これが本当のラスト作

マック・ミラー『サークルズ』
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ALBUM
マック・ミラー サークルズ

ここ数年、多くの才能あるラッパーたちが若くして(主にドラッグ絡みの理由で)死去するケースが続いている米国ヒップホップ界。中でも個人的に悲しかったのは、18年9月7日、白人ラッパーのマック・ミラーが26歳という若さで亡くなったことだった。今でも時々ふっと彼のことを思い出し、ユーチューブで“Best Day Ever”のMVを観たくなるのだけど、そこに映る子供時代のマックが無邪気に“ラッパーズ・ディライト”をラップしている姿を観るたびに、いたたまれない気持ちになる。確かに、彼のドラッグ問題は今に始まったことではなく、彼自身の責任であった。でも、別れはあまりにも早すぎた。マック・ミラーは26歳なんかで死ぬべきじゃなかったんだ。

彼の死から約1年半後のリリースとなった本アルバムは、もともとは18年発表の『Swimming』の“姉妹作”として制作に着手しかけていたという幻のアルバム。未完成だったパートは、プロデューサーのジョン・ブライオンが生前のマックと交わした会話などを基に仕上げた形となっている。そのため、豪華ゲストを招いた前作と異なり、基本的に100%ソロ・アルバムだ。

音楽的には『Swimming』以上に冒険的な要素が強く、ヒップホップというよりも(ブライオンがふだんプロデュースしている)インディ系のシンガー・ソングライターのアルバムのような趣きがある。ボーカルは弱々しく、体調も万全ではなかったはずだけど、そんなときでも、音楽に対しては常に誠実に向き合うのがマック・ミラーだったし、その点はこの“ラスト・アルバム”でもまったくブレてない。アーサー・リーのカバー“Everybody”をはじめ、「人生の探しもの」をモチーフにした曲も多い。そのことは悲しくもあり、救いでもある。 (内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。
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マック・ミラー サークルズ - 『rockin'on』2020年4月号『rockin'on』2020年4月号
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