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ベースの重低音とエフェクトのかかった歌声で不穏に曲が始まる。CLAN QUEENの楽曲はすべてがコンセプチュアルだが、今作はこれまで以上に纏っている闇の濃度が高い。水の中という静寂に身を沈めるようなゆったりとしたパートと、苦しさや虚しさといった負の感情をぶつけるノイジーなギターが加わるサビとのアンバランスさが、生死を彷徨う不安定な精神世界を浮かび上がらせる。そして、《さっさとこの世が/終わってくれますように》《でも抜けだせやしない》という絶望的な言葉とは裏腹に、何かが解き放たれたような明るさも感じるアウトロがかえって不気味で、この曲の主人公は諦めを覚えてしまったのか、一度すべてを終わらせることで感情をリセットしたのか、思考が混乱する。最後の自主規制音も意味深。この世の真理に気づいてしまった主人公の存在が消されたのか、この曲自体が存在しなかった並行世界への入り口か。難解な推理小説に出会ってしまったみたいに、たった3分弱で脳内をCLAN QUEENに占拠された。(有本早季)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年1月号より)
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