もういないとわかっているのにいるような気がするとか、部屋に残ったちょっとした痕跡のなかに去っていったあの人を感じてしまうとか、街の雑踏のなかで似た人を見かけて目で追ってしまうとか、そういう誰でも抱いたことのある《飼い主を探す犬みたい》な気持ち。それを「幽霊」に託して《顔色悪い ちゃんと食べてる/怖いどころか心配だよ》とか《まるでこの世のものとは思えない/写真にだけ写る美しさ》という巧みな歌詞とピアノの音色が印象的な骨太ロックサウンドによって描かれる、
クリープハイプの新曲。《なにより怖いのはこの1人ぼっちだったんだ》という“おばけでいいからはやくきて”のその先、もっといえば《一瞬我に返る 君が居ない部屋に1人だった》という“愛の標識”のその先にこの曲の感情はあるが、この曲がいいのはそのどうしようもない切なさと孤独をそのまんまにしておくところだ。無理にケリをつけようとか、強がって《元気でね》と言おうとかしないで《成仏して消えるくらいなら いつまでも恨んでて》と言い切る強さ、あるいはダメさ。それが美しくて愛おしい。(小川智宏)
『ROCKIN'ON JAPAN』2020年11月号より