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劇場アニメ『ひゃくえむ。』（原作：魚豊、監督：岩井澤健治）の主題歌として書き下ろされた新曲。アニメ作品のストーリーは、100m走競技の世界に強い意味を見出した、トガシと小宮というふたりの男子が切磋琢磨しながら成長してゆくというもので、藤原聡（Vo・Pf）は物語の中のふたりの逡巡や葛藤をなぞりながら、自身の思いを重ねるように歌詞をしたためている。《「現実的、客観的に見れば 絶望的。絶対的1位はきっと取れないな」》と小気味よく押韻しつつ歌われるブリッジ部分は、爽やかな響きのメロディに聴こえるけれども、シンプルであるがゆえに残酷な勝敗の世界を描き切っているのだ。『ひゃくえむ。』の物語がそうであるように、この曲の中でヒゲダンは、不思議と絶望的な現実にも立ち向かおうとしてしまう人間の厄介で美しい一面にタッチしようとしている。ときには長所にも短所にも、そして呪いにも成りうる「らしさ」を抱えて、何を目指すのか。その答えはいつだって、自分自身で見つけるしかないのだ。（小池宏和）（『ROCKIN'ON JAPAN』2025年10月号より）
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