2018年11月9日、ロンドンのアレクサンドラ・パレスで行われたニュー・オーダーのライブを、2枚組のCDとBlu-rayにパッケージしたライブ盤。CDには21曲が収められており、途切れることがないバンドとオーディエンス(ソールド・アウト!)のエネルギーが伝わってくる。“ビザール・ラヴ・トライアングル”や“テンプテイション”のシンガロングからは、歓喜のダンスが見えるようだ。
これまでもニュー・オーダーは数々のライブ盤をリリースしてきたけれど、今作は趣が違う。ニュー・オーダーの全時代を網羅しているだけではなく、ジョイ・ディヴィジョンのナンバーも4曲が収められているセットリストなのだ。しかも、紆余曲折を乗り越え、『ミュージック・コンプリート』(2015)をリリースし、過去にすがらない状況を確立したうえでのジョイ・ディヴィジョンである。誰もがピュアに感慨に浸れたことが、音像からもわかる。
特に印象的だったのは序盤の“ディスオーダー”。そこから、“クリスタル”(2001)、“アカデミック”(2015)と続く流れは、リアルタイム世代、90年代後半からの後追い組、そして今、と三世代を繋いでいた。音だけ聴いていると、彼らが時空を歪めて自由に出入りしているように感じられる。
今、こうしてシームレスな感覚になるのは、ライブが行われた当時はわかり得なかったけれど、内向きのジョイ・ディヴィジョンの表現がコロナ禍とシンクロしていることも、少なからず関わっていると思う。ただし、ラストの“ラヴ・ウィル・テア・アス・アパート”は、キーも関係していると思うけれど、原曲より開けて聴こえた。そこに、彼らのモードやメッセージを感じるのは、私だけだろうか。2022年1月の来日公演で、その答えを見たい。(高橋美穂)
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