韻を活かす歌唱法であるラップを表現スタイルのひとつとして身に着けているからなのだろうが、DAOKOは言葉の「意味としての区切れ目」だけでなく「音としての効果的な境目」も重視して歌詞を紡ぎ、ビートを乗りこなしながら歌うことに長けているシンガーだ。この個性は、新鮮なメロディを生み出すことに繋がっていると同時に、歌詞の独特な風味の源にもなっているのだと思う。心の奥底から溢れ出るイメージをスピード感たっぷりに放出しながら綴られる彼女の歌詞は、呪文、謎かけのようでありながらも、同じ世界で暮らしている我々も抱えている漠然とした不安、迷いを的確に言い当てていく。だから彼女の歌を聴くと、言葉にできなかった想いに輪郭を与えてもらったかのような感覚になる。片寄明人との共同プロデュースによる本作も、彼女のかけがえのない魅力に溢れた作品だ。印象的なモチーフが乱舞する“anima”や“海中憂泳”、ポップスとして圧倒的にキャッチーな“ストロベリームーン”、スチャダラパーと遊び心を交し合っている“ハイセンスパイセン”など、あらゆる曲が、生々しくて美しい。(田中大)
抽象的な心模様とシンクロできる歌
DAOKO『anima』
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