟をきっかけに生まれた6曲入りミニアルバム。自身の演奏なのは変わらないが、ドラムにこだわり続けた彼が今作では打ち込みをしているという。リズムからの解放、あるいはバンドというフォーマットからの解放が、本作に自由な骨格をもたらしている。《光る煮物の芋》とか《あら箸が無い》(〝母いずゞ〟)といった失われゆく生活の風景を、ブルースではなく革新的なロックとして、ツィッターではなく深い文学として鳴らしているのがすごい。紀元前・紀元後みたいに、以降のキャリアがApple前・後に区切られそうな重要作。(井上貴子)
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