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タイトルが『Sono nanika in my daze』であり、歌詞にも《その》《この》《あの》と《何か》を指す言葉がちりばめられている。そして1曲目の“陽炎”では《俺はそれを知った/俺はそれを知っている》と歌い、ラストの表題曲では《最初の事/終わりまで/覚えている》と歌っている。つまり今作は、《何か》を突き詰めてきた日々の記録であり、《それを知った》からこそ形にできたのだと思う。頭の中に渦巻いていても、なかなか言葉や行動で表せない《何か》が、これほどかたくなでしなやかで美しいロックに昇華されたのは、西口直人(B・Cho)が担当したミックスとマスタリングの手腕も大きいと思う。剥き出しで響いてくる清水英介(Vo・G)の歌声も象徴的。希望に満ちたメロディの“海に星が燃える”がある一方で、ハードコアな“3”とヘヴィな“漆黒”が畳み掛ける流れも日々そのものに聴こえる。今作が自主レーベル「0A」の第一弾としてリリースされるのも納得。人生は、《その何か》が見えたとき、またはじめられるのだ。(高橋美穂)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年9月号より)
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