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「耳を傾けていると自ずと心が和む」というリュックと添い寝ごはんの曲が度々発揮する効用が凝縮されている“灯火”。夜明け前後の時間帯にジリジリと胸の奥で募りがちな感覚を、この曲はじっくりと浮き彫りにしている。静まり返った街、駅へと向かう人々、一日の始まりを告げる朝日などによって加速される疎外感、劣等感、焦燥感……これらの感覚を端的に言い表すのならば「孤独」なのだろう。いくらでもネガティブに噛み締められるのが孤独だが、そこから始まり得る様々な可能性を穏やかなトーンの歌とバンドサウンドで示してくれるのが、この曲の素敵さだ。ひとりぼっちで過ごす時間を自身と真っ直ぐに向き合う機会としながら、まだ何も手にすることができていないちっぽけな自分を「これから何者にだってなることができる」と捉える描写の数々が、穏やかな光のように感じられる。歌詞の主軸は自分自身との対話なのでメッセージソングではないが、同種の感覚の当事者への温かなメッセージになる歌だと思う。(田中大)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年3月号より)
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