お気楽に傑作

メルヴィンズ『ワーキング・ウィズ・ゴッド』
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ALBUM
メルヴィンズ ワーキング・ウィズ・ゴッド

オリジナル・ドラマーだったマイク・ディラードが再び参加し、通称「メルヴィンズ1983」と呼ばれるラインナップで作り上げたニュー・アルバム。以前にも復活して『トレス・カブローネス』というアルバムをリリースしたのが2013年だから、およそ8年ぶりの再編ということになる。

もちろん今回も録音スタッフを務めているトシ・カサイ氏によれば、「いい加減に始まったレコーディングだったけれど、そのぶん遊べる隙間があったので、やりだしたら面白くて熱中してしまった」とのこと。どの作品も、いつだってユーモアたっぷりのメルヴィンズだが、今回は1曲目“I Fuck Around”でのビーチ・ボーイズ・ネタ(ご丁寧にモノラルっぽいミックスを施してあり、彼らのコーラス・ワークもなかなかのもの)に始まり、8曲目“1Fuck You”〜9曲目“Fuck You”、そして締めくくりの13曲目など、さらに悪ノリしながら楽しくやっている様子が伝わってくる。その一方で、彼らならではのヘヴィなスラッジや、ゴリゴリのハードコア・パンク・ナンバーが、かなり聴きやすい感触でまとまっていて(この点に関しては、テリ・ジェンダー・ベンダー&オマー・ロドリゲス・ロペスとのプロジェクト=クリスタル・フェアリーを想起した)、ハマると深いメルヴィンズ沼の初心者にも安心して勧められる内容だ。

メチャクチャたくさんライブをやるバンドでもあるだけに、昨今の事情でツアーが出来ない状況はさぞ厳しいだろうが、おそらく彼らのことだから、本作以外にも自らのスタジオで着々と録音作業を進めているはずであり、まだまだ今年のお楽しみは続きそうだ。ちなみに、デイル・クローヴァー(本作ではマイクがドラムを叩いているのでベースを担当)のソロ『Rat-A-Tat-Tat!』も先日発表されたばかりなので、併せて聴こう。(鈴木喜之)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。
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メルヴィンズ ワーキング・ウィズ・ゴッド - 『rockin'on』2021年3月号『rockin'on』2021年3月号
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