すべてを抱えて奮い立つための音

マニック・ストリート・プリーチャーズ『ジャーナル・フォー・プレイグ・ラヴァーズ』
2009年05月13日発売
ALBUM
マニック・ストリート・プリーチャーズ ジャーナル・フォー・プレイグ・ラヴァーズ
前作『センド・アウェイ・ザ・タイガーズ』よりも純マニックス的であると同時に、一点のニヒリズムもない雄々しいロック・アルバムだ。「彼ら特有の批判精神が鳴りを潜めた」という意味ではない。常にロックを/シーンを/メディアを疑い、ともすればバンド自らを疑ってきたマニックスが、それらの疑念すべてを「今、ここ」を生き抜くポジティブなエネルギーに位相転換して、思いっきりロックのダイナミクスに身を委ねているのが、タイトル曲“ジャーナル・フォー・プレイグ・ラヴァーズ”やM1“ピールド・アップルズ”からビビッドに伝わってくる……ということだ。確かに、スティーヴ・アルビニをプロデューサーに迎えて闘魂注入的アナログ・レコーディングを行ったことが、今作のグランジ的ダイナミクスの一因になっているかもしれない。が、それでは、『ホーリー・バイブル』さながらのリフとエッジ感にこだわった今作の楽曲群の理由は説明がつかない。

昨年のリッチーの「正式な」死亡宣告に抗うかのように、リッチーの散文詩を引用し、彼らは『ホーリー・バイブル』以来15年ぶりに「4人」でアルバムを作った。自分たちの、というよりは、自分たちを取り巻く多くの人々のノスタルジーやセンチメンタリズムを払拭するために、彼らはよりアグレッシブなリフとビートで楽曲をドライブさせる必要があったのだろう。時代に対抗する政治性やニヒリズムに足を取られるよりも、ロック・バンドとしてのバイタリティを彼らは選んだ。それが何より感動的に響く名作。(高橋智樹)
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